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赤瀬川原平、好きな作品について


芸術家・赤瀬川原平

 私は日本の戦後活躍した赤瀬川原平に興味をもち調べることにした。

 私は現在、東京藝大の学生の知人から誘われてHello Beeという HB.根津という場所だったところを引き継ぐ学生コレクティブに所属している。そこでは大学に代わる勉強会や自らがキュレーションしたり応募いただいた企画展のために場所を貸し出したりしている。その場所で勉強していく中でも特に赤瀬川原平という人物は物凄かったのだと注目した。彼の行った首都圏清掃整理促進運動や千円札裁判、超芸術トマソン 路上観察学会など有名な活動は今の時代にも必要だと感じるし、重要な出来事だったと思う。


 まず、赤瀬川原平は1937年生まれで2014年まで存命だった日本の前衛芸術家だ。彼の作品は独創的なアイデアや実験的なアプローチを通じて前衛芸術の領域を拡張した。さらに前衛芸術のみならず漫画、文筆、写真など様々な分野でも活躍している。彼の作品は、日常の中に新たな意味を見出す試みや、伝統的な美術の枠組みを超えた表現を追求したものとして知られている。また、彼の芸術には社会や政治的なメッセージが含まれることが多かった。赤瀬川原平はたくさんの本を執筆しているがどれも面白い。私は赤瀬川の書籍『四角形の歴史』が大好きだ。初めて読んだとき目から鱗だった。あんなに読みやすく自由な形式で、絵画について考えるきっかけを与えてくれる本はない。今となっては、彼はもう他界してしまっているが1人の思想や知識をこうして後世我々が作品や本を通して教授できることは大変有難い。


 つぎに、赤瀬川原平の数多くの活動、作品をピックアップして自分なりに論じてみることにする。選んだのは超芸術トマソン 路上観察学会。超芸術トマソンとはなんなのかを語った後に、最後にまとめ意見を述べたい。

超芸術トマソン
 これは書籍にもなっているが、路上に何気なく潜む「無用の長物」を発見し、その役にたたなさ・非実用において芸術よりももっと芸術らしい物を「超芸術」と呼び、そのなかでも不動産に属するものをトマソンと呼んだ赤瀬川原平らの芸術学上の概念だ。有名なのが四谷純粋階段。1973年3月、松田哲夫、南伸坊と東京・四谷の祥平館で缶詰になり戦後美術史の絵年表を作っている時に何気なく発見したそうだ。世界で最初に発見された超芸術の第一号。3人はこのへんをふらふら歩いていたらこの階段を見つけた。なんのためにあるのか考えたが、数段登ってすぐに降るだけの小さな階段、こんな不経済なことを資本主義が許すはずがない、これはもう階段の形をした芸術というほかないだろうと。この不動産に付着して美しく保存されている無用の長物に気付き、超芸術を見出したのだった。とても面白いエピソードだ。
 超芸術はそれからたくさん発見された。《植物ワイパー・全周型》1988、《セメントーフ》1988、《凹んだ凸・両性具有》1988、などなど。私が特に気に入ってるのは《通り抜けた家》1988だ。これは前にあった家の影が残った方の家の壁に写ってそのまま残っている風景だ。私はよく、散歩している時にそのような家が埼玉県川口市の街に多くあることを観察していた。古くなった家は潰されて更地になっているが、隣にあった家の壁にくっきり潰された家の影が残っている。赤瀬川はこれも超芸術として残していて、大変面白いなと感銘を受けた。
そんな赤瀬川は美術手帖2004年8月号の特集での『見ることへの体重移動』でこのようなことを綴っている。
「作家たるもの、何かを創り出すことが第一義としてあるはずだ。見ることでの仕事は、立場としては二次的なことではないか。
路上観察にしろトマソンにしろ、それが面白いといっても、それはただ見ることで、作ることではない。それでいいのか。ちゃんとした作品を創出しなくていいのか。そんな思いが隠然と、脳の片隅から消えずにあった。」
超芸術トマソンはあくまで見るということであり、自分が創り出した作品というわけではない。単に「無用の長物」に対して批評し価値付けをしただけの行為であり、本当は自らの手で作品を作ることに作家として、画家としての姿があるのだという主張を赤裸々に語っていた。


 ここでまとめたいと思う。
赤瀬川原平という人物は彼自身のユーモアに加え、そこには政治性や美術的文脈、戦後の背景が色濃く反映されていた。トマソンも資本主義的な見方から無用であるという視点に着目し語られている。そのような現代にも必要といえる価値観や制作態度は多くの作品を生み出してきた。その彼の残した作品たちは今も後世に脈々と語り残り続ける。私は彼の言葉や考えが大好きだ。自分にも似ているところがあると共感できる文章や、発想があり親近感も勝手に感じているが、作品を見ることではなく、作ることについて真剣に考えて苦しんだ人だと思う。画家・制作する者としての自分が面白いと思う作品と、時代や美術的背景を見てきてそこから面白いと思う作品、その2つは同じ作品ではなかったりするときの葛藤など。彼の言葉には重みと当時の人々の背負わされていた重石みたいなものを感じる。
今後も研究を重ね、美術をもっと知りたいと思う。



Works Cited(引用文献)
美術手帖、 2004 8. 特集 芸術家・赤瀬川原平. https://www.amazon.co.jp/美術手帖-2004年-8月号-特集-芸術家・赤瀬川原平/dp/B08VDZ34GP/ref=mp_s_a_1_1?crid=1BR29WXKG7YWE&keywords=美術手帖+2004.8&qid=1690959685&sprefix=美術手帖+2004.8%2Caps%2C291&sr=8-1 .
美術手帖ホームページ、artist 赤瀬川原平. https://bijutsutecho.com/artists/105 .
赤瀬川原平、超芸術トマソン、ちくま文庫、1987.12.1初版. https://www.amazon.co.jp/超芸術トマソン-ちくま文庫-赤瀬川-原平/dp/4480021892 .

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