15)東京地方裁判所

ニュースを聴いていると、たびたび「東京地方裁判所」という名前が出てくる。

裁判は地方裁判所で始まる。各都道府県に地方裁判所があり、東京も例外ではない。この、「東京地方裁判所」という名前が、なんとも好きだ。

そう、例外ではなく「地方」裁判所だということが、おもしろいと思う。

遠出した先で平日に時間ができると、裁判の傍聴に行くことがある。傍聴は誰でもできる。一言で言えば、邪魔さえしなければいい。何の手続きもいらず、そっと傍聴席に座るだけ。

誰でもいつでも傍聴できるのは被告人を晒すためではない。第一、被告人はまだ無罪の推定の中にいる。絶大な権限を持つ国家がその力を濫用することなく、法に基づいて罪を裁いていることを、誰でもいつでも傍聴できることによって保証しようとしているのだから、一般人はちょこちょこ見に行けばよい。

今の世の中では、ありがたいことに空気のように当たり前に自由を享受しているけれど、国家が暴走したら言論の自由なんかあっという間になくなる。歴史に学んで作ってきた歯止めがなんとか機能しているから、私たちは好きなことを話せるのだ。

東京地裁には100以上の部屋があって、日々、とんでもない数の法廷が開かれている。開庁時間ならいつ行ってもちょうどいい時間に始まる部屋がある。他の、本当に小さな地方裁判所とはぜんぜん桁の違う人の動き。それでも、制度の中の位置付けは、同じように「地方裁判所」である。あくまでも平等な仕組みで動いているんだと主張するような名称だなと、聴くたびに思っている。

2019/07/18

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