記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』が傑作だった

6/25から劇場公開された『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』が面白かったので、感想です。

ネタバレ注意!


前作を軽く紹介

今回公開されたのは二作目なので、まずは2018年に公開された一作目について。

ピーターラビットってなんとなくしか知らなかったので、公開前はほのぼの可愛い動物映画だと思っていました。ですのでさほど興味も惹かれませんでしたが、公開されると一部界隈で話題に。話を聞くとどうやら様子がおかしい。

とはいえ、私は劇場公開当時は観に行けなかったので、後日配信されてから観ました。

いやー、これは面白かったですね。主役のウサギ、ピーターはグッズや絵本のかわいらしさからは想像できぬ生意気さで、全然可愛くない。むしろ憎たらしい。そして映画で描かれるのは野生動物と人間のとの攻防戦。それも生易しいものではなく、一番の盛り上がりどころでは、畑でダイナマイトを投げ合う始末。映像もナパームが景気よく火柱をいくつも上げる。ピーターたちの巣穴がダイナマイトで爆破され、倒れた木でヒロインの画家の女性のアトリエが破壊されるという聞いただけだと悲惨なシーンは爆笑必至です。

他にも隅々の細かい会話にもイギリスらしい皮肉が効いたジョークが仕込んであるなど、コメディ映画としてとても面白い映画で大好きでした。

そんな予想外に過激な映画だったピーターラビットの第二弾が公開されると聞き(一作目は怒られなかったのだろうか)、楽しみに観に行ってきました。


ピーターサイドのストーリー

ここからは本題、『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』の感想。

前作でマグレガーさんと和解したピーターは、マグレガーさんの夫妻とそれなりに仲良く、平和に暮らしていました。しかし、そんな穏やかな生活に生まれながらのワルのピーターは少し退屈なご様子。さらに、マグレガーさんが大事に育てているトマトを他の動物の仲間から守ってあげたのに、当のマグレガーさんにはまた悪戯したと誤解されるなど、ちょこちょこ不満が溜まっていきます。誰も僕のことを認めてくれないのだ……と反抗期の子どもみたいなことを言い出します。

そんな中、マグレガーさんの新妻ビアがピーターたちをモデルに描いた絵本が大手出版社の目に止まり、打ち合わせをするために都会ロンドンへ。絵本の内容の打ち合わせをする中で、ピーターは"トラブルメーカー""ワル"とキャラ付けされてしまったことがきっかけで機嫌を損ね、プチ家出をしました。

そして出会ったのが、都会でたくましく生きるおじさんウサギのバーナバス。なんと(パイにされて)死んだピーターの父の旧友だという彼は、ピーターを人間から食料を奪う作戦に誘います。彼の悪党仲間の猫の兄妹やネズミの爺さんらと共に、作戦を決行。ピーターの天性の対人間悪戯スキルも発揮し、見事に成功します。ここでピーターは自分のワルの部分を認めてくれるバーナバスにまるで父のような絆を感じ、すっかり懐いてしまいました。

あれですね。田舎の不良が都会で本物の悪いチンピラと知り合って、認められたと思って調子乗っちゃうやつ。


マグレガー夫妻サイドのストーリー

一方マグレガーさんサイドのお話もピーターたちとは別に進んでいきます。

ビアの絵本の出版の話は、出版社の敏腕編集者の手によって、一般受けしそうな派手な内容にどんどん改変されていきそうな方向に。ビアは自分が描くほのぼのしたピーターたちの日常を提案された内容に変えてしまってよいものか心が揺れ動きます。現実世界でもよくありそうなことですね。

マグレガーさんはイケイケの敏腕編集者への対抗意識もあり、絵本はもともとの路線のままでよいと考えますが、それがきっかけでビアと喧嘩に。

ピーターサイドとはあまり交わらないままストーリーが進んでいくなとここまでで思っていましたが、クライマックスでまさかあんなことになろうとは……。


そして皮肉盛り盛りのクライマックスへ

ピーターは、従兄弟のベンジャミンや三人の妹たち、そして森の仲間たちを連れて再びロンドンへ。バーナバスが提案する、市場からドライフルーツを奪う作戦に加わることになります。(完全にドラッグを奪いに行くギャングかなにかなのですが……。)

まるでミッションインポッシブルやオーシャーンズシリーズのような作戦を展開し、見事にドライフルーツを奪取! しかし、ピーター以外の仲間たちはバーナバスに置き去りにされ、ペットショップ送りにされてしまいます。そう、実はバーナバスがピーターの父親の旧友というのは真っ赤な嘘。絵本で知ったピーターに目を付け、最初から利用するつもりだったのです。

ピーターは、ドライフルーツ奪取戦でトマトを台無しにしてしまったマグレガーさんに謝り、再び和解。家族と仲間たちを救いに動き出します。

そんな中、ビアはピーターの映画化シナリオ会議に。ラストは家族みんな平和に暮らしましたで終わらせたいと提案するも、それでは地味だと一蹴されます。そして提案されたのは、動物たちが誘拐され、彼らを救うために海へ雪山へ空への大スペクタクルのド派手なクライマックスでした。ビアはついに我慢ならず、好き勝手な提案をする出版社サイドへ反抗。映画化は断り、マグレガーさんたちと共に、ピーターたちの救出に向かうのでした。

きっと、賢明な視聴者はここで「むむむ……?」と思ったでしょう。

そして、マグレガーさん夫妻とピーターは仲間たちを助けるために、水上を船で爆走、雪山をスキーで滑走、空からパラシュートでダイビング!と世界を派手に飛び回りながら大スペクタクルのド派手な救出劇を繰り広げます。全員を助け出した後はバーナバス一味にも借りをしっかり返し、ドライフルーツも返却、めでたしめでたし……と物語は幕を閉じました。

ここまで来たらもうお判りでしょう。

クライマックスの展開は、ビアが提案されてすっぱり否定した、劇中での映画ピーターラビットの展開そのままなのです。

映画ピーターラビットは、非常に面白くて予想外の層にヒットもしましたが、「あんなほのぼ可愛い絵本をこんな悪ノリ映画にしてしまっていいのか?」という疑問は皆さん少しは思ったでしょう。このピーターラビット2では、その疑問に劇中で答えたのだと思います。ビアはピーターラビットの原作者ビアトリクス・ポターをモデルにしたキャラクターと言われています。そんな彼女が否定した内容をやってしまったこの映画。つまり、その疑問に対しての答えは「やっぱりダメじゃない?」って。なんという皮肉オチ。このシナリオ考えた人やべえよ……。


小ネタもブラック

他に好きなシーンは、ピーターの妹三姉妹の一人、カトンテールが汽車の中でゼリービーンズ的なお菓子をたらふく食べてしまってハイテンションになるシーン。完全にラリってやがる。ピーターも、「あの味を知ってしまったか。あれを食いすぎるのはいけない……。」とか言ってて、完全にヤバい薬扱い。

そんな小ネタにもいちいち皮肉なギャグが盛り込んであるこの映画。

ナパームのような前作ほどの派手さは少し控えめにはなっていましたが、脚本がよりキレッキレになっている『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』。劇場で涙が出るほど笑いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?