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【前編】本屋の旅、福岡へ。

こんにちは、ポトラ店長の諸岡です。
夏休みが終わり、お店も少し落ち着いた今日この頃。定休日を返上して営業したお盆の分、振替休業をいただいて、1泊の旅に出てきました。今回は、直接的にポトラのお店のことではありませんが、本屋としての旅の様子を記録に残してお伝えできればと思います。一緒に旅に出た気分で、お楽しみください。

今回の行き先は、福岡県。
自分へのご褒美も兼ねてどこかに旅に出よう、ただそんなにまとめて休みは取れないので1泊で行ける場所で…と考えた時、最初に思いついたのは鳥取からでも行きやすい京都や大阪、また学生時代を過ごし友人も多い東京でした。ただ、今回はあまり行ったことのない場所に行きたい、ということと、やはり本屋としてのヒントを探しに行ってみたい本屋があるまちに行こう、というのが自分なりの旅のテーマでした。

そこで思いついたのが、福岡です。出身が宮崎県なので、帰省の際には姫路から小倉まで新幹線に乗り、小倉で在来線に乗り換えるのですが、いつも通り過ぎるばかり降りたことがないまちです。そして、ポトラを運営するにあたって、尊敬し参考にしている本屋のいくつかが福岡にあるお店だ、ということも思い出しました。今回は、定休日が重なっていて泣く泣く伺えなかったお店(「本と羊」や「ナツメ書店」など)もあったのですが、一番行きたかった「MINOU BOOKS」(うきは店・久留米店)さんと「ブックスキューブリック」(赤坂けやき通り店・箱崎店)の計4店舗を目的に旅に出ることにしました。


スーパーはくとからの車窓

ポトラがある鳥取から福岡までの道のりは、特急「スーパーはくと」で姫路駅(または「スーパーいなば」で岡山駅)に向かい、新幹線に乗り換えます。始発の6時台の電車で出発すれば昼前には福岡に到着します。今回は、1日目にある久留米で降り、宿と二日目は博多で過ごすという旅程を組みました。

MINOU BOOKS(うきは店・久留米店)へ

久留米駅で新幹線を降り、最初に向かったのは、MINOU BOOKS(うきは店)です。MINOU BOOKSさんは、1号店(2015年オープン)であるうきは店が福岡県うきは市にあり、今年6月には2店舗目となる久留米店をオープンされています。うきは店は、久留米駅から車で40~50分ほど。今回は公共交通機関を使っての旅だったので、久留米から大分まで繋がる久大本線に乗り換え、50分程度で到着しました。

新幹線を降りたのは久留米なので、先に久留米店に向かうこともできたのですが、1号店を先にみた上で、2号店がどう展開されているのかを見たい、というのが個人的なこだわりでした。

最寄駅の筑後吉井駅から、12分程度、宿場町として栄えた白壁の街並みを歩きます。はやる気持ちを抑えられず、街並みの写真を撮り忘れてしまったのですが、鳥取の方であれば倉吉の白壁の街並みを思い浮かべてください。
そして、その背景には、MINOU BOOKSの店名になっている「耳納連山」が連なります。これまた写真を撮り忘れましたが…MINOU BOOKSさんのHPやSNSでも印象的なのが、この耳納連山の風景です。
初めて伺ううきはでしたが、MINOU BOOKSさんの写真で見ているままの風景が、より濃い緑と立体をもってそこにあることに静かに感動をおぼえました。

MINOU BOOKS うきは店

そうして、照りつく日差しに汗を拭いながらたどり着いた、MINOU BOOKSうきは店。ポトラを運営するにあたり、少しでもそのエッセンスをいただきたいと、おこがましくも参考にさせていただいているお店は全国にいくつかあるのですが、MINOU BOOKSさんはその中でも店主が憧れているお店の一つです。選書、本棚のつくりかた、うきはというまちのなかでの本屋のあり方…掲載されている記事や書籍を読んだり、オンラインで対談を拝見したりと、一方的にヒントをいただいてきましたが、実際にこの空間に足を踏み入れるということ、自分の目で耳で感じるということは、他の何にも変え難い経験です。
元々魚屋さんだったという物件を改装した店内は、本屋としては決して広くはありませんが、見渡せるこの広さの中に本と出会う楽しみが、静かに、確かにあるということをしみじみと感じられ、気づけば次々と左手に本が重なっていきました。この後も旅が続くことを思い出し、なんとか4冊におさめてレジに向かい、店主の石井さんとも少しだけお話ができた頃には、到着から1時間ほどが経っていました。

うきはから久留米に戻るのには、バスに乗ることにしたのですが、お昼をまだ食べていなかったことを思い出し白壁の町並みを歩いていると、なんだかいいにおいが。そう、これは、九州のソウルフード・豚骨ラーメン!

いいにおいの正体、いい店構えの「ペルー軒」

時間は13時半を回っており、そうっと引き戸をあけて「まだ大丈夫ですか?」と聞いてみると、割烹着姿のお婆さんが「どうぞ」と答えてくれました。席につき、迷わず頼んだのは「ラーメン」。1杯550円というびっくり価格です。しばらくして運ばれてきたのは、あっさりとした塩味の豚骨ラーメン。お腹も心も満たされ、旅の風情をしっかり感じさせてもらいました。

申し訳程度の薄焼き卵もいい味を出しています

うきはから、1時間弱バスに揺られて、西鉄久留米駅に到着。そこから10分ちょっと歩いて、2店舗目のMINOU BOOKS 久留米店にたどり着くことができました。バス酔いと炎天下でちょっと具合が悪くなってしまったこともあり、またもや1枚も写真を撮れずだったのですが、イートインスペースでジンジャーエールをいただいて少し元気が戻ったところで、店内をゆっくり回らせていただきました。奥にはギャラリースペースもあり、ちょうど開催されていた展示『続・三春タイムズ』原画展(長谷川ちえ/文 shunshun/素描)を見られたのもラッキーでした。

すっかり、ただの本好きの旅行という感じになってきてしまいましたが、今回の旅で気づいたことの一つはまさに「本屋で、本と出会う」ということの純粋な喜びです。本好きとして本屋を営んでいることももちろん喜びなのですが、毎日”本屋”の側にいると、客として本屋に行くことの楽しみを忘れてしまいがちであることに、今回の旅で気づくことができました。

ポトラに来店してくださったお客様から「いい本がたくさんある」「今回はどれを買おうか迷うのが楽しい」などとお褒めの言葉をいただくことがあると、もちろん嬉しい気持ちになるのですが、そう思っていただけることは当たり前ではないこと、そしてそう感じてもらえる場所であり続けたい、そのために日々、工夫と努力を怠らずにいなければ、ということを改めて実感することができました。

後編に続く。


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