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少しだけドアを開けて(卒業パーティーでのハラル料理の話)

ご無沙汰してます。実はnoteではあまり書いてませんでしたが、私イギリスに住みながら子育てをしておりまして(追記:2019.3に帰国)。娘は現地のナーサリーに行っており、その7月の卒業パーティーが非常に印象深かったので、twitter等でも書いたんですけど、ふと思い立ってnoteにも残しておくことにしました。


皆様、ハラルという言葉はご存知でしょうか。
詳しくは以下wikiを参照。
→ハラル(Wikipedia
イスラム教関連の言葉です。イスラム教では豚肉を食べてはいけないわけですが、それ以外の食べ物でもある一定のルールに沿って処理する必要があり、そのように禁忌を避け戒律に則ったものをハラル(ハラール)という。

で、先日、娘の卒業式の後に、ナーサリーの子供達&パパママ&スタッフ達で、ちょっとした持ち寄りのパーティーがありました。勿論参加してきたのですが、ここで悩むのがお料理。なぜかというと、うちのナーサリーはイスラム教徒が多く、一部ヒンズー教徒の方もいます。主催者側に聞いてみると「そうねぇお肉使う料理だったらやっぱりハラルだと食べられる人が増えるわね」とのこと。かくして初めての「ハラル料理」作りをすることになったのでした。


とはいうものの実は単に豚肉を避けただけで「ハラル」になるのではないのですよ。たとえ羊肉であっても、その羊はハラルの餌を食べたものでなければいけないし、屠殺の仕方にしても厳密にルールがあるので、それに従っていないものは「ハラル」にならない。さらに調理の場においても、一度豚肉を調理したことのある調理場で料理された場合厳密にはハラルにならないとか…ともかく「ハラル料理」とは豚肉やアルコールを避けただけで安易に名乗れるものじゃないらしい。


そこで、完全なハラル料理は自宅では難しいのだけど、以下条件で今回は調理することに。

・お肉はハラルのものを使う(イギリスではスーパーでハラルコーナーがある)
・アルコールを使わない
・お醤油もアルコールなしのものを使う
・バーベキュー用の使い捨て調理器具を使う

ぶっちゃけ最後はただの気持ち的なところもあるのだけど。だってフライパンとかオーブンはどうしても豚肉を調理したことがあるものになっちゃいますから…とにもかくにも、この条件で、かつみんなからの期待である日本料理ということで私は『テリヤキチキン』を作ることに。

〜材料〜
・ハラルマークがついた生姜ペースト
・ハラルマークがついたニンニクペースト
・ハラルマークの鳥もも肉
・ハラルマークのKIKKOMAN醤油
・砂糖


ハラルに近づけた日本食を作る上で意外と盲点なのが醤油。醤油って醸造途中でアルコールになるものがあって、そうなるとアルコールが禁忌のイスラム教的にはダメなのですよ。というわけでハラルの醤油を使います。日本でもハラルの醤油はAmazonで買えますね。

イギリスで手に入るものとしては以下の醤油がハラルのようです。KIKKOMANのグルテンフリー醤油。ちゃんとハラルマークがついています。グルテンフリー客が家に来た時にも使えるな。こちらではかなりいます。ビーガンも多いし。

〜(適当な)作り方〜
1. 鶏肉を醤油・砂糖・ニンニクしょうがペーストで適当に作ったタレを入れたビニール袋で漬け込む。本当はここでみりんやお酒を使いたいところなんだけど、使えないので、ニンニクを入れることでコクを出します。
2. バーベキュー用の使い捨てアルミバットに漬け込んだお肉を並べてオーブンで焼く。200度10分焼いてその後180度で様子見ながら…


終了。簡単!先述の通り、気持ち的な話ですが、既に使用済みの調理器具にはできるだけ触れさせないようにしてみました。なんか後で聞いてみたらそこまでせんでもいい…みたいなことは言われましたけどね。


さて、パーティー当日。
テーブルの上にはたくさんの各国のお料理(どれも美味しかった)!!私もTERIYAKI CHICKEN を並べます。横に「JAPANESE TERIYAKI CHIKEN, NO ALCHOL」とも書いておきました。


いざ始まると、やっぱりイスラムのお母さんたちはお料理ごとに「これはハラル?中のお肉は何?」と作った人に聞いて回っていた。実際、豚肉を使った肉まんのような料理があって、これは食べられないわ…となっていた。そりゃそうか。で、私のお料理の前でひとこと「これは食べられるわね!」

一応「あ、でも作ったのは普通にうちのキッチンでだからね」と付け足しましたが、「OK! OK!」とたくさん取って行ってくれました(この辺りの厳密さは人によるようだ)。1キロぐらい作っていったんだけど、ほとんど残らなかった。パーティーのあと、先生たちも「TERIYAKIを作ったのはたぬ?ハラル配慮してくれてありがとう。おかげでよりたくさんの人が食べられたわね。私も食べたけど美味しかった」と言ってくれました。嬉しい。

さらに嬉しかったことは…
イスラムのお母さんたちが前よりフレンドリーになったこと。実はいうと、私一部のイスラムのお母さんたちとはあまり関わってこなかったのです。子供達同士は仲が良かったんだけど、私がその子のお母さんに挨拶しても、返ってこなかったりぎこちなかったりして(全員が全員ではないが)。わたし自身からも壁を作っていたかもしれない。でもそれが、パーティー後から明らかに変わりました。私の英語が貧弱すぎるので、相変わらずたくさんはおしゃべりしないけれど、向こうから挨拶してくれるようになって…

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家にプラマーなど修理人がくるとき、私が日本人だと知って、自発的に靴を脱いでくれる方がいる。そういう方に、私は勝手に少しばかり親近感を抱いたりするのだけど、彼女たちもそういう感じなのかもしれない。別にお互い完全に全部理解したわけじゃない。親友になったわけじゃない。ただちょっと、ドアを開けて相手の文化を覗いてみただけ。

それでもやっぱり
閉めっぱなしとは違う。


ところで生粋ロンドナーのメアリーにも今回の相談してみたのだが…

まあなんだ…メアリーの言う通りで。このわたしのエピソードはとても消極的な異文化コミュニケーションの話で、少しだけじゃなくて、ガンガンドアを大きく開けて関わっていけたらいいんですけど。今度はスシ持って話しかけてみるか。


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実は第二子妊娠中で(それで更新してなかった)、日本への帰国も近づいている今日この頃。ロンドンの日常はたくさん私に色んなことと出会わせ、考える時間をくれた。それを日本へ帰るまでの間、少しだけ、これからnoteにも書き写しておこうと思います。

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