さやみど2

残すところあと3日!『名もなき王国』をやっぱり10行でも読んでいただきたい(続・さやみど通信)

ポプラ社文芸編集部の小原と矢島コンビによる、倉数茂さん『名もなき王国』の暑苦しいプッシュ第2弾です。第1弾にいただいた反響と、昨日7月30日に行われたこれまた熱気が異常な発売前読書会についてレポートします。

『名もなき王国』全ページ無料公開期間、残すところあと3日!

 7月25日より10日間限定480ページ全文無料公開を行っている倉数茂さん『名もなき王国』。小説本文と同時に、担当編集者ふたりの滾る思いを「さやみど通信」と称し、投稿させていただきました。

↑こちらはメール交換形式でしたが、今回はスピードを優先してメッセンジャーで通信を行いましたので、簡易版「さやみど通信」として続編をお送りさせていただきます。さや=小原さやか、みど=矢島緑です(さやとかみどとか、ええかげんにしなはれ……)。

________

みど:あらゆる意味で清水の舞台から目をつぶって飛び降りた「さやみど通信」でしたが、たくさんのかたにあたたかく受けいれていただいて、本当に嬉しかったですね。

さや:本当に! 思わぬ反響をいただきました。担当している作家さんからも、読んだよ、とおっしゃっていただいたときには、赤面するやら、「あわわわ……」とうろたえるやら……。でも我々の裏話がきっかけで、『名もなき王国』を知ってもらえたのなら、すべてをさらけ出した甲斐がありました。

:ふたりの往復メール形式にしたのは三浦しをんさんの『ののはな通信』に憧れてだったわけですが。
 奇跡的なタイミングで私たちふたりして、三浦さんにお会いする機会が何か月も前から決まっていて、つい数日前、三浦さんにおずおずと「さやみど通信」のことをお話ししたんですよね。こんなの、やってしまいましたと。私は、愛息Kくんを抱いている、自分よりも身体の小さい小原さんのうしろに隠れながらという最低のスタイルで。。

:そうそう。いきなり神妙な面持ちで前に立った我々を見て、三浦さんは何をカミングアウトされるのかと思われたでしょうね。「かくかくしかじかで、あまりにも『ののはな通信』が好きすぎてですね、つい……」と説明したら、爆笑してくださって……。後光がさしていた……。

:お優しい、お優しすぎる。あとでURL送ってくださいねと言ってくださり、「これは『名もなき王国』が読みたくなりますね」ってお返事まで………なんとすばらしい方でしょうか。
『ののはな通信』オマージュという大看板を掲げてしまったうえ、編集部の人間が出てくるものとしてはファーストnoteだったので、つまらないものにはできない。肩の力がちがちでけっこう書くの苦労しましたよね私たち。。

:本当に! 待てど暮らせどみどりさんからのご返事がないわ、って日々もありましたね。

:ひ…………! や、矢島のスランプのことですね……矢島の分際でスランプとか、ほんとなんなんでしょう。しかもけっこう序盤でしたしね。「私の産休中いったい何してたの? え?」のところ。

:過去の重みに耐えきれなかったのだね。土下座感伝わりました。
 全文公開の日にちが迫ってくるにつれ、焦ったよね。全然最後までたどりつけないし。編集部で「どうしよう、全然面白く書けない……!」と叫んだ午後もありました。こんな二人をそっとしておいてくれるうちの編集部は、なんて人格者揃いなんでしょう。

:たしかに、出たらすぐ読んで笑ってくれましたし。営業チームも気に入ってくれ、あの「さやみど通信」を書店店頭販促物にするなんて話も出てるっぽいですよ!!! なんてこった!!

:いいのかしら?! 作品を貶めませんかね??

:本来なら帯とかで表現しきらないといけないのに、あふれてしまう私たちの思いたるや。。

:「一言のキャッチにできないから、480ページの小説になったんだよ!」by矢島緑名言集より。

:まじでよしてください笑。どちらかというと役割放棄発言だから。。
 でも、「さやみど通信」のおかげで誤字ですら深読みしたこととかを鮮明に思い出し、ほっこりしました。「伯母」のほかに「叔母」と倉数さんがここで敢えて表記を変えてるってことは、実は妹がいるんじゃ……とか。”シュウ”は”シュン”の「もうひとりの自分」ではとか。

:そうそう。昨日の読書会@赤坂「双子のライオン堂書店」さんでも、そういう話が色々出ましたね。深読みが楽しいんだよね。それをみんなで答え合わせするのがまた楽しい!

 倉数さんの対談のお相手になってくださったお写真左の田中里尚さんが、ノートに相関図や時間軸などをびっちり書いてらっしゃったのを見て、「これ、私たちもやりました!」て前のめりになっちゃいました。

:そうそう、思わず写真撮らせていただきました。許可をいただいて、重要部分を伏せて公開。

:この線が飛び交う様子だけでも、どれだけ複雑な物語なのかわかっていただけるかと……。

:私、本の発売前に読書会に参加したの、編集者としても読者としても初めてでしたよ。。無謀すぎひん?

:チャレンジングと言ってくれ。

:でもなんだったんですかあの盛り上がりは。

:あつかった………あまりの熱気に、私思わず飲み物を買いに走りました。
 発売日前の読書会に参戦してくださるだけあって、みなさん読み込み度合いが半端なかったですね。
 名言もいろいろありました。「文章がメチエ」とか。
 ※おそらく、技法が優れているの意。

:知的すぎひん?

:私も使ってみたい。「先生のお原稿、文章がメチエですね!」

:小原さんならなんとかいけますね。
 久世光彦さんの『一九三四年冬―乱歩』を思い出したってお話も印象的でした! 久世さんが乱歩になりきって、空白の数日間を埋める執筆をしたっていう。「入れ子構造」小説としては、これに匹敵するほどの名作だと!

:最高の誉め言葉!
 物語のキーパーソンである沢渡晶にはモデルがいるのでは? と思われる方も多いようですね。父親が医者の幻想小説家ということで、皆川博子さんのお名前が一番に挙がりましたが、ほかにも森茉莉さんとか高橋たか子さんとか……。
 倉数さんご自身は、作家像より、古びた屋敷のイメージが先にあったそうですね。中学時代に、父親に連れられて祖母の実家に行った際に、今は他人のものになっている洋館を通りかかったときに、もともと祖母の実家はここで医者をやっていたのだ、という話を聞かされたことが印象に残っていた、と。

:さすが小原さんちゃんと聞いてるなあ。

:第一章の「王国」の幕開けの「私」と瞬のやり取りなんか特に、BL的な見方で楽しめるのではないか、という意見もありましたね。
 デビュー作の『黒揚羽の夏』から、同性愛や倒錯的な関係は、倉数作品のモチーフの一つであったんだけど、なぜそれを描こうと思われるのか、そういえば私は聞いてみたことがなかったの。
「そういえば、僕の作品には、自分の身体になじまない人物がよく出てきますよね。たぶん、僕自身が、自分がなぜここに存在しているんだろうと違和感を抱えている人が好きなんでしょうね」
「僕自身、7、8歳のころに、夜布団に入りながら、自分は本当に自分なんだろうか、と考えていたことがあって。目を覚ましたら、見知らぬ両親がいて、お前は長い夢を見ていたんだよと言われるんじゃないかという、恐怖にも似た予感が常にありました。そういう意味では、この物語には、子どもの頃からの問いがストレートに出ているかもしれない」
 という倉数さんの回答に、なるほどなぁと思った。

:ねえ小原さんってすごい。

:(矢島さん、同席してんだよね?)第一章「王国」と第六章「幻の庭」の主人公には、ご自身の作家としての屈託や葛藤も素直に反映したとおっしゃってましたね。

:私、「幻の庭」の冒頭の、中国から帰ってきて半年間完全に無職のところと、生意気な文学青年だったころの青春パート大好きなんです。携帯水没させて、大量に買ってきたズブロッカで自分を苛めて口臭がドブみたいになって……。

:倉数さん実際に、ベビーカーを押しながら子連れ狼気分で、「これからどうなるんでしゅかねー」とお子さんに話しかけていたって話までしてくださったね。笑
 当時ケータイ小説が隆盛を極めていた時代で、制作会社に知人がいたので、機会があったら僕にもケータイ小説を書かせてほしいと言ったことがある、という話とか。
 全部初めて伺った話だけれど、当時感じていらしたいわく言い難いやるせなさが作中にも絶妙に漂っている一方で、どこか俯瞰したユーモアもあって、この章最高なんだよね! 田中さんも「40半ばのおっさんの気持ちが何でこんなにわかるのか!」と力説されてました。

:それと、『名もなき王国』の心臓部ともいえる「沢渡晶 掌編集」を、8篇から4篇に削ったという事実が発覚したときの、「おい小原と矢島よ。どういうことだ」というみなさんの視線が痛かったです。

:身の危険を感じるほどでしたね。

:満場一致で『倉数茂選 沢渡晶作品集』の刊行を望まれるという。まだ本編『名もなき王国』が出てないのに。前のめりがすごい!笑

:そんな幸福な本、ある?笑
 熱狂的な倉数ファンのみなさま、ご安心ください! このnoteで、単行本で未収録となった沢渡晶の短編を公開させていただきます。まずは、こちら。「緑陰の家」(りょくいんのいえ)です。

:『名もなき王国』480ページ無料公開も、残すところあと3日となりました。書籍が書店に並ぶ8月4日(電子版も同時発売)以降は、そのままnoteに作品は置いておきますが、書籍と同じ値付けをする予定です。

:いまがチャンスです! ぜひ少しだけでも読んでいただいて、#名もなき王国 をつけてお言葉をいただけたら嬉しいです。

:きっと私たちが見つけに行きます! インターネットの最果てまでも追いかけます。

さ・み:続「さやみど通信」も読んでいただき、ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?