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こやまこいこが描く『となりのせきのますだくん』ーー大人の読書感想画展#5

1冊の本を読んだ後、同じ本を読んだ人はどんな風に感じるんだろう、どんな景色を思い描いたのだろう、と気になったことはありませんか?

もしも、誰かが心に描いた景色と、同じものを見られたらー。

『大人の読書感想画展』は、絵を描くお仕事の方にお好きなポプラ社の本を読んでいただき、心に浮かんだ風景を一枚の絵にしていただくマガジンです。

今回ご担当いただいたのは、こやまこいこさん。
漫画家・イラストレーターとして活動されています。

絵本『はーはのはみがき』(教育画劇)、挿絵『ルルと魔法のぼうし』(徳間書店)、紙芝居『かぐやちゃんともったいないでんき』(作・天野慶/教育画劇)などの児童書のほか、家族との毎日を漫画にした『次女ちゃん』(扶桑社)や、ぬいぐるみ屋を営む女の子の物語『もぐの夜』(パイインターナショナル)など、やさしい絵柄と世界観で人気を集めています。

『もぐの夜』(作・こやまこいこ/パイインターナショナル)
『もぐの夜』より


そんなこやまさんが読書感想画に選んだのは、『となりのせきのますだくん』(作絵・武田美穂)
昨年で30周年を迎えた、ポプラ社を代表する絵本の1冊です。

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主人公のみほちゃんは、学校へ行けない気がしています。
頭が痛い気がするし、おなかが痛い気がするし、熱がある気がするからです。

でも、全部「気がする」だけなので、学校を休みたいけど休めません。憂鬱な気持ちで歩く通学路。頭に浮かぶのは「となりのせきのますだくん」のこと。

机に線を引いて、消しゴムのカスがはみ出ただけでにらむし、給食のにんじんをこっそり残したら、おおきな声で「いけないんだー」というのです。
いじわるばかりのますだくんと、昨日ついにけんかをしてしまいました。みほちゃんが誕生日にもらった大事な鉛筆を、ますだくんが折ったからでした。

「きょう がっこうへいったら わたし ぶたれるんだ」

「やだな」の気持ちがどんどん膨らむみほちゃん。でも、ますだくんのとった行動は……。

こどもの心をリアルに描いた本作。コマ割りの画面も印象的です。何度も読み返したくなるような奥行きのある絵本ですが、こやまさんはどのような思いを抱かれたのでしょうか?

こやまさんの感想画とコメントはこちらです。
(絵をクリックすると大きく表示されます。スマホの方は画面を横にするのがオススメです)

ーこやまこいこさんの作品とコメントー

私が絵にしたのは「やだな」の気持ちが全面に出ているみほちゃんと、きっと心の中で「どうしよう?あわわわ!」と一生懸命考えているますだくんです。

まだ娘たちが小さい頃、夜寝る前は絵本の時間でした。
なんとなくですが、その日1日の出来事に合った絵本を選んで私の所に持ってきていたように思います。
 
『となりのせきのますだくん』を選んできた夜は
「やだな」の所を特に気持ちを込めて読むのでした。
 
こどもの毎日はいろんなことがおこります。楽しいこともいやなことも。
もしかしたらいやなことの方が多いかもしれません。
 
みほちゃんの気が重いまま学校へ行く場面は娘たちとも重なって胸が締め付けられます。
 
だから私はみほちゃんの「やだな」を受け止めて、
娘たちのいろんな「やだな」を想像して
時には私自身の「やだな」を吐き出すように
気持ちを込めて「やだな やだな」と声にしていました。
 
笑顔いっぱいの絵本ではないかもしれません。
それでも今日はこの絵本だなという日があったのです。
ますだくんとみほちゃんのお話と絵の可愛らしさで
不安な気持ちが少し和らいで夜を過ごすことができました。
 
そして「やだな」の気持ちにたくさん共感したあと
ふと思うのです。
娘は、私は、誰かを気づかないうちに「やだな」の気持ちにさせてしまったことがきっとあったよなぁと…。
 
そしてますだくんのことももっと知りたくなって続刊『ますだくんのランドセル』を手にとるのでした。

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みほちゃんの「やだな」が正直に書かれているからこそ、読者の子どもたちが安心して自分の「やだな」の気持ちを受け入れられるのですね。
また、ますだくんにも思いをはせるこやまさんの優しさが絵にもコメントにも溢れていて心が温かくなりました。

こやまこいこさん、本当にありがとうございました!

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