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嗅覚過敏だったという話


 わたしは人一倍嗅覚が過敏だ。正確には、香りを感じ始める閾値が低いという訳ではなく、不快に感じ始める閾値が低い、といった感覚。心地よく香りを感じられるキャパが小さい。


どうして嗅覚過敏になったか

 元々「ちょっと匂いによく気づく方」ではあったものの、生まれたときからこのときみたいにいろんな匂いでオエオエしてたわけではない。ちゃんと明確なきっかけとタイミングがあって始まったことだ。それについてはここで細かく語るのもアレなのでわたしのnoteの「わたしと初彼氏と闇の高校3年の話」の「ワイ、追い地獄編」を参照していただきたい。





実際の感じ方


 先程あっさり「いろんな匂いでオエオエ」と書いたものの、すべての匂いに不快感を持っているわけではないし、「不快な匂い」を受け取っているわけではない。食べ物の匂いや臭いニオイは以前とそのままに感じているし、香水や柔軟剤、リンスなんかの人工的な香料が「いい匂いである」ということは分かっている。そう、別に「香水をつけたお姉さんが腐った魚のように臭う」というわけではないのだ。

 こればっかりは「経験しないとわかりえない」感覚であるのだが、喩えで表してみようと思う。

 自分の好きな匂い、殊に食べ物の匂いを思い浮かべてほしい。食欲を唆る、鼻から美味しさを感じられるような匂い。スパイシーなカレーの匂い、出汁が効いてこってりしたラーメンの匂い、肉肉しいハンバーグの匂い、はたまた甘いパフェの匂い……。平常時や空腹時には、それはとてもいい匂い、快感を覚える匂いと感じるに違いない。

 しかしそれを3000m走を終えて疲れ、激しく呼吸をしているとき、或いは胃の限界値を越えるほどに沢山食事をしたあとに嗅いだなら、と考えてみてほしい。きっと「好きな食べ物の匂いであることは確かにわかるし、いい匂いなはずではあるけれども今嗅いでしまうと吐き戻しそうになる不快な匂い」が出来上がると思う。

 簡単に言えば、わたしの嗅覚過敏症状は何を嗅ぐにもずっと後者の状態だったような感じだ。





嗅覚過敏はマスクで助かる場合と、そうでない場合があるぞい

 外に出れば人がいるし、人がいれば人の匂いがする。香水でなくても、皆シャンプーやリンス、柔軟剤など様々な香りを纏っている。もう満員電車とか女子更衣室とか大地獄。シーブリーズ??オロロロロロロロ……。さながら千と千尋の神隠しに出てきたカエルのように、「むむ、人のニオイがするぞ!」の連続だった。

 しかしコロナ社会以前のわたしたち学生は通学、通塾、アルバイト……と、人が沢山いる外に出ねばならない機会がかなり多かった。1週間のうち6日くらいは外出してたし、電車に乗っていた。

 そんなときに救世主的存在だったのがマスクである。マスクというフィルターを1つ通すことで、少々の匂いなら鼻にたどり着くまでに淘汰される。

 それはさながら濾過のようであった────

 そう、濾過のようであったのだ。フィルターを通すことで雑味のような匂い(柔軟剤のような薄い香り)は感じられなくなるのだが、主張の激しい匂い(香水のようなわざわざつけた強い香り)はより研ぎ澄まされたように、洗練されて、鼻に刺さって入ってくるのだった。

 仕方ないからそれくらいは諦めてマスクつけてたけどね




現在

 現在も発症時ほどではないが嗅覚過敏症状は続いている。特に生理の日や体調が良くない日、メンタルが良くない日は悪化する。対策としてはマスクの着用ももちろん、女性専用車両を避けて乗ったり、若い女の人全般に近寄らないようにしている。自分も若い女の人ですけれどもね。

 近年コロナウイルスとかいうやつが跋扈するようになり、季節を問わずマスクをつけることが自然な事象になってきた。むしろマスクをつけなければ出られないと言っても過言ではない。わたしはもちろんこれまで通りマスクをつけている。ラッシュ緩和の対策が様々な場所で行われ、人々が集まる機会はことごとく失われた。これは個人的にとても都合のいいことで、直接的に苦しむ機会を減らすことに繋がった。

 この頃はわたしも体調が良い日は香水を嗜むようになった。自分の好きな香りを身体に纏う喜びがわかるようになった。しかしときどき少し苦しかったときを思い出して、場と程度を弁えるようにしようと、ここに自戒を込めておく。

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