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ビリー・バトラー協奏曲〈上〉

はじめに

自分が中3時にOAKファンを始めた時の純粋な感想として「こんなダイナミックな動きができる球団があるのか」という感動がありましたが、当時ビリー・バトラーの契約だけは納得がいかず、今までずっとなぜこのような契約をしたのか疑問に思っていました。そこで7年たった今、もう一度ビリー・バトラーの契約がなぜ行われたのか自分なりに精査してみたいと思いこのnoteを書くに至りました。

ビリーバトラーとは

まずは簡単な選手紹介から。ビリーバトラーは2004年にロイヤルズに指名された右打ちの1塁手/DHで、ミート力があり、かつセレクティブな打撃スタイルでロイヤルズを長く支えてきた選手です。以下に成績の推移を載せます。日本人選手で例えるなら足の遅い1B版中島裕之といったところでしょうか。

ビリーバトラーの成績推移

この選手と2014オフにOAKは3年3000万ドルという高額契約をするわけですが、2014年のバトラーはOPS.702、HR9本と不振に喘いでおり、守備・走塁のバリューも期待できない不振のDHに3年3000万ドルというのはかなりの高額です。以下ではなぜこのような契約になったのかを自分なりに分析したいと思います。

ビリーバトラーとの契約の背景

①市場評価が高かった

契約額に関してはアスレチックスだけが高額を提示していたわけではなく、他球団からの評価も高かったことが1番の要因といえるでしょう。

こちらの記事ではBALもオークランドと同等の額を提示していたが、インセンティブの面でOAKが勝り契約にありついたという話が紹介されています。3000万ドル規模の契約は何もOAKだけが彼に提示していたわけではなさそうです。

②OAKの弱点にフィットしていた

当時のOAKは2014年の1B/DHのOPSがリーグワースト4位/10位であったことからも伺えるように1B/DHに大きな課題を抱えていました。特に右打ちの選手は不足しており、プラトーン戦術を多用していた当時のOAKにとってはビリー・バトラーは補強点と合致した選手だったと言えるでしょう。実際バトラーは不振の2014年でも対左ではOPS.847を記録しています。また①で引用した記事によるとOAKのビリー・ビーンGMはバトラーの1B守備を高く評価していたそうです。バトラーは一般的な評価とは違いイニング数は少ないながら2013・14年は平均的な守備指標を記録していました。OAKはバトラーをDH専の選手としてではなく1塁手としての活躍を見込んで獲得したと言えそうです。

③年齢・希少性が追い風になった

ここで市場に出た他の1塁手とバトラーを比較します。

他のFA選手とバトラーの比較

この表を見ると2014オフはそもそも1塁手市場が不作だったと言えるでしょう。また年齢面でも35を超える大ベテランが多く、まだ28歳と若くバウンスバックの見込めるバトラーがOAKにとって一番魅力的だったのではないかと推測できます。また右打ちの選手もアレンシービアとバトラーのみです。これらの希少性がバトラーの契約を高額に押し上げたのは間違い無いでしょう。

④コンタクト力への評価

意外に思う方もいるかもしれませんが、2014周辺のOAKはコンタクト力を重視するチームでした。2014年のK%はKCに次いでリーグ2位を記録しており、これは次年度も同じです。オフに獲得したブレット・ロウリー、マーカス・セミエン、アイク・デービスもK%が20を切る打者で、OAKが三振を不用意にしない選手を好んでいたということがわかります。バトラーも例外ではなくK %は15.9 %を記録しており、このようなOAKの選手嗜好がバトラー獲得を後押ししたと推測できます。

⑤耐久性

バトラーは6年連続150試合以上出場を続けている耐久性の面では申し分のない選手です。故障リスクのなさも他のベテラン1B と一線を画していたと言えるでしょう。

⑥打球速度(邪推)

これは完全なる推測の域ですが、①から⑤の理由をもってしてもOAKがバトラーと契約を結ぶ根拠としては薄いと思ったので2014プレーオフから実装されたバトラーのstatcastデータを参照してみました。

バトラーの指標

これは獲得した次の年の2015年全体のデータですが意外にも打球指標やアプローチ指標は全て平均を超えています。2014プレーオフでKCはWSまで進出しており、サンプルの多かったバトラーが打球速度などの指標のよさを買われてOAKに入団したとすれば、statcastによって初めて獲得された選手というロマンある考察もできなくはないです。

おわりに

ここまでバトラーの契約の背景を考察してきました。やはり1B市場の高騰が最もバトラーの契約に影響したと考えられますが、それを持ってしてもまだ根拠としては薄いなと感じました。中編では実際のバトラーの打撃成績がどう変化したのかを分析していきたいと思います。


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