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【日本の皆様に】フランスは、今。【僕の立場からお伝えできることは】

流石に書かざるを得ない気がしたので指が走るままに執筆します。

単刀直入に言いますと、フランスにおいてレストランやカフェの営業自粛が6月の頭まで伸びました。

本日、4月28日による発表です。


「4時間後から、営業は全て停止に。」

周辺諸国の影響もあってか、フランスは日本より早くコロナウイルスに対する『法的措置』を迅速に施行させました。

3月14日。午後8時。土曜日。

少しずつ猛威をふるう得体の知れない何かは、少しずつ、しかし確実に僕たちの生活を脅かしていきました。

僕の住む街『ボルドー』は『フランスで2番目に大きな都市』なんて揶揄されることもあるみたいですが、それはあくまで経済上の話。人口的に見ると、『日本で2番目に大きな都市』の感覚で話せないことは住んでみてから知ったことでした。

そんな『2番目の都市』のおかげで感染者の数自体は非常に少なかったとはいえ、「それじゃあ僕たちは安心だね」なんて平和ボケをかましているほど軽い話でないことは自明。

当然、外出を控える数も少しずつ増えていました。この1週間前くらいから「No-Show(予約客が無断でキャンセルすること)」も多かったのを覚えています。

事情を重く受け止めた経営者の中には、すでに営業短縮ないしは自粛をしているお店もチラホラと。

テーブルセッティングをしながら、僕たちも来週からの営業は一旦様子を見ようか…なんて話していた矢先。

僕の持っていたフランスのニュースアプリが一斉に通知を流してきました。

【首相 緊急会見】


政府による閉鎖措置についての会見でした。その内容は、僕らのような在仏外国人にも非常に分かりやすく明確で端的なものが述べられていきました。

『3月14日24時から新たな指示があるまで、人々を受け入れる場所の中で,生活に必須とはいえない全ての場所を閉鎖する。』
『特にレストラン、カフェ、映画館やディスコは営業を停止するように。』
『食料品,薬局,ガソリンスタンド,銀行,タバコ・新聞販売所といった必須のものを除き,全ての商店も対象となる。』
『真に必要な買い物,運動,投票等を除いて,外に出ないでほしい。』

国が法的にコロナ収束に向け対処すると宣言しました。

20時に発表され、24時から営業停止。
つまり「4時間後より飲食店の営業は無期限に停止しろ」という発表が国から言い渡されたのです。

20歳の時に当時いた香港で起きた学生デモ、通称「雨傘運動」に直面して警察隊の催涙弾をぶちかまされた時以来の衝撃でした。


ここからフランスは、先の見えない外出制限が始まったのです。

※飲食店の営業に対して暴動や反発が起きなかった理由は、「一人も失業させない」「大小問わず一つの企業も倒産させない」という大統領の声明により、国から補償金が降りるからなのですが、どうやら地方や事業や状況によってその内容が違うみたいですので、ここでの明言は割愛させていただきます。


「お前ら、外出るなって言ってるだろ」

晴天の霹靂が起こった翌日。外出制限初日。

その日はまるで当てつけのように、雲ひとつない快晴の日曜日でした。

本来ならば街ではカフェのテラスでアペロ(食事の前、もしくはお昼の”サク飲み”のような)をしている人で賑わっていたことでしょう。

無情にも椅子1つ無い広場には、サンサンと太陽が降りしきるばかりです。

普段日曜日はお休みをいただいているのですが、事情も事情だし様子を見ながらいつものスーパーに買い出しへ向かいます。

日本人の感覚なら、こんな日はスーパーに人がごった返していて、買い占めが乱立し、感染を止めるための声明が結果として拡大に繋がってしまうのでは…なんて心配をすることでしょう。

事実、そういった暴動や買い占めが全くなかったわけではありません。少なくとも僕自身もトイレットペーパーを買うのには苦労しました。

しかし、そんな不安とは裏腹にスーパーはいつもの平穏を保っています。むしろいつもより人が少ない…?と感じさせるほどでした。


「フランス人はこんな事態でもいつも通りなのか…」

そんな感心と敬意を払いながら帰路につき、とあるニュースの写真に目を落としました。

画像1

(写真は参考です。こちらのサイトの画像を引用させていただきました。)

驚愕でした。

そこにはあまりに普段通りの日常が広がっていたのです。レストランも閉まっちゃってるけど、ちょっとしたバカンス気分だね!と言わんばかりの穏やかな日曜日が、そこには広がっていたんです。

「フランス人はこんな事態でもいつも通りなのか…」


『自粛』の意味を完全に履き違えてしまっていたフランス国民に対し、大統領はこの現実を重く受け止め、即座に対応することとなりました。


事実上の「外出禁止令」が始まったのです。

当初発表されていた声明の中で法的義務があったのは「お店の営業停止」と「長距離移動」に限った話でした。感染症の拡大において人の接触と感線路拡大の両方を防ぐもので、それ以外に関しては特に法的義務は課さず「個人の自粛」にとどめていましたが

今回の外出禁止令においては

『「テレワークが不可能な場合の自宅から職場への移動」「近場の商店での必需品の買い物」「個人による日常的な運動」等などの必要最低限の外出以外は禁止する』
『10万人の警察と国家憲兵隊が動員され,フランス全土に検問(拠点式,移動式)が設置される。』
『歩行者も含め。移動に際してその理由を記載した自筆の証明書の携帯が義務となる。』
『違反した場合の罰金は最大135€(約15,000円)となる。』

と、明確な罰則を発表しました。

3月16日午後8時。
最初の声明が出されてからわずか2日後の出来事です。


延長、延長、そして…

この時に予定されていた外出制限の期間は『3月29日』までという2週間限定とされていたものでした。

しかしながら、すでに甚大な被害を被っていたイタリアやスペインなどの現状から推測される感染者の増大は火を見るより明らか。流石に事態を重く受け止めたフランス人も、この期間で回復できるとは考えていなかったでしょう。

結果として、3月27日に外出制限の延長が決定しました。今度は『4月15日』まで。再び約2週間の延長です。

おそらく、この『2週間』による感染者の推移を見て方針の柔軟な対応を目論んでいたのでしょう。

フランスの著名な医師の発表においても、コロナの潜伏期間は約2週間と言われており、平たく言えば「2週間外出を控えさせて、潜伏期間を乗り越えられたら感染者数は減るんじゃないか」と考えていたのではと、僕は思っています。

しかし、現状は右肩上がり。一向に感染の勢いが止まることはありませんでした。


そして、4月13日。
三度目の外出制限延長が発表されました。

『5月11日』までという約1ヶ月もの延長。

感染症拡大を止めるためにも現実を受け入れることしかできないとはいえ、あまりにも途方もない時間が流れてしまうことに、当初は自分の活動に注力できると思っていた僕ですら一瞬目眩を覚えました。

この過程の中で『連続して外出制限の違反を繰り返すものは最大6か月の拘禁刑及び3750ユーロ(約43万円)の罰金』だったり『パリ市内において日中の運動目的の外出を禁止する』だったりと、制限もどんどん強固なものになっていきました。


フランスの結論は「ウイルスと共に生きる」

そして昨日4月28日。

4度目、そして、おそらく最後となる外出制限延長が発表されました。

ここで「最後」と書いたのは、フランス政府が『これ以上の制限措置は経済的に保たない』と断定した上でこう述べたからです。

我々はウイルスと共に暮らさなければならない。

感染症が物理的にも精神的にも収まるには、ワクチン開発が必要不可欠です。が、まだまだそれは先の話。最低でも1年以上は必要となる計算に。

この期間、ほぼ全ての経済をストップさせてしまっているようでは、本当に国が崩壊してしまう恐れがあります。

そして、感染症による二次災害として一番恐れていた『医療体制の崩壊』は、2週間ほど前から減少を続けている入院患者数を鑑みて起こることはないとの判断がなされました。

『医療体制の崩壊』つまり『感染したのに入院ができず、適切な処置を受ける前に亡くなってしまう』という事態が今後起こりにくくったというわけです。

様々な状況を照らし合わせて、今回の声明では「段階的に、確実に、賢明に制限を解除してくべき」と述べました。

定期的な感染者状況の報告、従来通りの感染予防(アルコール消毒等)の徹底、週に70万件の検査実施などを並行させつつ、少しずつ「もとの姿に」戻していく覚悟が、画面越しに伝わってきました。


今後、僕たちは。

これが今のフランスのリアルな現状です。

「だから日本の皆さんはこうしてほしい」のような伝えたいことがあるわけではありません。残念ながら、政治家ではない一国民ができることなんて本当に限られてしまっていますから。実際、僕自身もこの期間、何をすることも、何を解決させることもできていないのですから。

「就業」という点においては、フランスは幸運にも国策に恵まれ、再び仕事にありつけることができる制度をいただきました。

でも、今後のことを思うと少々憂鬱でもあります。先にも述べたように、「感染症が精神的にも収まるのは、ワクチンが開発されてから」だと思っているのですが、逆説的に

ワクチンが開発されるまでは
今までのような生活は戻ってこない

とも考えられます。

『もしかしたら感染するかもしれない』という思いが数%でも残っている状態で、果たして今まで通りレストランは賑わってくれるでしょうか。

事実、飲食店がコロナウイルスの弊害を一番受けてしまったことで「飲食店=感染症」という印象が植えつけられてしまっていないでしょうか。事実の真偽に関わらず。

そうなった場合、営業を再開したとして売り上げを立てることできるでしょうか。

仮に採算が立たず、半年後や一年後にその影響が波及し、店を畳んでしまう店舗が増えた場合、国の保証はないのではないでしょうか。


…はっきり言って、考えれば考えるだけ不安は募っていきます。

「生きてるだけで丸儲け」なんて、特に大きな責任も負債も生じていない楽観的な立場の僕が気軽に言っていいことではないとは理解していますが

それでも僕は生きてます。今後まだ、挑戦する機会が残っています。

一つ一つ、目の前の自分を精一杯生きよう。

今回の『天変地異』から得た教訓は、ありきたりなもので。
でも、実は普段忘れがちな不変の事実で。


否が応でも、向き合うことになった。のかもしれません。

「今後、僕たちは。」と。


文章苦手ながら頑張りました!