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ツイッターインフルエンサー8タイプ分類学

令和日本で最も人々に欲されているものが2つある。それが”賞賛”と”承認”である。

病気や事故を除いて命の危険とは無縁となった平和な国日本、そこで暮らす人々は変わり映えのしない日々を生きる中で『何者かになる』ことを強く望み始めたのだ。

しかし厳しい現実社会の中で、何ものかになることはとても難しい。人よりも優れた容姿、学歴、フィジカル、稼ぎ……努力と才能と運に恵まれた一握りの人間しか、激しい競争社会の中では勝ち抜いて賞賛と承認を得ることはできないのである。そしてその勝負の決着はほとんどの場合は25歳までについてしまっている。あれ?俺の人生ってうまくいってもこのぐらいで頭打ちじゃね?ということが見えてきてしまうのが25歳なのだ。そして現実世界でスペシャルな”何者か”になることができなかった多くの人々は、自分なりの人生哲学や諦観を身について凡人としての人生に適応していく

しかし、強い業を背負って生きる者たちは諦めない。彼らは再チャレンジを求め彷徨い、そしてある空間に辿り着く。それが”インターネット”である。スマートフォンの登場で人類皆ネット民となった現代社会において、インターネットは人生の敗者復活戦会場へと変貌を遂げたのである。特に全盛期を迎えているSNS、中でもX(旧ツイッター)の世界では、賞賛と承認を浴びることができる”インフルエンサー”の座を巡って日々激しい戦いが繰り広げられている。

筆者は平成から令和まで20年以上の間インターネット世界を眺めてきた。そして辿り着いたXで短い期間ではあるが数々のネット教祖たちの栄枯盛衰を目にしてきた。その経験から、Xで注目される人間を8つのタイプに分類することができた。今回は各タイプの強みや弱み、どのような人がその席に座ることになるかを書いていこうと思う。インフルエンサーを目指す読者は自分がどのタイプに近いかを考えて戦略を練る際の参考にして貰いたい。


1.グル

グルとは”教祖”のような存在であり、沢山の信者を抱えるタイプのインフルエンサーである。彼らは独自の経典を持ち、それらに書かれたマントラを武器にフォロワーを増やしていく。それぞれの教祖ごとに様々な経典があり、多くの場合はやや過激な理論や尖った批評を含むものが多い。信者の数が教祖の言葉により説得力を与え、信徒が経典に書かれたマントラを日々唱えることで教祖の存在は拡散されフォロワーをどんどん増やしていく。

グルになれるタイプはややサイコパス気質で他者の意見に耳を貸さない、自分の考えが強固に確立された人間が多い。グルになるうえで最も重要なことは狂気的な思想と自分の意見を絶対に曲げない信念、そしてアンチからの批判を意に介さない強いメンタルだ。少し批判されたぐらいでアタフタした姿を見せてしまったり、経典に書かれたマントラが日々ブレていては信者たちが失望して離れて行ってしまうからだ。

グルの強みでもあり弱みであるのが強烈な信者たちの存在だ。彼らはグルが彼らの望む強い存在でいる限り、時には頑強な盾になりグルを守り、時にはファンネルとなって敵対アカウントに襲い掛かる。

しかしグルにとって心強い存在のはずの信者たちが、グルにとってもっとも危険な存在でもある。信者たちが増えるほどに、彼らは自分たちの教祖に対して大きな期待を持つようになる。そして上手く信者の手綱を引けなかった場合、教祖がコントロールしていたはずの信者が逆にグルをコントロールし始めるのだ

制御を失敗した信者たちに担ぎ上げられたグルは、最終的に信者の理想を演じることに疲れて果て、プレッシャーに潰されて教祖の座から引きずり降ろされることになる。グルを長期間続けるにはサイコパスな気質だけではなく、信者を上手くコントロールできるだけの器が必要になってくるのだ。

2.クリエイター

クリエイターとはプロの仕事人たちのことである。イラストや音楽、外見などで他者を圧倒する高い能力を持ち、自身の持つコンテンツを武器にしてフォロワーを増やしていく。

彼らの持つ能力は千差万別であり、プロフェッショナルとして現実社会でも十分な賞賛と承認、稼ぎを得ている者もいれば、現実ではそれほど有名ではないものの、自分の持つコンテンツを上手く当世に合わせてブランディングすることで人気を得ている人もいる。

彼らの強みは党派性に寄らない、界隈に依存しないでフォロワーを増やせることだ。自分の作り出すコンテンツさえウケればいいので、他者との戦いというよりもどちらかと言えば自分との戦いによる部分が大きい。SNSから身を引くことになる最も大きな原因がネット上の人間関係である。クリエイターはコンテンツさえコンスタントに発表で来ていれば、最もリスクのデカい”ネット上での人付き合い”を気を揉まずにアカウントを大きくできるのである。

またグルほどフォロワーから強い信心を向けられることも少ないため、フォロワーに振り回される心配も少ない。クリエイターのネット上での防御力は非常に高いのである。

クリエイターの弱点はコンテンツの人気に依存していることだ。同じマントラを唱えて続ける胆力が求められるのがグルなのにたいして、クリエイターは常に新しい作品をネット上に発表していくクリエイティビティが求められるのだ。無料コンテンツで溢れるSNSでは、空白期間を作りすぎるとすぐにフォロワーは更新頻度の高い別のクリエイターのもとへ去って行ってしまう。

3.ボス

ボスとはその名の通り特定の界隈を〆るリーダーだ。彼らは自身が所属する界隈に話題を提供したり、逆に界隈で人気の話題をまとめたりして仲間たちが楽しむ群れられる村を運営し、楽しそうな村に新しい村民を集めることでフォロワーを増やしていく。

グルとの相違点はボスたちはマントラではなくコミュニケーションを武器にしている点だ。グルが一方的に説法を信徒に向けて投げ下ろすのに対して、ボスはフォロワーたちとキャッチボールをすることで界隈のつながりを強固なものにしていく。

グルやクリエイターとの違いは彼らは自分の色をそこまで強く出さない。あくまで界隈のメンバーにウケのよいこと、彼らと円滑にコミュニケーションを取ることを重視する。そして村が大きくなれば村民の中から自然発生した中ボスにもポジションを与え、界隈を組織化して巨大化させていく。

ボスの強みは何といっても特別な経典や人目を引くコンテンツを生み出す能力がなくてもインフルエンサーになれることだ。コミュニケーション能力と界隈に常駐する時間さえあれば誰にでもなれる敷居の低さが魅力なのだ。

ボスをやるうえで最も難しいポイントが自身の承認欲求のコントロールである。ボスは界隈のリーダー的な立ち位置で慕われはするものの、経典やコンテンツを生み出す能力がないためにグルやクリエイターほどの承認シャワーを浴びる機会が少ないのだ。

村が巨大化しフォロワーが増えてきたところでつい自分の”我”を出して村民たちから過度な賞賛を得ようとすると、自分自身にコンテンツ力がないせいで逆に村民を白けさせてしまいバッシングを受けることになる。そして自己評価と他者評価のズレに苦しみ界隈を去ることになってしまう。ボスに最も必要なものは自分の我を抑える忍耐力なのだ。

4.コミックトーカー

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