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技術士(生物工学部門)の第二次試験突破マニュアル

 技術士(生物工学部門)の第二次試験の情報をまとめます。この記事で出てくる技術士は、全て生物工学部門のことを指していると考えてください。なお、第一次試験については、別にまとめていますので、下記を参照ください。

1.試験通過のメリット

 私が考える第二次試験通過のメリットは、①技術士登録と名刺への記載、②ネットワーキング、③公的機関に登録を受けた事務所や研究所が貰えるの3つです。詳しく見ていきましょう。

①技術士登録と名刺への記載
 二次試験合格者は晴れて、登録を受けて技術士を名乗ることが可能になります。名刺に技術士(生物工学)と記載ができます。博士と違ってどのような人に対してもアピールできるものではありませんが、エンジニア業界では博士号と同等の権威があり、かつ差別化という点では博士よりメリットがあります。詳しくは別記事を参照ください。また、博士の取得者は、英語氏名の後に、”Ph.D.”と記載しますが、同様にして技術士も”P. E. Jp”と記載でき、称号で自分の名前を長くしてユニークにすることができます。

Pont Neuf Ph.D., P.E.Jp

②ネットワーキング
 権威付けという点では限定的な価値しかない技術士資格ですが、その本質はコミュニティへの参加によって得られる、異分野の技術者の人脈や、そこで得られる最新知識や技術動向、効率的かつ実践的な研鑽にあります。技術士の第一次試験を合格しただけでも、日本技術士会の研修会等へは参加できます。実際、私も学生時代や新入社員の頃は、一流の産官学の技術者の話を聞ける生物工学部会の例会にはお世話になりました。しかし、やはり修習技術者あるいは技術士補として参加する例会のネットワーキングでは、物足りないと感じるようになりました。教えてもらうだけではなく、対等な関係性の中でさらに密な情報交換や協働をしたいと考えるようになりました。そして、技術士資格を入手してから例会に参加してみると、心なしかネットワーキングの在り方自体が変わったように感じました。イベントは研鑽の場から、切磋琢磨の場に変わっていました。

③事務所や研究所(の看板)が貰える
 技術士は登録時に事務所を設置する必要があります。①自分で作る、②勤務する会社を事務所にする、③他社を事務所にする、の3つから選べるのですが、①自分で作るを選ぶことによって、公益社団法人に登録を受けた自分の事務所や研究所を構えることができるのです。ポンヌフは研究所を作りました。資格を得てかつ、ラボまで貰える(看板を貰える)のですから素晴らしいと思います。現代は厚労省の就労方針による副業推進やコロナ禍のリモートワークの普及を受けて新しい働き方が実現できるようになってきています。技術士ラボやオフィスの活用は、働き方に新しい視点をもたらしています。

2.受験資格や概要

 受験資格は、第一次試験の合格者または、その同等の資格があると判断される方(JABEEプログラムの修了者)で、所定の業務経験を積んだものとなります。詳しくは下記の記事をごらんになられると良いでしょう。

技術士制度の紹介 柿谷 均(柿谷技術士事務所), 生物工学会誌, 特別企画「技術士編」(前編)第98巻 第11号 (2020)

 難易度はそれなりに高く、正直運によるところも大きいと思います。たとえ現役の技術士であっても、毎年出題された全ての問題をパーフェクトに回答できる人は少ないと思います。従って、受験資格が得られたら、何年か継続して受験してみるという中長期的な視点が必要と思います。

3.試験方法

 第二次試験は、筆記試験と口頭試験(筆記試験合格者のみに課せられる面接)からなります。筆記試験は、 必須科目と選択科目からなります。

■筆記試験
<総合技術監理部門以外の技術部門>
 必須科目:「技術部門」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの
 選択科目:「選択科目」についての専門知識及び応用能力並びに問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの

<総合技術監理部門>
 必須科目:「総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び応用能力を問う問題
 選択科目:上記、総合技術監理部門以外の技術部門の必須科目及び選択科目

■口頭試験(筆記試験合格者のみ)
技術士としての適格性等について口述により行います。

 生物工学部門の場合、R2は必須科目は2問題(ただし1問題が複数の小問(R2は4問)より構成される)から1問題を選んで、答案用紙3枚に記述するものになっています。時間は2時間です。

 選択科目は生物機能工学と生物プロセス工学の2つに分かれており、それぞれの選択科目は選択科目Ⅱ(「選択科目」についての専門知識及び応用能力に関するもの )と選択科目Ⅲ(「選択科目」についての問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの)の2つの大問から構成されます。また、大問は3~4の小問から構成され、大問につき答案用紙3枚に記述する形式になっています。時間は選択科目ⅡとⅢを合わせて3時間半です。

 課題や留意点、技術の長所短所、アプローチ、改善策、倫理面などを多面的に述べるものになっています。詳しい攻略方法は、別途まとめたいと思います。

4.試験スケジュール

 令和3年度の情報は下記のとおりです。例年、受験申込が4月にあり、筆記試験が7月、筆記合格発表が10月、口頭試験が12月頃、合格発表が翌年の3月となります。最近はコロナウイルスの影響で、スケジュールがイレギュラーになる可能性を考慮しておいた方が良いでしょう。

受験申込書配布期間 令和3年4月1日(木)~4月19日(月)
受験申込受付期間 令和3年4月5日(月)~4月19日(月)
※令和2年度技術士第二次試験筆記試験合格者は、特例措置により5月13日(木)必着
筆記試験日
・総合技術監理部門の必須科目 令和3年7月10日(土)
筆記試験日
・総合技術監理部門を除く技術部門
・総合技術監理部門の選択科目 令和3年7月11日(日)
筆記試験合格発表 令和3年10月下旬
口頭試験(筆記試験合格者のみ) 令和3年12月上旬~令和4年1月中旬のうちのあらかじめ受験者に通知する日
口頭試験合格発表 令和4年3月中旬

5.合格率

 平成21年度から令和元年度までの技術士第二次試験の受験者数と合格者率を解析してみました。受検者人数は30人から80人程度、最近は40~50人の間で遷移しています。また、生物工学部門の合格率は20%から50%の間であり、全部門の平均がほぼ横ばいで、20%程度であることを考慮すると、生物工学部門は他部門よりも合格率が高い傾向にあると考えられます。受験者が優秀であるのか、問題が簡単であるのか、試験条件が緩いのか、その原因はよく分かりません。

図2-1

 続いて、他部門と比較してみますと、興味深いことが見えてきます。まず、生物工学部門の人気を示す受験者数は、第一次試験では全体の中央値と近かったのに対し、第二次試験では下位5~3位に位置していることが分かります。これは、第一次試験をパスした方が、第二次試験を受ける動機付けが十分になされていないことを示唆しています。技術士(生物工学部門)は緊急にその対応に当たらなければならないでしょう。

 次に、合格者数の分布は、ほぼ受験者数と同様の傾向になっていますが、受験者数が生物工学部門より多かった部門が、合格者数では生物工学を下回るケースが見られます。この結果を反映するように、合格率は例年の平均値中央値よりも非常に高くなっています。

図2-2

図2-3

図2-4

6.お薦めの勉強方法

 二次試験では、記述式で体系立てて、何らかの技術的な面を説明し、その専門的応用能力を議論するような内容になっています。知識の補完という意味では、一次試験の内容を軽くおさらいしておくと良いと思います。

 ここで言う専門的応用能力とは、いくつか考えられる課題解決策の長所短所や、世の中のニーズや技術進展の状況を考慮し、論理的且つ合理的に説明する能力と考えて良いでしょう。その上で、お勧めの方法を根拠を持って示し、なお課題となる負の側面をカバーするための方法について、自分の意見を科学的に論述することが求められます。また、倫理面の課題と対策についても述べられるようにしておく必要があります。

 出題分野については、ある程度、山を張ることをおすすめします。私も何度も予想を的中させたことがあります。正しい山の張り方をマスターすれば、合格率を飛躍的に高められるでしょう。そう、山を張る能力も技術士に必要な専門的応用能力の1つと考えられます。さらに言うと、普段から世の中の社会課題や環境課題などへ目を配り、自分自身がその分野の専門家(技術士)として、どのような技術を使って取り組むべきか、技術課題は何か、倫理面での問題はないか等を考える癖をつけることが必要です。(このあたりは別記事で記載予定)

 そう、技術士試験は技術士として相応しいあなたが、実際にそうであることを証明する仕組みなのです。試験を受ける前から、技術士としての能力が求められているのです。

まとめ

第二次試験:第一次試験合格者またはJABEE課程修了者。筆記試験と口頭試験(筆記合格者のみ)からなる。受験時、合格後の登録時に会社の承認(印鑑)が必要。筆記試験は小論文形式で記述量が多く、難易度が高い。合格率も低い。試験の通過には、技術者としての経験や視座が求められる。

画像はFacebookの士業娘さんのサイトから、規定(2020年11月現在)を守って使用しました。


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