見出し画像

キプチョゲのジョグのペース

とある学術的なペーパーでキプチョゲのジョグのペースが書かれていたので考察しました。
詳しい内容はリンク先とその大元の原文で確認できます。英文ですが、最近はGoogle翻訳やDeepLなどでかなり高精度の翻訳をしてもらえます。

Case study examples of training weeks for a marathon specialist

https://sportsmedicine-open.springeropen.com/articles/10.1186/s40798-022-00438-7/tables/4

今回注目したのはGeneral preparation period(一般的な準備期間)でのジョグのペースです。MはMペース、EはEペースということではなく、Morning(午前)とEvening(午後)を指しています。午前中にはインターバルなどの高強度メニュー(週2)やロング走(週1)を予定しているほか、ジョグが週4で入っています。午後はジョグのみでした。

午前のジョグ

午前のジョグは

16–21 km, average pace 3:50–4:00 min·km
18–22 km, average pace 3:50–4:00 min·km

の2パターンです。市民ランナー感覚ではフル2時間45~50分ペースでのミドル走を週3でやってるのか…と感じてしまいますが、そこは世界記録保持者のキプチョゲです。ダニエルズ式でのLTペースは2'45"/kmにも達しますので、そこを基準にジョグのペースを捉えなおすと、

60~85分 68~72%LT
70~90分 68~72%LT

となります。これを市民ランナー感覚に置換えると、
2時間45分ランナー(LTペース3'42"/km)5'08"~5'26"/km
3時間ランナー(LTペース4'01"/km)5'35"~5'55"/km
3時間30分ランナー(LTペース4'40"/km)6'29"~6'52"/km

となり、Eペースよりもさらに遅いペースになっていることが分かります。

午後のジョグ

同様に午後のジョグも見ていくと、

8–12 km, average pace 4:30–5:00 min·km
36~60分 55~61%LT

とさらに遅いものになります。
2時間45分ランナー(LTペース3'42"/km)6'08"~6'49"/km
3時間ランナー(LTペース4'01"/km)6'35"~7'18"/km
3時間30分ランナー(LTペース4'40"/km)7'39"~8'29"/km
に相当します。

キプチョゲのジョグはなぜ速くないのか?

ここが本稿での最重要ポイントになるかと思いますが、なぜキプチョゲはここまでゆったりしたペースでジョグをしているのか?市民ランナーの方の中には繋ぎのジョグでもEペース、なんなら上限よりの「速いジョグ」を重視している方も多いと思いますし、そうした前提からするとかなりのズレを感じるかも知れません。
実はインターバルなどの高強度練習やロング走も含め、キプチョゲのトレーニングのポイントはかなり強度が抑えられています。その代わりにボリュームとその分割が重視されていて、セッション数は週に13セッション(7日×午前・午後の14回のうち休みは1回のみ)になっています。一度にドカッとまとめて走るというよりは、負荷(強度×時間)をグッと抑えて、その代わりに回数を重ねることでボリュームを確保している形です。
また、キプチョゲがトレーニングの中で最も重視しているのは、おそらくですがキャリアのピークをいかに長くしていくか?という点にあると思います。過度な積み上げをせず、確実に故障を避けられる範囲の中で、徹底的な継続をしていくことが、38歳になっても世界の頂点に君臨し続けられている秘訣なのかと思います。

自分のトレーニングにも取り入れてみた

上記のような分析を通し、自分のトレーニングの参考にかなりなると思い、早速取り入れてみました。先日の金沢マラソンでは終盤失速してサブ50を逃してしまいましたが、あくまで現時点での目標であるサブ45程度を基準に設計しています。

ベースジョグ 週3回 60~90分 5'08"~5'26"/km
リラックスジョグ 週4回 35~45分 6'08"~6'49"/km
高強度練習 週1回(インターバル、LTペース走、ウェーブ走など)
ロング走 週1回(Mペース21km、モデレート30km、150分ジョグなど)

キプチョゲのように週13回のセッションは回復も追いつかないですし、時間の捻出も難しいのですが、会社からの帰宅ランやテレワーク時の昼休みランなども組み合わせて週9回のセッションを目標に取り組み中です。

金沢マラソン2022に向けたサイクルの中ではEペース下限+15程度での75~90分のジョグをベースにしていたのですが、まとまった時間を取られてしまったり、日によってはこのペースでもしんどく感じることがあったりしました。
それを上記のような形に変更したのですが、メンタル面もフィジカル面もかなり整ってきている感覚があります。特に40分程度のリラックスジョグは全くの無理のない時間とペースなので、走るのが心地いい!最高に楽しい!というモードにいつもなっています。それでいてジョグの週間での時間や距離は伸びているので、回復力の向上にもなっていますし、有酸素系のベースの拡大につながっていると思います。疲れる前にジョグが終わるので、高強度練習やロング走にもいい状態で取り組めるようになっています。

こんなに遅いジョグで本当に記録を狙えるのか?はサイクルが終わってみないと分からないところもありますが、3月の東京マラソン2023でサブ50を達成できるのか?2時間45分にどこまで迫れるのか?レースレポートの中でも振り返ってみたいと思います。

2022/12/29 追記
この遅いペースのジョグをメインにしてハーフマラソンで80分切りできました。普段のジョグでEペース(4’30”-58”/km)まで上げることは2週間に1回あるかないかくらいでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?