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ぽっぺのひとりごと(44)ザ・ラストショー

福岡中洲大洋劇場が3月末で78年の歴史に幕を閉じた。
詳しくは「ぽっぺのひとりごと」(37)をご覧ください。

3月は「さよなら興行」として、全22本がどれでも千円の特別価格となっていた。

どれを観るか・・・・・迷った末に、チャップリンに決めた。『黄金狂時代』『独裁者』『街の灯』、どれも数え切れないほど観ている。

『黄金狂時代』に決定。大洋劇場が1946(昭和21)年4月3日に開館したコケラ落しの記念作品だから、ラストショーにふさわしいと思ったのだ。

『黄金狂時代』は1925年製作のアメリカ映画。チャールズ・チャップリン製作・監督・脚本・音楽・主演のサイレント・ムービー。
99年も前の映画だけれど、古さを微塵も感じさせない。
これでもかというほど次々と繰り出されるギャグの連続に、観客の笑い声が絶えない。何度も観てストーリーは知っているのに、それでも笑ってしまう。

山小屋が雪の崖から落ちそうになり、金鉱採掘者のチャーリーとビッグジョンが、斜めに傾いた部屋の中で這ったり転がったりする場面は、ハラハラしながらも笑ってしまうのだ。
飢えに苦しめられた二人が、チャーリーのドタ靴を煮て食べるシーン。靴ひもをくるくるっとフォークに巻き付けたり、釘をしゃぶったり、見事な芸で悲惨さをくすくす笑いに変える。
チャーリーが鶏に見えてしまい、襲いかかるビッグジョン。ゾッとするシーンだが笑いが起きる。

金鉱を発見できず、一文無しで町の酒場に辿り着いたチャーリーが、飲んで騒ぎ、ダンスに興じている人々を見ている後ろ姿。今回の発見はこのシーン。チャーリーの後ろ姿がいじらしくて、妙に焼き付いてしまった。
無理をしてお金を工面し、大晦日のディナーを準備して、愛するジョージアを待つチャーリー。待ちくたびれて眠ってしまった彼が夢の中で見せる、ロールパンにフォークを突き刺して踊らせる場面。そのときのチャーリーの哀し気な、でも夢みるような顔。私の大好きなシーンだ。

観終わって拍手をした。たくさんの拍手が沸き起こった。
10代、20代から80代の観客で、301席のスクリーン1は満席だった。観終わっても、すぐに席を立つ人はいない。あと3日で取り壊される思い出の映画館に、それぞれの観客が別れを惜しんでいるのだ。コンサート終了後のザワザワとは違う、静かな熱気が充満していた。

ロビーには壁という壁にメッセージ用紙がびっしりと貼られていた。こんなにも愛されていたんだな。特別な劇場だったんだ。
どの用紙にも「ありがとう!」の感謝の言葉と、「再開の日を待っています」の願いが書かれていた。

男子トイレ


1階のキネマカフェは長蛇の列で諦めた。

「真実の口」さん、さようなら。

さようなら、チャーリー。

外に出ると、たくさんの人達が撮影をしていた。立ち去り難いよね・・・

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


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