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維新躍進にみる自己責任論の拡大

 今回は先の衆議院選挙で議席を4倍近い41議席にまで伸ばした維新を取り上げようと思います。大阪では公明党が候補者を立てたところ以外はすべて維新が勝ちました。これはおそらく大阪都構想の時に公明党が反対の立場から賛成へと鞍替えしたときの条件として、「衆議院選挙で維新は公明党が候補者を出すところには候補者を出さない」といったことがあったのだと思います。

 私は維新の政策に反対しているので、今回の結果は非常に受け入れがたいものとなりました。ただ維新の躍進は日本の社会がどう変化していっているのか、その原因は何なのか、といったことを考える上で非常に有益と感じたので書いていこうと思います。

 

維新を支持する人の思想

 まずはじめに、どういった人が維新を支持しているのか?についてです。

 この動画で冨田さんという関西学院大学の教授の方がお話されていたのが大変分かりやすかったです(まだすべては見れていませんが…)。

 維新の支持者は比較的所得の高い人が多いそうです。タワーマンションに住んでいるような人で、いわゆる勝ち組といわれるような人たちですね。そうした人たちは、自分たちの今のポジションは自分の努力によって得られた、という考えが強いです。

 逆にいえば負け組と呼ばれるような人々に対して、「努力が足りなかったからそのポジションにいるんだ」という自己責任論を唱えてきます。さらにそうした人々を「自分たちが努力した結果である税金で助けるのは嫌だ!」と感じているそうです。

 なんで努力した俺たちのお金で努力しなかった人たちを助けてやらないといけないんだ!ということですね。

 そしてこの考えが、維新の身を切る改革、無駄の削減と非常に相性が良い。無駄の削減とはつまり、社会的弱者への救済措置となる、公共サービス、社会福祉をどんどんと削っていくことです。ある程度所得のある人にはこうした政策の影響は小さいですが、所得の低い人は苦しい生活を強いられることになります。

 端的にいってしまえば、弱者切り捨ての政策を推し進めていくわけですね。

身を切る改革が根本から間違っている理由

 維新が身を切る改革を掲げているのは政府の財政赤字をこれ以上拡大することは危険である、いわゆる財政破綻論を信じているからです。

「(岸田首相を)残念だなと思う。改革はやらずに、分配だと。僕も分配は大事だと思うが、分配するなら原資が必要になる。その原資はだれが負担するのか。また借金ですか。その借金は将来、だれが負担するのですか」

 吉村知事は政府が発行する国債を将来世代に返すべきだという誤解をしています。確かに返さなければいけないものならば、支出を減らして、弱者切り捨ててでも将来世代のためにという議論が出来ないわけではないと思います。

 しかし、政府の国債を国民が負担しているわけでもなければ、将来に返さないといけないものでもありません。ここは、なかなか理解するのが難しいとは思いますが、現実として政府は国債を返済せずに借り換えし続けています。そのため国の借金とやらは増え続けているわけです。

 なのでわざわざ身を切る改革する必要もなければ、無駄の削減と言いながら弱者切り捨てを行う必要もないわけです。

みんなで豊かになることができる

 社会を安定化させるには、勝ち組、負け組といった格差を減らしていくことが重要です。税金の支出先を気にするのはわかりますが、デフレ下で政府や自治体などの公的部門が支出を減らしてしまえば、経済はよくなりません

 支出を切り詰めて貧困層が増えれば、治安も悪化していきますし、景気も悪くなっていきますので勝ち組であろうが長期的には損をします。

 また、そもそも努力している、していないで人を判断してしまうのも思いとどまるべきかと思います。親ガチャという言葉にもある通り、親の所得によって教育のレベルは変わってきますし、環境や人との巡りあわせなど、自分ではどうしようない部分も大いに関わってきます

 努力を否定するつもりは全くありませんが、努力できる環境がたまたま用意されていた人もいれば、そうした環境が用意されていなかった人もいる、と考えることもできると思います。

 この辺の話は、『実力も運のうち 能力主義は正義か? 』マイケル・サンデル著を読んだときに改めて書けたらなと思っています(図書館の予約待ちでかなり先になりそうですが…)。

まとめ

 維新の躍進によって日本社会が格差拡大してしまっていること、そして自己責任論によって、弱者切り捨てを許容すべきという考えが広まってしまっているのだと思います。

 そしてその根っこにあるのは、財源の問題であると思っています。維新が身を切る改革を叫ぶのも財源を捻出しようとしてのことです。財源の問題を乗り越えることが出来れば、貧困層を切り捨てることなく、日本国民全体で豊かになっていけるのではないと思います。

日本社会が少しでも良くなることをお祈りします。

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