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ハズレもまた楽しい

宮崎県に移り住んで、山間部で渓流釣りを楽しみ始めて約20年。
渓谷で釣りを始めて、滝をよじ登る遊びがあると知り沢登り・クライミングなどよじ登る遊びと釣りを楽しみながら、いつしか山を歩いて楽しむようになり、地域の知らない美しさを大切にしたいと思い、今ではアウトドアの店を持つように…

この20年弱の間で最も変わったのはスマートフォンの登場であって、飛躍的に便利になりました。

スマートフォンの恩恵

スマートフォンの普及で様々な機能が当然のように使えるようになり、様々な恩恵を受けるようになりました。

現在位置の特定

スマートフォンが世に出る前は、山の中を歩く時は地図とコンパスと高度計が頼り。今では考えられないほどアナログな手法ですが、地図が読めないことは命取りなので、必死に地図の読み方を覚えて山の中をウロウロ。

地形図(地理院地図より)

あまりにマニアックな場所ばかり出かけるので、さすがに地図とコンパスだけでは危ないなと当時はGPSを購入しましたが、GPS機器だけで10万円以上したもので、今も以前も金のかかる遊びであることには変わりません…

今ではスマートフォンを用いて、手軽に現在位置や歩行距離、さらには消費カロリーまで計算される訳で、これにより道に迷わず様々な場所に出かけられるというのは、事故の防止にも役立ちます。

常に誰かと繋がる

仕事柄お客様と自然の中に出かける機会が多いのですが、最近では自然の中に居ても移動の道中でも、多くのお客様はSNSをチェックされていたり、投稿をされていたりと、常に何かを探しています。

僕はどちらかと言えば、そうしたものから乖離されている時間が好きで、遊んでいる際は携帯を切っていることがほとんどで、記念撮影か現在位置の確認以外で電話を出すことがないのですが、多くのお客様はショート動画やInstagramのストーリをせっせと投稿し、自然の中に居ながらも、自然の中に居ない誰かと繋がっています。

そんな光景をいつも不思議な気持ちで見てしまうのは、もうジジイなのかと感じてしまうほど、常にスマートフォンを開いて何やら撮影。
当然ながら事故が起きてしまった場合などに、電波が届くということは安全面でとても大きなメリットがありますが、電波を含めた人工物が無ければないほどに嬉しくなる僕は、少々不思議な感情を抱きながらお客様を見ています…

リアルタイムな情報検索

常に誰かが、どこかで、何かの投稿を行っているため「昨日のあの山の状況はどうだったんだろう」と思えば、その情報を調べることも容易です。
そのため、特定の花が見たいと思えば、確実に咲いている時期や場所を選んで出かけることが可能で、さらに言えば花の咲き具合がイマイチであれば「行かない」という選択を行うことも可能です。

ミヤマキリシマの咲く山の斜面

アタリ確定の遊び

スマートフォンが普及して色々な情報をリアルタイムにチェックできることで、開花期間の短い山の花もアタリの時期や場所を選んで、かつ迷うことなく出かけられるようになりました。

スマートフォン登場以前はどうだったかと言えば、大抵の場合がガイドブックや誰かに聞いて、もしくは誰かのブログを一生懸命にチェックして、今年の情報が無ければ過去の情報から目星をつけて出かけるという、ハズレ率の高いお出かけであった訳です。

そのため、今年の開花状況がタイミングが合わなければ「また来年来ればいいか」と、何とも気長で効率の悪いお出かけをする訳です。
さらには僕はブログをずっと調べることも面倒だったため、大抵の場合がガイドブックと知人の情報を頼りに勘で出かけていくのです。
まさに山勘というものです…

僕はこの"勘頼りな遊び"が、自然遊びの中では欠かせない要素で、未だに山の情報アプリを使うことも無ければ、SNSで山の情報もチェックせずに山へのお出かけを楽しみます。

そのため、花の開花情報や、最新の情報というのは、お客様の方が詳しい場合がほとんど…

ハズレの楽しみ

仮に「花を見に出かけよう」と思ったなら、もちろん驚くほど綺麗な花に巡り会いたいのは当然で、ハズレようなんて思って出かける訳ではありません。
それ故に、その他諸々の情報を通い詰めたり、ベテランの方々に聞いて覚えて行く訳で、それが正しいかはさておき「冬が寒いと花が綺麗だ」とか「⚪︎⚪︎が咲けば、そろそろあの花が咲く」なんて季節の順序であったり、雑学的な情報が記憶の中に蓄積していきます。

僕個人的には「エゴノキの花が散り始めると、良い魚が釣れる」という、個人的な感想を持っているために、エゴノキが散り始めた季節はどこかワクワクしながら釣りをします。

色々な情報を元に勘を働かせて、できる限り空振りしないように出かける訳ですが「残念!」という結果に終わった時に「まぁ、また来年があるさ」と、そんなえらく気長な時間軸を持つことも、また心地良いのであります。

冒険的要素へ

そうしてハズレを何度も経験しながら山勘というものが養えたなら、そこからがまた楽しい要素。
"知らない場所を探索する"という冒険的要素が待っています。

例えば特定の花が、特定の地質を好んで咲くとしたならば、別の場所にある特定の地質の場所にも、その花が咲いているかもしれない。
そんな勘からくる根拠のない仮説を元に、地質を調べて別の場所へ。

大抵の場合は外れますが、地形図・地質図を元に発見した絶景ポイントというのも各所に存在します。

地質図(地質図Naviより)

そんな事で地質図を開いて「同じ地質の場所は…」と探してみると、また要らぬ雑学を覚える訳で、僕のいる南九州には襲早紀要素(ソハヤキ要素)と呼ばれる植生の地理的分類があり、熊襲(クマソ)、速吸瀬戸(ハヤスイノセト)、紀伊国(キイコク)と、今でいう九州中南部、四国南部、紀伊半島が大昔に陸続きであったエリアで、現在は海を隔てた土地にも関わらず、同じ植物が存在しているという、面白さを発見します。

そしてそんな大昔の歴史を感じることができる植物の一部は、今では環境の変化により宮崎県では見ることができなくなりそうなものもあり、寂しさをも感じるように。

たかが小さな花に、そんな歴史を感じること。
消え去りそうな花に、大きな寂しさを感じること。

花の歴史を感じても収入が増えることもなければ、花が宮崎県で絶滅しても僕の生活が困る訳でもありません。

ですが、知ることは豊かだと感じますし、希少な植物に絶滅してほしくもありません。そして何より、冒険的に発見した絶景というのは、何にも変え難い感動が存在します。

ハズレも楽しむ自然体験

最近では仕事柄、怪我を恐れて危険度の高い冒険はしませんが、それでも危険度の少ない冒険は山ほど身近に存在しています。

それが未開の地でなくとも、僕にとって初訪問の地であれば僕にとっては大冒険であり、それが花であろうと、魚であろうと、樹木であろうと、風景であろうと感動できますが、ハズレを引く確率の方が高く、だからこそアタリに遭遇した時の楽しさは大きなものです。

迷う事なく、ハズレることもなく進めることは安心である一方、どうも味気ないというか、面白みに欠けるものである気が否めないのです。

色々なお客様と遊びや仕事の話をする際、"確実で手っ取り早い成功"を望む声をよく耳にします。
聞くとスマホで誰かの成功体験を見たり、動画を見て、実践して、成果が出ぬから辞めてしまう。

ハズレだらけの僕には、冒険とはそもそも何が成功なのかも分かりませんし、むしろ「そんなにすぐ結果が出るもんじゃないだろう」と思うものです。

ハズレて当然、当たればラッキーと思えば、懲りずにまたチャレンジしようと思うもので、当たろうと外れようと、懲りずにチャレンジして楽しんだ方が楽しいものです。

こうして単なる遊びを振り返ってみると、アタリよりハズレの方が成長を促すのかもしれません。
最近、仕事ばかりで遊びでのハズレ経験が減っているので、もっと冒険せねばと思うのであります。それには体力・技量が必要になるため、トレーニングせねばと考えると、遊びも仕事もやることは同じです。

トレーニング嫌いな性格から何とかせねば…

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