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Have a Nice Day! / みんなどこ行く

金曜より配信を開始した「みんなどこ行く」。これは10年ほど前に作った楽曲の再録だ。確か3.11の直前にこの歌を完成させたような記憶がある。まだ社会人をやってて、楽曲制作自体は片手間に始めたばかりの時期だったので、歌詞の中に「F/A/C/E」のようなサイケデリックな構造は特になく全体としては淡々とした言葉遊びで歌は進行してゆくのが今では不思議な感じする。唯一のサイケといえばタイトルにもなっている「みんなどこ行く」というフレーズだろうか。読みが深い人はこのフレーズと現在の世界をつなぐことができるんじゃないかな。

DEAD OR ALIVEな山を越えて
NO FUTUREな海を渡る
たいしてやりたことでもないけど
のんびりやってるぜ破壊と創造

あまり触れられることがないけど、自分にとってはこの歌詞がこの歌の核となった一節。この詩が一番最初にできて、他の歌詞はここから派生させていったんだよね。当時この一節は「良い歌詞ができたな」みたいなイメージだったけど改めて見返すとHave a Nice Day!的なひねくれの極致のような感じがするね。


そろそろ辞めよかな そろそろ諦めたようかな
もう、もうどうでもいいや っていうかアイディアはとっくに枯れた
一体何を求めたらいいやらこの生活に出口は見えない
たいしてやりたいことでもないし 僕にはちょっとできそうにないや

「みんなどこ行く」の中で感情移入のしやすい箇所はイントロとアウトロだろう。特にイントロの歌詞における乾いた諦念は楽曲制作当初からずっと持ち続け、いまなお自分の表現のベーシックになっている。ヒップホップの感情を交えない描写や、ハードコアパンクやダンスミュージックのコミュニティーミュージックとしてのアイデンティティを個人に投影するような表現のほうが親しみがあるせいか、ロックンロールや歌謡曲の自己愛(や自己憐憫)の持ち方にはいまだ違和感がある。
アウトロの“君がいなくても~”以降の一節も「自分がいなくても世界は美しく存在していて、それはそれで素晴らしいことなのではないだろうか」という、これもやはり現在進行形のHave a Nice Day!的世界観で。ディテールこそ変化しているが根源的なアイデンティティの持ち方は変化しないものだなと気づくね。ほかの楽曲だと「マーベラス」の“素晴らしい歌が ここにはあって~”が一番近い意味を歌ってるかな。
原曲バージョンのトラックは『エトワール』というバレリーナのドキュメンタリー映画の劇中BGMをサンプリングしたと思う。

ジャケット画像についてもまとめてみよう。
大きな家具量販店に行ったときに『モナ・リザ』やゴッホの絵画のレプリカがポスターと一緒に販売されているのを見かけて。これはアート作品や絵画を売ってるのではなくアート作品や絵画のイメージを販売しているわけで。そして音楽もやはり音楽そのものを聴いてるのではなくイメージを聴いているわけだね。アー写やジャケ写っていうのはその最たるものだ。
「みんなどこ行く」はグスタフ・クリムトの描いた『ダナエ』という絵をジャケに使ってる。ちなみに「わたしの名はブルー」と「ノスタルジア」もクリムト、「RIGHT HERE RIGHT NOW」はジャン・レオン・ジェローム、「F/A/C/E」はエゴン・シーレの絵をジャケにそれぞれ使っている。どれもパブリックドメインの絵画だ。
インターネットのような都合の良いガラパゴスにおいて芸術やアートの領域は最も不可解で不必要な存在だ。音楽もやはりそれと重なる部分があって自嘲的な気分も含みつつパブリックドメインの絵画を自分の音楽のイメージとして使用しているふしがある。
あとは自分がオリジナルじゃない、というこだわりがずっとあるな。引用、サンプリング、オマージュ、言い換え、入れ替え、みたいなことでHave a Nice Day!の楽曲は作られているのでイメージも借り物のほうが自分にはしっくりくるんだな。
どの絵を使うかはひたすら直感を頼りに音を聴きながら相応しい作品を選ぶ。あまり意味を求めすぎても面白くないし。今回はクリムトをたくさん使ったけど、ゴーギャンやゴヤなんかもHave a Nice Day!と合う絵を描いている。

しかし10年前に作ったこの曲を装いも新たにいま一度リリースできたのはごくごく個人的な伏線回収という感じで非常に感慨深い。飽き性ながらも10年も続ければ見えてくることあるんだなと。
そんな感じで5月6日は「みんなどこ行く」10年後のHave a Nice Day!最終形態公開ということで。何卒よろしくお願い申し上げます。あとクラウドファンディングも2週間を切ってしまいました。お金に余裕がある方、ぜひご参加くださいませ。さいなら、さいなら、さいなら。



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