見出し画像

【設定資料】素人にもできる魔物対策

(ノアの本棚から「素人にもできる魔物対策」という本がはみ出ている)

 あなたの住まいの近隣に、魔物が住み着いたとしよう。さて、あなたはどうするだろうか。騎士団に依頼するほどではなく、ギルドや傭兵団に依頼するには予算がつらい。
 魔物は確かに危険なものであるが、種別によっては素人にも対策ができる。そもそも住み着かないようにすることもできる。ここではそのためのノウハウをご紹介したい。
 尚、自力で魔物を退治する場合は入念に準備をし、少しでも身の危険を感じたら逃げること。

①ゴブリン、コボルト
 一般的なゴブリンは身長一五〇cm程の小ぶりの魔物である。緑色の肌に尖った耳。頭髪はない。腰に衣類を巻いていることから、「呪われた人間のなれの果て」と言われていた時期もあったが、全く関係ない。
 一般的なコボルトは身長一三〇cm程の魔物であるが、個体差はかなり激しい。二足歩行の犬の姿をしており、衣類のようなものを身につけている。研究により、元々両者は同じ魔物であったことが判明している。多少の違いはあるが、生態はかなり似通っている。
 彼らは森や洞窟に住み着く。もしもあなたが森を所有しているのなら、洞窟の有無を確認しよう。洞窟の入口を石で塞ぐ方法が紹介されていることもあるが、両者共に賢い。石を避けて洞窟に住み着く事例は全国で多発している。定期的に見回りをして寄りつかないようにするしかない。
 さて、彼らは非常にポピュラーな魔物だ。小柄なことから「自分にも退治できる」と思い込む人も多いが、それは大きな間違いである。ゴブリンもコボルトも群れで暮らし、その中には必ず腕っ節の強いボスや魔法を扱う個体がいる。素人が退治に手出しをしてはいけないのである。
 もしも森でゴブリンやコボルトを見たときはしばらく様子を見て、こちらに被害が出ないのであれば放置でも問題ない。しかし、備蓄食料を盗まれるとか、家畜が襲われるとか、そういった被害が生じた場合は速やかにギルドを頼るべきだ。
 余談になるが、ゴブリン退治は魔物退治の練習に最適な依頼として重宝されており、相場より多少報酬が低くても受けてもらえる場合がある。
 コボルト退治はゴブリン退治よりも難易度が上がるが、彼らはゴブリンよりも綺麗好きで、住処の調査がゴブリンのものよりも容易だ。やはり魔物退治練習にはうってつけとされている(※専門の知識を得た人向けの話なので、素人は手を出さないこと)。

②影の魔物
 あなたは「なんだ、結局ギルドを頼るしかないのか」と思うことだろう。しかし、ここで紹介する「影の魔物」は対策が容易な魔物である。怨念や呪詛の魔力から生み出されるこの魔物は「実体がない」「特定の姿を持たない」「本質は炎」という特徴がある。
 影の魔物は呪詛の魔力から生み出されるため、聖水をかけると退治可能である。聖水の量は一般的に流通している瓶一本分(概ねティーカップ二杯分)で足りる。しかし、影の魔物が生じるということはどこかに呪詛の魔力の源が存在する可能性が高い。墓地の管理はきちんとできているだろうか? 放置された死体はないだろうか? そこを絶たない限り、影の魔物は延々と発生することだろう。

③スケルトン
 ガイコツの魔物である。大きさは人間と同程度。「聖水をかけた後、頭蓋骨を砕いてしまえばよい」というのは迷信で、彼らは確かに聖水で動きが鈍るが、視覚情報は魔力から得ている。つまり、人間の目に該当する部位を取り除いたところであまり問題はない。ただし、動きは鈍くなる。
 正しくは「聖水をかけた後、粉々になるまで砕いて瓶に入れ、そこへ更に聖水を注ぐ」である。
 注意すべき点は、聖水をかけただけでは安全とは言えないので武器になりそうなもの(刃物、鈍器、その他飛んできたら危ないもの)がない場所で退治すること。スケルトンの魔力には個体差があるが、三キログラム程度のものなら容易に動かせることが多い。

【コラム:魔物の種類】
 魔物はおおまかに二種類に分類することができる。

・もともと魔物として生じた魔物
・在来動物が魔力を得て突然変異した魔物

 ゴブリン、コボルト、影の魔物、スケルトンは前者に当たる。ワームはミミズから派生したので後者となる。読者諸君は「ミミズはあのような口を持たない」と反論を投げかけたくなるかもしれないが、容量を超えた魔力は身体に影響する。かの有名な大賢者も目が三つあると言って世間を驚かせた。
(ノアの文字でこう追記されている――「※これは父さんのでまかせ」)


⑤ワーム
 ワームは土の中に住み着く、ミミズに似た虫の魔物だ。体長はおおよそ三メートル。頭の先端に口を持ち、口腔はびっしりと牙に覆われている。この牙で獲物の肉を引き裂き食らうのだ。
 ワームは森や畑に住み着くが、基本的に騒音を嫌うので人里には住まわない。しかし過疎の進んだ村や集落となると話が変わる。不規則に土が盛り上がっている場所が点在するのなら、ワームの可能性を疑った方がよいだろう。ワームの巣が分かるのならば討伐は容易だが、素人には手出しができない魔物なのでやはり素直にギルドを頼るべきだ。
 尚、基本的に魔物は知性が高いが、このワームだけは例外である。魔力の補給手段を上手く構築できないため、魔力を豊富に含む動物を好んで食らう。

⑥ウータ
 こちらは巨大なウサギの魔物である。あのかわいらしいウサギがそのまま大きくなったのでペットとしても人気がある。が、気性は荒く、肉を食うため飼い主が食われる事故が後を絶たない。
 ウータに関しては、被害に遭うような状況を作らないことが大切だ。この本を読んでいる諸君に関しては、決してウータを飼おうなどと思わないこと。ただそれに尽きる。森に入る場合は、ウータの嫌う音を出す装置を活用すれば、まず安全なはずだ。

【コラム:魔物の飼育】
 魔物の飼育は専門知識があってもなかなかに難易度が高い。しかしアンヒュームの中には魔力のない自分の代わりに魔力を持つ相棒として魔物を使役する者も居る。小型な魔物なら、魔石と呼ばれる特殊な石に住まわせるのがよいだろう。しかし、魔石に宿るということは信頼関係の証であるため、そこまで彼らと仲良くなれるかはまた別の話である。



気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)