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エントロピー神様


エントロピーの神様に連れられて



氣がついたら
ここにいた




広がりゆく混沌 

どこまでもどこまでも


脱出不可能な不可逆性




わたしが
 わたしについて
    語るほど


わたしは姿を消してゆく




ネゲントロピーの神様はどこにいるのですか?



どこにでも



光に向かう萌芽の中に

脈打つ紅い鼓動の中に

 雲の中に  
     霧の中に 


 
 宇宙そらが奏でるメロディの中に

       



それは耳には聴こえない


それは誰にも口ずさめない



けれど果てまで響く
その唄に




 幾千年 眠り続けた種子たちは



  永い夢から目を醒まし



  ただひと筋に垂らされた
    光の糸を辿りゆく


 




 それは繁吹しぶきとともに
  故郷へ遡る鮭たちのひれの力強さであり


 ヒマラヤを高く高く越えてゆく
   鶴たちの美しい舞である




全ての神話を生み出すのは自分自身であり 


あなたの意志こそが宇宙を進めるのだ




エントロピーの神様へ 
お別れを告げ



ネゲントロピーの風と共に還ろう




     座標のない交差点で





いつかまたきみと初めて出逢おう




縄文時代の遺跡で採取された2000年以上前の種から発芽・開花した大賀ハス