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アメリカの在宅オンライン統一試験

 世界的に広く普及した国際カリキュラムとして、国際的な教育プログラムと大学入学資格とを提供する「国際バカロレア(IB)」や「ケンブリッジ大学国際教育機構」(ケンブリッジインターナショナル)があるが、今年は新型コロナウイルスの影響で、いずれも最終試験を中止している。そんな中、のべ240万人が受験すると予想される全米最大のAP(Advanced Placement)試験が、5月11日から22日までの2週間にわたって在宅オンラインで行われている。

 アメリカの高校では、同じ科目でも主に3つのレベルに分けて授業を行っている。その中でも、大学の一般教養に相当する、一番難しいクラスがAPで、そのクラスを履修した生徒が、先週と今週にわたって在宅オンラインで科目試験に挑んでいるのだ。全部で35科目程度あり、生徒によっては4、5科目受験することになる。成績は1~5段階で評価され、高いスコアを取ると、大学によって単位として認められる。このような重要な試験が在宅オンラインで実施されるときいた時もびっくりしたが、現在、本当に実施している。

 これまでは、受験者は科目毎に高校の大部屋に集められ、一科目あたり約3時間にわたる試験を行っていた。科目によって異なるが、4択問題、ショートアンサー(数行程度の記述式)、ロングエッセイ(与えられた複数の資料を読んで分析)などが試験内容であった。しかし、今回、これまでの試験方法を変え、一科目45分の在宅オンライン版に切り替えられたのだ。

 AP試験の一週目は何かと不具合が発生したようだ。受験者の問題か、サーバーの問題かは明らかにされていないが、SNSにあがっている情報だと、受験者の約2%が、提出しようとしても最後の段階で答案を提出できなかったとされる。そこで二週目である今週から是正され、試験終了後、答案をただちにメール送信で提出してもよいことになった。

 在宅でやるとなると、カンニングやコピペ、替え玉受験など、不正が予想されるが、それを排除するような形で実施しようとしている。例えば、検索などですぐに答えが出せるような問題を出題せず、資料などを分析する記述式問題が出される。また、提出された答案は、受験者の担当教員にも配布され、生徒の通常の文章と異なるかどうかチェックされる。

 3月から始まった学校閉鎖、そしてオンライン学習が続き、先生も生徒もモチベーションを維持するのが大変だが、こうした大がかりで客観的な試験が行われるのは、意義あることではないだろうか。生徒は、高度な授業とたくさんの課題を抱え、頑張ってきたのに、新型コロナウイルスの蔓延により、最終目的である受験と成績結果が残せないまま、年度を終えてしまったら、やりきれない思いが残っただろう。しかし、それを回避できるような試験ができるということで、これまでの努力は無駄にならなかったという満足感を持って、夏休みを迎えられるのではないだろうか。


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