マダンテ 1月13日(土)


神社と美術館はよく似ている。
どちらも、周りの人が勝手に静かになってくれるという点で似ている。神社の境内では気狂いと子供以外の人は大体静かにしている。別に静かにしろと言われてないのに、勝手に静かにしてくれる。美術館は神社よりは静粛を強制されるが、それでも別に静かにしてる義務はないのに、みんな勝手に静かにしてくれる。俺は「周りに人がいるのに静か」という状況が大好きだから、信仰心が厚いわけでも、芸術作品が好きなわけでもないのに、神社と美術館が大好き。出掛けた先に神社や美術館があれば、大体行ってとんでもないスピードで一周して帰る。神社ではおみくじを引かず、お守りを買わず、なんなら参拝もせず、ただ本殿まで歩き、ぼーっと見た後自販機で缶のコーラを買って帰る。美術館でも、作品や作家に関する知識が艦これに関する知識くらい無いので、ほとんど足を止めずに順路を歩き、買うわけないのにショップを見て、缶のコーラを買って帰る。時間やお金を無駄にしているように見えるが、正解。でもそれフライドポテトに「元はじゃがいも」って言ってるようなもんだからな。
人がいなくて静かな場所や、静かであることを強制される場所では、俺の欲は満たされない。例えばブックカフェの中には会話禁止、無言で本読めという店がある。確かに静かだが、しかし、そこで周りが静かな中読書をしても、「こいつら本当は騒ぎたいんだろうな」と考えてしまい、すると、その後は周りの人が今何を考えているのかについての想像が止まらず、結局頭の中がうるさくなる。人が全くいなくて静かな場所は、しょうもないことについての思考が止まらなくなり、同様に頭の中がうるさくなる。周りに人がいるのに静かな、しかも自分も静かであることを緩やかに強制される場所というのが、精神の回復エリアに最適◎。MP回復。
さらに、美術館と神社には、微弱な緊張感が漂っている。その場にいる全員が鞘に手を添えているような緊張感がある。誰か1人が動いたら、鹿おどしが鳴ったら壊れる、過冷却水のような空間に自分も仲間入りして、「いつでもぶっ壊せるんだぞ俺は」という表情で木の中絵の中を歩くのが、お年玉よりも好きだった。
今までは自分の好きな美術館、神社の空気を壊さないように、周りの人同様黙って姿勢正して歩いていた。しかし、それももう今日でおしまい。俺はもう東京中の美術館、神社に訪れ、MPを吸い終えた。俺はサキュバス。次に行く時は、マダンテを打つ時。

明治神宮でお会いしましょう。

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