見出し画像

ポートあとがき:「解散前放談」

お久しぶりです。文芸サークルポートの伊奈と申します。
書いてて、この肩書も今回までかとちょっと思いました。"ex.文芸サークルポート"とか名前の後につけようかな。
 この度、文芸サークルポートは解散となります。と言っても私は、引き続き「屋根裏の筆猫」というサークルで活動していきます。文芸サークルポートの初期メンバーで、新しくサークルをしていく運びとなりました。筆猫、発案者はリーダーのサカキなんですが、かなり気に入ったサークル名です。
 これを一つのきっかけとして、今後もいい作品をたくさん書けますよういっそう精進してまいります。というか今めちゃめちゃ長編書いてます。私生活的には書きづらい時期なのですが、いつか世の中に出したいと思ってますので、首を長くして待っていてください!
 さてここで、文芸サークル時ポート時代の作品の簡単な作品解説でもしていきたいと思います。いやすいません。著者が自作解説をするなんて! と思う方もいると思いますが、故内田康夫先生など堂々と巻末に自作解説を載せる方もいますし、私は割と自作解説好きなんですよね。もちろんネタはあまり割らないようにしますので、お付き合いください。気になった作品がありましたら、今回の文フリで是非ゲットしてください! もうすでに買ってるよ! という方は、家で 読み返してみてください。

・Stage―海― 収録「私は海に抱かれていたい」
 早速文フリでゲットできない作品から紹介していく羽目になりました。すみません、こちらの作品集は完売しております……。ご要望がありましたら、どっかで掲載するかもしれません……?
 タイトルは坂口安吾の「私は海を抱きしめてゐたい」からいただきました。安吾の方はちょっと難しい短編なんですが、最後の情景がとっても綺麗でお気に入りです。ちなみにこの作品から発展した「私は海に溺れていたい」という中編を大学で書いています。
 海と女性を関連づけた作品で、なんというかこの時点でかなり作品の方向性ができているな……、と思います。部室で青色の好きな話していると、いつの間にか海の中にいる――という謎ファンタジー感も好きです。それから数年後、海が枯れ果てた後の話もいつかどこかで出したいですね。

・Scene―罪― 収録「アンチ・ファミリー」
 苦しんで書きました。いやいつも苦しんでいるんですが、今回は輪にかけて辛かった。
 大学に行かなくなってしまった兄と、それを責める父、泣き崩れる母、そして荒んだ家庭環境を眺める主人公の弟、というなんとも重苦しい短編です。
 機能不全家族と非行というのは割と一面的に捉えられることが多いけど、その実情をつぶさに書くことが小説の一つの役割だなと思って書きました。あらゆる作品が「勧善懲悪」とか「貴種流離譚」、「恋愛モノ」「転生モノ」エトセトラで分類されていて、それぞれチープに捉えられていると感じるのですが、奥底の実状のようなものをどうにかして汲み取れないかなと思っていました。でも苦しかった……。

・Scene―透明― 収録「ビー玉と秘密基地」
 小学四年生の夏に失踪してしまった友人、ヤッちゃんと秘密基地を巡る短編です。
 なぜ失踪したのか、そして埋めたタイムカプセルには何が入っているか――といった、ちょっとした謎めきと子ども時代のキラキラを詰め込めて大変楽しかったです。ちなみに原稿が遅すぎて、隣にメンバーを待たせた状態で執筆したのを覚えてます。ごめん。
 登場するヤッちゃん、才女の今井さんは小学校時代の同級生を勝手にモデルにしました。ありがとう。私はあまりキャラクターに思い入れを作らないタイプなのですが、読み返してみても良いキャラクターだと思います。
 秘密基地って良いですよね。ぜひ秘密基地を作っていた頃の童心を思い出して読んでください。

・Sailing day 収録「おやすみ、ネオンテトラ」
 夏休み、死んでしまったネオンテトラを埋葬するために海へと出かける少女二人の短編。
 個人的にはかなりお気に入りで、好きなものをこれでもか! と詰め込んでいます。何人かからも感想を頂けて、これを代表本に掲載できたのは良かったです。
 テーマは十七歳の変化と埋葬、という極端なものをぶち込みました。書いた当時から強度のある構成を書けたなと思いましたし、ある意味自分の強みを出せた作品だと自負してます。ただ最近はそういった堅い構造物をあえて壊したり、わざと混沌とさせることも目指したいです。
 ちなみに作中には書いていませんが、二人が乗った電車のモデルは京急線の三浦海岸駅方面という設定があります。夏に乗るとノスタルジーに浸れるので(特に上大岡駅以降)、ぜひ文庫本片手に乗ってください。

・記憶 Scene by MEMORY 収録「卒業アルバム」
 なぜか恋愛小説が書きたくて、少女漫画みたいな「先生を好きになってしまう女生徒」で書きました。大変満足です。
 作中で引用されている夏目漱石の「こゝろ」ですが、とても好きな作品ですし、この短編の骨子にもなってます。なのでお手元に「こゝろ」がある人は、主人公と先生が上野を散策するくだりも一緒に読んでみてください! 青空文庫もあるよ! ところで先生の遺書長すぎて毎回びっくりするよね。
 個人的に書き出しの「恋をしてから、私は少し頭が悪くなった気がする」など、気に入ったパンチラインがたくさん書けて楽しかったです。なんか本当に“恋してる文章”になったな気がします。あと全体構成も良い感じ。
 ちなみに登場する後藤先生のモデル(勝手に参考にしてるだけ)は「荒ぶる季節の乙女どもよ。」という漫画のミロ先生です。元文学青年っぽい、前髪長い系アンニュイ先生が好きなので。

・二人の食卓で 収録「噛み癖」
 もう最近、自分の性癖をさらすことに躊躇がないですね……。大学生カップルの恋愛&官能&鬱? みたいな小説です。濡れ場がたくさんあるので、苦手な人はご注意ください。言い訳ですが濡れ場と言っても淡白ですし、私は淡白な官能が好きなので……どうでもいいな。
 濡れ場を書きたいという、傍から見たらヤバい動機で書きましたが、一応読み物としても耐えうる内容だと思います(そうだと思いたい)。好きな子と付き合ってみたら、彼女には噛み癖があって、次第にその子との向き合い方に葛藤していく――みたいな感じです。
 テーマは食と性。関連しやすいテーマで書けて楽しかったです。ちなみに裏テーマは暴力。割とセンシティブな内容がドバドバ出てくるのですが、好事家の皆様のお口に合えば幸いです。

 こんな感じです。思ったより長くなりました。無料配布やら個人誌もいつかどっかで語りたいです。
 今後も新サークルでチマチマと書いていくつもりですし、今書いている長編や、過去書いた作品達もどこかでお披露目できたらと思います。ただ申し訳ないのですが、私生活でちょっと忙しく、なかなか余裕がないので、気長に待っててください。
 あと他の作家さんの作品も読みたいのになかなか進まない! でもみんな愛してるからね! 心身健康にお過ごしください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?