見出し画像

ランス・リンと不死鳥のフォーシーム

ランス・リン

なぜか最近TLで見かけるランス・リンについて2022年のフォーシームに着目して調べました。2023年突如悪化した理由については今回のnoteでは対象外とします。ご容赦ください。

リンの速球はなぜ打てないのか

①なぜか高いリンの速球のクオリティ

リンはキャリアを通して速球を多投する傾向を持っています。

しかし、リンの速球のクオリティは一見するとそこまで質の高い球種には見えません。まず球速ですが、92.6マイル(下位28%)とそこまで速くなく、速球自体もそこまでホップしているわけではなくむしろ平均より沈んでいるくらいです。

リンの速球のムーブメント

一方でリンの速球は結果をMLBで残し続けています。

リンの速球のRun Value

Run Valueは失点をどれくらいその球種が抑止していたかを表す指標で、昨年までのリンはかなり良い数字を残しています。球質自体が悪いと仮定すると、①変化球とのコンビネーション②コントロールの良さがこの数字に影響していると考えられ、実際リンはその面で秀でていることは間違いないのですが、リンの速球の特筆するべき点は速球のStuff +(球の質だけを測ることを目的とした指標)も2022年に99と平均レベルを記録しているところです。2022年のリンは平均球速92.6マイルで平均と比べてフォーシームのホップ成分が16%も落ちており、回転効率も72%とお世辞にもいい数字とは言えません。なのになぜ2022年のランスリンの速球はstuff +は破綻していないのか。今回はこの点に絞って考えていきま調べてみました。

②鍵はリリースポイント?

まず、stuff +がどういう数字によって規定されているのかを改めて調べました。ドライブラインの公式HPによると
①球速
②縦変化
③横変化
④アームアングル
⑤エクステンション
によって規定されるとされています。

そこでまず、近い球速、変化量を持つ選手を探し、ジョー・マスグローブに辿りつきました。

2022年のマスグローブは球速、縦変化、横変化ともにリンとほぼ同じ数字を残していますが、stuff +は82とリンの99とかなりに乖離があります。このため、リンのリリースポイントにstuff +が高い秘密があるのではと推測できます。そこでリンのリリースポイントについて調べてみました。2022年MLB全選手の中で調べると、垂直方向のリリースポイントは176/750位、横方向は右投手の中では、19/556位とかなり低く、プレートから右の場所で投げていることがわかります。
リンのフォームはどこでリリースしているかそもそもわかりずらいフォームなのですが、あえて近いリリースポイントで投げている選手をあげるとするならば、マックス・シャーザーだと考えられます。


リンのリリースポイント

③横変化の少なさによる打者の想像とのミスマッチ

ここまでリンの独特なリリースポイントが球速や縦変化の弱さを補っていたのではないかと考察してきましたが、それだけではなく速球のムーブメントとのコンビネーションも作用しているのではないかとも考えていくうちに、水平方向に大きく距離をとってリリースしているフォーシームの中でシュート方向に大きく曲がらないことが珍しいことに気づきました。
2022〜2023年の右投手の中で水平方向に3フィート以上リリースポイントが遠い投手の速球の横変化は10.1インチなのに対してリンはたった3.4インチしかシュート方向に変化しません。同じ条件で5インチ以下の変化を平均で出しているのは、ペン・マーフィー、タイソン・ミラー、アンソニー・カストロの3人しかいません。この3人も低球速ながら、上々のstuff +を記録しおり、打者の予想よりもシュート方向せずに、クロスファイアしてくることがリンの速球が思ったよりも打ちにくく指標が良い大きな理由だと私は予想します。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?