イスラム飯:アイスクリームの章
和食を作るのが苦手なので、どうしても食事が油っこくなりがちです。
シュクメルリなんかは豆乳と鶏肉で作りましたが、バターで大量のにんにくを炒め、ソースにもクリームチーズを投入するカロリーの鬼のような料理です。
そうなると食後にはデザートを食べて口の中をさっぱりさせたいと思うのが常。私はチョコミントアイスが好きです。
アイスの中の伏兵
しかしながら、私が思うに日本のアイスクリームをイスラム教徒はほとんど食べられないのではないのではないでしょうか。抹茶アイスをお勧めしたいところですが、ほとんどの場合挫折しています。
根本的な問題はお店で普通に売っているアイスの原料にあります。一般的にお店で売られているアイスクリームには乳化剤が入っています。スーパーのアイスコーナーで手をとって原料表記を確認すると、ほとんど「乳化剤」が入っています。
乳化剤の役割
まず、乳化剤は本来混ざらない物質を「乳化している状態」、つまり混ざった状態のままにしてくれる食品添加物です。粒子を覆い、同じ粒子同士で引き合う力を邪魔します。そうなると、反発する粒子同士ができるだけ小さい面積に止まろうとする界面張力が弱まります。そのため、より広がった状態で液体が混じり合った状態になります。その結果、油と水のように本来ならコップの中で半分半分に別れてしまうような相性の悪い液体も、別れることなく混ざった状態のままに乳化剤はしてくれるのです。
次になぜ乳化剤が駄目なのかというと、「豚から作られている可能性がある」からです。そのため、禁忌事項ハラームに該当する食品である可能性が出てきます。「ハラーム」については下記をお読みください。
しかしながら、豚由来ではない乳化剤もあります。そのため、植物性の乳化剤が使用されているのであれば問題ありません。
原料表記について
しかし、根本的な問題として、日本のアイスクリームは乳化剤の由来原料を表記しない傾向にあります。一度、「どうしても日本のアイスを食べてもらいたい」と思い、スーパーで片っ端から原料表記を確認したことがありますが、明治さんも森永乳業さんも赤城乳業さんも、基本的には「乳化剤」とだけしか書いていません。
この場合、イスラム教徒にとっては「シュブハ」と呼ばれるカテゴリーに入ることがあります。これは「ハラール」なのか「ハラーム」なのかのグレーゾーンを表します。そして、「グレーゾーンの範疇に入るものは避ける」というのが慣例です。
表記傾向
明治さんのアイスの原料をベースに考えると次のパターンに別れます。十一種類のアイスのシリーズがありますが、ほとんどが「乳化剤」とだけの表記にあたります。
※2020/5/18時点。下記は明治さんのホームページからお借りしています。
①「乳化剤」とだけ書いてあるパターン
②「乳化剤(大豆由来)」と書いてあるパターン
①...下記以外
②...ワンハンドアイス、明治うずまきソフト、明治ファミリア
大豆は食品表示の努力義務のアレルギー物質。そのため、別枠で表記をしているのではないかと考えます。従って、アレルギー物質以外の乳化剤の原料には着目していないのが実際ではないかと考えます。
しかしながら、そのため、明治さんの約七三%がイスラム教徒のエンドユーザーにとって「シュブハ」、「疑わしきもの」に該当してしまっています。従って、「乳化剤が豚から作られているかもしれない」という認識があり、宗教に真面目な人であれば、①のパターンに該当するアイスの購入は避けると思います。
逆に言えば乳化剤の由来表記を省くことで、イスラム教徒の顧客は明治さんのアイス製品の大多数の購入を避ける結果につながっていると考えられます。
しかし、これは明治さんに限ったことではありません。スーパーの製品を眺めている限り、どのアイス会社さんにも同じ傾向があると言えます。明治さんが特別そうだということを申し上げていないことは留意をお願い致します。
乳化剤がないアイス
そもそも論として、「乳化剤がない」アイスもあるようです。例えば森永乳業さんのMOWのように、一部のアイスがそれに該当します。
また自分で原料を確認して、ハラールなアイスをご家庭で作ってしまうという手もありますが...
終わりに
もうすぐ夏です。コロナがなければ、日本に来るイスラム教徒が増えてくる時期です。不用意に食べてはいけないものをお勧めしないように気をつけないといけませんね。
資料や書籍の購入費に使います。海外から取り寄せたりします。そしてそこから読者の皆さんが活用できる情報をアウトプットします!