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レポ:リヨン・オペラとバスティーユ・オペラに行ってきた

フランスの芸術と言われてオペラを思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。首都パリには豪華絢爛なオペラ・ガルニエ(ガルニエ宮)があり、ガストン・ルルーの小説『オペラ座の怪人』の舞台にもなりました。フランスの大きい都市には必ずオペラ座や大劇場があり、9月からのオペラ(及び舞台系術)シーズンは様々な公演が行われます。オペラシーズンにフランスに滞在するなら是非とも観に行ってほしい、と個人的には思っています。

とはいえ、日本ではオペラは身近なものではないこともあり、クラシックで格式高い印象を持っている人が多いと思います。実際、日本で規模の大きなクラシック音楽の演奏会に行くときは、相応にフォーマルな服装をすることも多いです。それゆえ本場フランスで聞くとなるとどれくらいドレスアップしたらよいのか……あの立派な建物を思うと気になりますよね。

そこで、この記事では私が実際に観劇に行ったリヨン・オペラ座とパリにあるもう一つのオペラ座、オペラ・バスティーユの様子をレポートします。
尚、オペラ・ガルニエの方は12月の中旬にバレエを観に行くので、またその時に……。

リヨン・オペラ

名前の通り、フランス南東部にあるフランス第二の都市、リヨンにあるオペラ座です。最初に設立されたのは1756年という歴史あるオペラ座で、1831年に改築され、旧劇場(今のオペラ座のドームがない状態)には1907年にリヨンに滞在していた小説家の永井荷風が通っていたことが知られています。荷風も見たであろう正面のファサードを残したまま1993年に再び改築され、現在のガラスのドームを持つオペラ座となりました。

夏にリヨンに滞在した時に撮影したオペラ座。

このオペラ座で私が観た演目はリヒャルト・ワーグナー作の「タンホイザー」です。有名な作者による有名な作品なので、名前を聞いた事のある人は多いと思います。正式名称は「タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦」で、初演は1845年、演奏時間は3時間10分という大作です。途中で2度休憩(幕間)を挟むので、観終わるまで4時間程度かかります。今回はオペラ座の様子についてのレポートなので、オペラの内容については省きます。

さて、リヨン・オペラの中の様子ですが、歴史ある外観とは反対に非常に現代的です。黒と赤、メタリックを基調としている内装で、階段は金属製でした。客席も、私が座ったバルコニーの席は黒革張りで、幕間中にちらりと他階の席も見ましたが、似たような黒革張りのソファーでした。恐らく古い内装が残っているのは、幕間の際に立ち寄ることのできるバーの部分くらいではないかと思います。新しい内装だけあってトイレが非常にきれいでした。

オペラ・ガルニエのような絢爛な広間。
多分ここだけ昔のまま残ってる。

ワーグナーが現在でいうドイツの出身なので「タンホイザー」は元々ドイツ語で書かれており、リヨン・オペラではドイツ語のままでの公演でした(フランス語訳とバレエを挿入したパリ版も存在します)。よって字幕が出るのですが、この演目において字幕はフランス語のみでした。字幕は舞台上部と客席から見て左側の大型モニターに表示されます。私が座った3階バルコニー席の最奥部(36€でした)からは舞台上部の大きな字幕はとても見にくかったので、絶対に字幕が見たい人はバルコニー席なら前の席を取ったほうが良いと思います、ちょっと値段が高かった気がしますが。

さてさて、肝心の観客の服装ですが、普段着の人やカジュアルな人が大半でした。ジーパンにTシャツの人がいたり、柄物のズボンを履いていたり……女性もワンピースやスカートではなくズボンの人が多かったです。仮にワンピースを着ていたとしても派手な柄物だったり。髪型も自由でした。男女とも足元がスニーカーの人もある程度いました。千秋楽の公演だったので熱心なファンもいただろうと思うのですが、正装らしい正装をしている人は見かけませんでした。

ちなみにこの日の私の服装は髪は耳の位置でお団子にして、白シャツに濃緑のロングのプリーツスカート、黒のハイソックスに黒のスニーカーです。旅行中、かつ、そもそもパンプスを持っていない人間なので、服はともかく靴に関しては内心ひやひやしていましたが、他にもスニーカーの人が結構いたので安心しました。一緒に観劇した友達は髪を下ろしたまま、黒のトップスに白地に花柄のロングスカート、靴下に白いスニーカーでした。

オペラ・バスティーユ

オペラ・バスティーユは1989年に完成した新しいオペラ座で、バスティーユ広場のすぐ隣にあります。現代建築なので外観もガラス張りで非常にモダンです。設備としては世界最大の9面舞台が特徴です。

このオペラ座で私が見たのはリヒャルト・シュトラウス作「サロメ」です。こちらも有名な作家による有名な作品、かつ、近年作家の原田マハが戯曲の挿絵を描いたオーブリー・ビアズリーを取り上げて小説を書いたので、知っている人は多いのではないでしょうか。初演は1905年と比較的最近です。一幕ものなので上演時間は短く、1時間45分程度です。

尚、先ほど戯曲の挿絵と書きましたが、オペラの「サロメ」の台本は1893年に出版されたオスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」をドイツ語翻訳したものなので、台本のオリジナルはフランス語だったりします。オスカー・ワイルドはイギリス人ですがフランス語が堪能で、当時のイギリスでは「サロメ」のような官能的で背徳性のある作品は発表できないと判断し、パリでこの戯曲を書き上げました。実際、1931年までイギリスでは上演が禁止されていました。

さて、バスティーユ・オペラですが、外観の通り内観も非常に現代的で、白と黒を基調としています。階段を上った先には不思議なモニュメントもあり、写真撮影スポットなのか、何人か通りすがりに写真を撮っていました。こちらのトイレもすごくきれいでしたが、手洗い場の水の出し方が不思議で、右足で床にあるボタンを踏んで水を出します。

廊下の様子。
不思議なモニュメント。

早めに会場に着いたこともあってプログラムを買うことが出来ました。値段は15€で、オペラのスクリプトの他、コラムやポートフォリオが掲載されています。

サロメのプログラム。
演目の中身に反して表紙の色はシックなグレー。
赤い表紙はトスカに使われていました。

前述のように台本のオリジナルはフランス語ですが、ドイツ語での上演なので字幕が表示されます。今回はフランス語と英語での表示で、舞台上部に表示されます。このオペラ座では2階バルコニー席(36€でした)で見たのですが、今回の公演では上の階の客席が被らなかったので字幕はしっかり見えました。

観客の服装ですが、こちらもカジュアルな出で立ちの人が大半でした。年輩の方が多かったのですがしっかり正装している人は見かけず、ダウンコートやモッズコートを着ている人やコーデュロイのズボンを履いている人もいました。女性もスカートやワンピース姿はあまり見かけませんでした。足元もヒールのないペタンコ靴が大半でした。髪型もリヨン同様、フォーマルなまとめ髪にしている人は多くなかったです。髪の短いおばあちゃんが多かったからかもしれませんが……。

この日は一人で観劇したのですが、私の服装は前回同様髪を耳の位置でお団子にして、フード付きのカーキ色のコートに、白のハイネックに黒のプルオーバーを重ね着して、前回も履いた濃緑のロングのプリーツスカート、足元は黒タイツに黒のスニーカーでした。

リヨンで観劇した日とは打って変わって寒くなったので、シャツではなくハイネックのフリースを着て、カジュアルすぎるかなと思いつつコートを着ましたが、ハイネックも、似たようなコートを着ている人もちらほらいたので、特に浮いてなかったと思います。むしろ私以外20代前半っぽい人がおらず、年齢的に若すぎて浮いていた気がします……。

まとめ

リヨン・オペラもオペラ・バスティーユもフランスの主要なオペラ座ですが非常にモダンで、観劇したのも有名な作品(しかも一つは千秋楽)でしたが、観客の服装は割とカジュアルでした。日本人が思っているより、フランスではオペラ鑑賞はカジュアルに捉えられているようです。

私はなけなしのワードローブから出来るだけフォーマルなものを選んで着ましたが、上衣に関しては白シャツでなくても大丈夫そうです。靴は目立たない色であれば、スニーカーだからといって浮くことはありませんが、パンプスやローファー、革靴を履く人の方が多いので、もし持っているならそれらの靴を履いたほうが良いと思います。女性は無理してまでヒールは履かなくて良さそうです。上階の席まで階段を登るのはなかなか大変なので……1階の席でないなら、ヒールの低い靴、又はペタンコ靴の方が安全だと思います。

とはいえ、私はまだ本陣(?)のオペラ・ガルニエには観に行っていません。クリスマスシーズンになってくるので、他の観客がどのような服装をしてくるかわかりませんが……服はともかく私は他の靴を持ってないのでスニーカーで乗り切れることを祈ります。

追伸 オペラ・ガルニエでバレエ鑑賞してきた

オペラ・ガルニエでバレエの公演を観てきましたが、観客の服装はオペラ・バスティーユと同様にカジュアルな人が多く、防寒着はダウンコート、ジーパンにセーター、足元はフラットシューズやスニーカーといった人が多数見られました。

やはりフランスでは舞台芸術の鑑賞はかなりカジュアルに捉えられており、服装はさほど気にしなくても良さそうです。留学生のなんちゃってフォーマル服でも十分周りに馴染みますので、気軽にオペラやバレエの鑑賞に挑戦してみてください!

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