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『シャン・チー/テン・リングスの伝説』感想

早速観てきました、シャン・チー。
(早速とは言いましたが、観てから記事書くまでちょっとタイムラグがありして、そんなに早速ではなくなりましたね…)

MCUフェーズ4に入ってドラマシリーズや映画『ブラック・ウィドウ』などが発表されてきましたが、既存キャラクターの掘り下げ作品が続いていたので、全くの新ヒーローの登場はかなり久々です。個人タイトルとしては『キャプテン・マーベル』以来ですかね。

しかも主役としては初のアジア系でカンフー使いとこれまでにいなかった新鮮なヒーロー。まさにフェーズ4の真のスタートとも言えそうなこの映画。

さて、ここからはネタバレありで書いていきます。


カンフーアクションからのアジアンファンタジー

予告編からわかるのは、中華風の世界観やキャラクター達、そしてカンフーを使った大胆な格闘シーン。

簡単なあらすじを説明すると、”テン・リングス”という10の腕輪の力で千年以上生き、その力で同名の巨大な闇組織を仕切るウェンウー(演:トニー・レオン)。彼に幼いころから最強の戦士として育てられた息子で主人公のシャン・チー(演:シム・リウ)は、父の元をなんらかの事情で離れ、ホテルマンとして平凡な生活を送っていました。そんな彼に、ある日父からの刺客が迫り、再び戦いに投じていくというストーリー。

一見平凡な主人公が、強大で悪の親分でもある父親に立ち向かっていくというのは、王道少年漫画にもありそうな設定ですね。

映画の前半は、予告編の印象通り、マーベル風のカンフー映画とでもいった具合で、バスの中やビルの足場などを舞台に、スピーディな格闘アクションで魅せてくれます。これまでのMCUでも『キャプテン・アメリカ』シリーズなどを中心に、マーシャルアーツを取り入れたアクションは描かれていましたが、ここまでまさに”格闘技”をメインにした主人公はやはり初めてのように思えます。CGを派手に使ったバトルももちろん迫力があって好きですが、人間と人間の肉体がぶつかり合う様は、緊張感もあって最高でしたね。

恥ずかしながら私は映画史にあまり詳しくないので後から知ったのですが、演出に関わっているスタッフやキャスティングにも往年のカンフー映画リスペクトがいろいろ詰まっているそうです。

そして後半、大きく予想を裏切ってきました。

シャーリーン(演:メンガー・チャン)とともに、父の元に戻ったシャン・チーは、父が死んだ母イン・リー(演:ファラ・チャン)の声に呼ばれ、母の故郷である神秘の村ター・ローへ攻め込もうとしていることを知ります。意外な再登場を見せた偽マンダリンことトレヴァー・スラッタリー(演:ベン・キングズレー)と謎の生物モリスの導きもあり、父親より先にター・ローへたどり着いたシャン・チーとシャーリーン。ここから映画の雰囲気ががらっと変わりますね。ター・ローは先述した6本足に翼、顔のないおかしな姿の生物モリスや、麒麟、九尾の狐のような幻の生き物たちが生息する不可思議な世界でした。前半では比較的リアルな現代を舞台にしたアクションものだったのが、一気にアジアンファンタジー的な世界観に。(ちなみにモリスも”帝江”という中国の幻の生物が元ネタのようです)

伯母であるイン・ナン(演:ミシェル・ヨー)と出会い、村の人々に受け入れられたシャン・チーは、彼らと共に父ウェンウーが率いるテン・リングスの軍隊と決戦。闇の生物が封印されている扉をこじ開けようとするウェンウーと対決しました。

観る前まではテン・リングスという腕輪で戦うということにあまりピンと来ていませんでしたが、腕から発射する勢いで高く跳んだり、ガンダムのファンネルのように周りに展開しつつ、敵にぶつけて攻撃したり、単純に殴る力を強めたりと、かなりバラエティ豊かな戦闘スタイルだったのが面白かったですね。ウェンウーとの戦いの中でシャン・チーもその力を操ることに成功するのですが、父と子でリングに纏うオーラの色が違ったのが気になるところです(単純に使い手によるのか?、シャン・チーが特別なのか?)。そして最終的には神龍のような東洋風の竜も登場し、シャン・チーとシャーリーンがその背に乗って闇の魔竜を倒すというかなりファンタジックなバトルになり、最後の戦いは幕を閉じました。

前半と後半で別の映画を見ているような世界観の変わりっぷりですが、MCUの一作ということもあり、このような大胆な世界の広がり方でもなんとなく納得できるというのが強みですね。なんのシリーズでもないカンフー映画を見に行ってこれだとさすがに面喰いますが、そこは魔術や神話、スペースオペラなどいろんなジャンルの世界を広げてきたMCUならではの説得力でした。一粒で二度も三度も美味しい映画です。

自分は前半のカンフーアクションに燃えていたので、終盤はそれがちょっと控えめになって、ファンタジーバトルになってしまったのは少し残念だったのも正直あります。でも、エンドゲームの大規模超人超バトルを見せられてから、新しいヒーローがただのカンフー使い?ってなるとちょっと不安にもなりますが、次のヒーロー集合時にテン・リングスを付けて竜に乗ったシャン・チーが駆けつけてきたら正直めっちゃ燃えますよね。

まあでも、最後の一撃は拳で決めて欲しかったかな。


印象的なキャラクターたち

ほぼ新キャラずくしの本作ですが、これまでのMCUのメンバーに負けず劣らず魅力的なキャラが印象的でした。

特に存在感があったのは、やはり名優トニー・レオン演じるシャン・チーの父ウェンウーですね。前作『ブラック・ウィドウ』もでしたが、本作も”家族”が大きなテーマになっていました。富と名声すべてを手に入れた男が、たった一人の女性に恋をして家族に恵まれ、平凡な幸せを手に入れたのもつかの間、最愛の妻を亡くし、子供たちも去って行ってしまった。そんな強くも悲しい男の姿がトニー・レオンの熱演も相まってこの映画の大きな核になっていたと感じます。MCUには良くも悪くも印象的な父親キャラが多いですが、威厳や悲哀などの深みをここまで感じるキャラは初めてですね。

また、シャン・チーの親友ケイティ(演:オークワフィナ)も素晴らしいキャラでした。ちょっとうざいコメディリリーフ的なキャラでしたが、MCUの主人公としては珍しい良い人キャラのシャン・チーとの組み合わせがとてもナイス。作中の良いスパイスになっていました。深夜まで飲んでカラオケコースのシーンとか、本当に心からの親友なんだなって感じですね。自分は吹き替えで観たのですが、ケイティの日本語吹き替え役のニケライ・ファラナーゼもビックリするほどぴったりでした。ナイスキャスティング。


これまでとこれからのMCUとのつながり

やはりMCU作品といえばこれまで、これからのシリーズ作品とのつながりが気になるところ。

まずは副題にもなっている”テン・リングス”。『アイアンマン』シリーズに登場したテロ組織です。まあ、トニーが対決したのは勝手に名乗っていた偽の組織だったのですが。そこで、今回満を持して登場したのがウェンウーが率いていた本物の”テン・リングス”。直接的なつながりは薄いものの、インフィニティサーガが終わって新章突入という本作で、MCU最初の作品で主人公がヒーローになったきっかけになった組織つながりというのは、何か因果を感じさせます。

そしてビックリ、まさかの再登場をしたのが、前述もしました『アイアンマン3』で偽のテン・リングスのボスであるマンダリンを演じていたトレヴァー。シリアスなシーンでモリスとのやり取りはほほえましかったですね。こういうまさかの脇役を忘れたころに使うのMCUが大好き。『ワンダヴィジョン』のダーシーやウー捜査官も良かったですね。まさにユニバースものの醍醐味です。

他に再登場したキャラといえば、予告編でもほのめかされていたウォン(演:ベネディクト・ウォン)とアボミネーション(演:ティム・ロス?)。シャーリーンが経営している地下闘技場で八百長試合?みたいなことをしていました。ウォンはともかく、アボミネーションは『インンクレディブル・ハルク』のヴィランとして登場して以来。あの後はどうやらどこかに収監されているようですが、今回はどんな経緯で登場したのかは謎なままでした。ウォンがポータルを開いた先がどこかの基地やラフト刑務所っぽい?と言われていますね。このあたりの裏事情はどこかで明かされるのでしょうか。

ウォンはラストシーンとポストクレジット映像にも登場。戦いを終えたシャン・チーとケイティを勧誘し、テン・リングスの調査を行っていました。フューリーが宇宙に行ってしまっているようなので、新体制のアベンジャーズの裏方作業担当みたいになってきましたね。ウォンさん好きなキャラなので出番が多いのは嬉しいのですが、ただでさえ面倒なポジションにいるのにさらに苦労しそう…。最後にシャン・チーたちとノリノリでカラオケしているのには笑いましたが。

さらにテン・リングスを分析しているシーンでは、ハルクことブルース・バナー(演:マーク・ラファロ)とキャプテン・マーベルことキャロル・ダンバース(演:ブリー・ラーソン)もどこかから通信する形で登場していました。いろいろな経験を重ねて知識が豊富な彼らでもテン・リングスは謎多き存在のようでしたね。シャン・チーに使い手が移ったことがきっかけか、何かの信号を発しているとのこと。今後のMCUに関わる重要なアイテムになることは間違いなさそうです。すでにロキで登場した”征服者カーン”もいますが、シリーズの縦軸に関連するようなエピソードになっていくのでしょうか。やることが多い…! 他に気になった点は、『エンドゲーム』でハルクと融合したような姿になっていたバナー博士が元の人間態に戻っていたこと。この辺もどこかで事情が語られるとは思うので、楽しみですね。前述のアボミネーションも含めて、やはりハルクにかかわりがあるドラマ『シーハルク』あたりが可能性高いですかね。

もちろん、本作の主人公シャン・チーも、今後アベンジャーズの一員として登場するでしょう。MCUのヒーローたちはトニー・スタークを筆頭にかなり我が強い連中が多かったですが、シャン・チーはこれまでだとサムやローディなどサイドキックに多かったような、どちらかというと平凡ないい人タイプですね。『ファルコン&ウィンターソルジャー』でサムがキャップを引き継いだこともあり、新生アベンジャーズはまた色が違ったメンバーになりそうです(ストレンジ先生とかまだまだ曲者は多いですが…)。普通のホテルマンとして生きていたシャン・チーが世界を護るヒーローの一員になっていくというのは、まだまだ無名ながらも主演に抜擢されたシム・リウさんの活躍と合わせ、かなり盛り上がる展開ですね。


(MCUには同じカンフー使いでアジアンな竜とも関連がある鉄の拳(アイアンフィスト)の男もいるので↓、どうにか今後関わってくれませんかねー)


最後まで読んでいただきありがとうございました。それでは、次回は『ホワット・イフ...?』の感想でも。

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