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プロレスラーへの道②

〜メキシコ初日〜
あっという間にその朝はやって来た。
いよいよメキシコに出発だ。

初めての海外だったので、まずはパスポートを取得。
長期滞在用の大きなスーツケースと、『地球の歩き方』、『旅の指さし会話帳』、スペイン語の辞書はマストで購入。
メキシコでのルチャ・リブレ修行経験のある先輩に聞いて、あった方がいいと言われるものは一通りそろえた。
航空券を買い、色んなものを揃えていたらお金はあっという間に30万円位になってしまった。
親には申し訳ないが、この時点でスネをかじる気は満々だった。

成田までは知人に車で送ってもらい、ANAのロス行きに乗り込む。
降りる間際に流れた葉加瀬太郎の『Another Sky』に早くも泣きそうになったことを覚えている。


ロスからはアエロメヒコ航空でメキシコシティへ。
ここからが海外武者修行の本番だ。
日本人は他に誰もいないどころか、日本語は一切通じない。
ここに来て初めて、スペイン語を『ウノ、ドス、トレス、クワトロ(1、2、3、4)』しか覚えてこなかったことを後悔する。

何とか『地球の歩き方』を参考に出入国カードを書き、無事メキシコに初入国。
いよいよ、だ。

空港には、メキシコと日本を行き来している先輩レスラーMさんが迎えに来てくれた。
それまでほぼ面識はなかったのだが、所属団体の先輩の紹介でMさんがメキシコ滞在している時は面倒を見てくれるという。
Mさんには私の一年の滞在期間中、色々な面で本当に助けて頂いた。

話は戻って、メキシコシティに到着したのは金曜の夕方。
この日はCMLLが、アレナメヒコで大会を開催しているとの事だ。
(CMLLはAAAと並ぶルチャリブレにおけるメキシコ二大メジャー団体であり、メキシコシティ内にアレナメヒコという二万人規模の常設会場を持っている。)

メキシコ人が作るなんちゃって中華料理屋で腹ごしらえしてから、アレナメヒコに連れて行ってもらえることになった。
当時はミスティコとペロ・アグアヨ・ジュニアの抗争が激化し、CMLL人気が沸騰。
毎週金曜日に行われるアレナメヒコ定期戦は常に満員だった。
会場の後ろの方では、数週間先にメキシコ入りし既にデビューしていた他団体の若手Aも試合を観ていたので合流。
初めて見る本場のルチャ・リブレの熱気に圧倒され、滞在する日本人宿へチェックイン。

あまりにも劇的な日常の変化に心躍らせずにはいられなくなるようなメキシコ初日となった。
〜続く〜

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