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LOCK DOWN:歌詞解説

みなさま、蒸し暑い日々いかがおすごしでしょうか?わたくしはBandcampでMOODYMANNのニューアルバム購入ついでに衝動買いしたMAHOGANI MUSICのソウルフルなコンピをかけながら西湘バイパスで路駐しながらアイス食っていますよ!東京の海はドス黒いからしみじみ眺めるにはディストピアが強すぎるね。
さて、Have a Nice Day!ひさかたぶりのリリースってことで歌詞の詳細を解説しようかと思い、ややオルターエゴも交えつつPCを叩いているわけなんだけど。LOCK DOWNは普段作ってる曲とはカタチが違うタイプの曲かなと思うけど、2020年の夏は全体的にやや憂鬱なムードも漂いそうで、こういうときにシニカルなアッパーチューンを作れる自分の心の在り方は信頼できる相棒のようなものだよね。

実はこのLOCK DOWNは自分で作りたかった曲を具現化した自己趣味全開な曲で。LCD sound systemの初期シングルLosing My Edgeのラスト、ジェームズ・マーフィーが敬愛するバンド名をシャウトしていくカタチを参考にしつつ自分の中のロックンロール的レガシーで歌詞を構成してゆくという曲をいつかやりたかったんだよね。結局だいぶ脇道に逸れまくってるけど気にしないで。そもそも“LOCK DOWN”を“ROCK DOWN”とスペルミスしてる人いるよねっていう話をきっかけに、LOCK DOWNというタイトルでROCKについて歌ってみようじゃないかという思いつきから作り始めた。「僕らの時代」や「わたしを離さないで」とは違うメッセージの曲に聴こえるかもしれないけど、実は同じことしか歌ってなくて。ただ「僕らの時代」や「わたしを離さないで」とは登場人物やロケーションが違うかな。

ちなみにジャケ写はNASAの公開してるパブリックドメイン画像を使用。広大なる宇宙空間の中で地球を背にした宇宙飛行士の姿は圧倒的に孤独な存在で清々しくさえある。まさしく地球という世界から一歩外に出てそれを無重力というフィジカルな自由空間から眺めたわけだし、オレはこの写真は孤独と自由の象徴のような一枚に感じるんだよね。

bad boy,bad girl
lock down,lock down…

(ロックダウン・封鎖。暴動や感染病が発生した場合に、安全のために人々を建物(または特定の場所)の中に閉じ込めておくこと。また、外部にいる者がそこに入ることを禁じること)

oh yeah,調子はどうだい?もちろんブチあがってんだろ?

戦争が終わり世界の終わりが始まった ok,ok
(戦争が終わり、世界の終わりが始まった:ブレードランナーの原作者としても知られるSF作家、フィリップ・K・ディックの小説タイトル。高校時代に図書館で見かけて強烈なタイトルとしてずっと覚えていて、いまの時代にとてもしっくりくる言葉な気がしてのお蔵出しサンプリング)

20世紀の屍の上に21世紀の墓を立てる
Pixiesのwhere is my mindが聴こえてきたら

(where is my mind:イントロのギターリフがとにかく最高すぎるPixiesのスーパーアンセム。映画「ファイト・クラブ」のエンディングテーマ)

しがらみばかりのロックンロールのケツを思っ切り蹴り上げて
Born SlippyとBorn Under Punchesで乾杯している

(ロック的なカタルシス持ったをダンストラック、アンダーワールドのBorn Slippy。それに対してトーキング・ヘッズのBorn Under Punchesはダンスミュージックとしての享楽がバンドサウンドに反映されている。オレはそもそもDJ Harveyのミックスで知った曲だしね。アフロビートからの影響とかいうどっかで聞いたことのある説明は置いといて、マンチェスターとは違う形でダンスミュージックへのカタルシスへ向かっている曲ってことだね)

午前0時 クロスロードで悪魔を憐む歌を歌う
(ロバート・ジョンソンが「十字路(クロスロード)で悪魔に魂を売って、それと引き換えにギターテクニックを得た」という聖書レベルに歴史的な事実と、ローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌(sympathy for the devil)」の言葉遊び)

くだらないコトが多すぎる
くだらないコトが多すぎる

(これはブルーハーツとの指摘があったんだけどどの曲か忘れてしまった)

ニューワールドオーダー抜け出して
スケベなビートでやってるぜ
ルーザーズたちのワイルドパーティーはまだ続いてるぜ
ニューバビロンシティーの真ん中で
鳴り響いてるファンファーレ
ひっくり返ったダンスホールでブギブギダンス

(ニューワールドオーダーとはWikipediaで調べると「新世界秩序。ポスト冷戦体制の国際秩序を指す。また陰謀論として、将来的に現在の主権独立国家体制を取り替えるとされている、世界政府のパワーエリートをトップとする、地球レベルでの政治・経済・金融・社会政策の統一、究極的には末端の個人レベルでの思想や行動の統制・統御を目的とする管理社会の実現を指すものとしても使われる」とあるね。なかなか物々しい解説だね。オレはバビロンやマットリックスと類意義だと捉えている。ニューワールドオーダー(もしくはバビロンやマットリックス)からどう自由になるかっていうことをメインテーマにしている表現はけっこうたくさんあって、オレが好きな作品だとマトリックスGHOST IN THE SHELLキスミーファーストPSYCHO-PASSあたりがパッと思いつくかな。ファイトクラブとかインセプションもこれにやや近いような気がする。そしてこのテーマはきっと60年代のロックだったりセカンドサマーオブラブともリンクしてるし、ロックやダンスミュージックにとっての大きな命題の一つだろう)

エブリデイ&エブリナイツ
めくるめくパシャパシャナイトプール

(お笑いコンビ・EXITによる大ネタのオマージュサンプリング)

PINK FLOYDの狂気をたたえた月を見つめ
(PINK FLOYDのThe Dark Side of the Moonに“狂気”という邦題をつけたのはサイケデリックとして正しいかったねって話。とにかく明け方の海岸線をとばしながら聴く狂気は最高)

毒入りのリンゴかじって笑いながら口づけを交わし綺麗事ばかりで作ったラブソングでも歌いましょう
blood sugar sex magic ギンギラギンにさりげなく

(レッチリの5th・Blood Sugar Sex Magikと近藤真彦のアンセム)

fight for your right
(Fight For Your Right:BEASTIE BOYSのLicensed to illのシングル)

マジでウゼー奴らが多すぎる
ぶっ壊れていくマイカフォン ぶっちぎっていく明日のフューチャー
ひったくったロッケンロールと盗んだバイクで走り出せ

(尾崎豊のアレ)

バッド・ブレインズ、マイナー・スレッド、ブラック・フラッグ、ジェームズ・ブラウン、ハッピー・マンデーズ、Primal Scream、Joy Division、ジミ・ヘンドリックス、ストゥージズ、The Who、ニール・ヤング&クレイジー・ホース、パーラメント (Parliament)、DFA、BOY'S OWN、マーヴィン・ゲイ、グレイトフル・デッド、ビースティーズ、マンチェスター、シカゴ、デトロイト、パラダイス・ガレージ、エレクトロクラッシュ、ACID HOUSE、ジャック・ケルアック、C19 RHAPSODIES Have a Nice Day! oh yeah…

ラストは予告通りLosing My Edgeのオマージュということで。本家はディスヒートから始まるかなりマニアックなセレクトなんだけどLOCK DOWNではもっと大味なメンツで途中からアーティスト名の縛りも無視。


バッド・ブレインズ、マイナー・スレッド、ブラック・フラッグは80年代のアメリカン・ハードコアを代表する3組。当時のシーンを追ったドキュメンタリーフィルム「アメリカン・ハードコア」を見たのはHave a Nice Day!を始めるきっかけになったね。


ジミヘンやローリングストーンズ、The Whoはめちゃめちゃ最近になって好きになった。いまの不穏な社会の感じと60年代後半の空気感を勝手に繋げて解釈するっていうとてつもなく自分勝手な手口で理解に到達した。特にThe Whoのシー・ミー・フィール・ミーはBPMが早くなってゆくという構成がシンプルにカッコイイ。


ニール・ヤングは「Harvest」と「Harvest Moon」が好きだけど、クレイジー・ホースを従えた「Broken Arrow」も非常に良いんですよ。ところで話が全然違うけど、昔「レイチェルの結婚」っていう映画を主演のアン・ハサウェイ見たさにDVDで観たんだけど、劇中の結婚式のシーンでみんなでニール・ヤングの曲を歌うシーンがあって。そのときにニール・ヤングの歌ってアメリカ人にとってそんな距離感なのだなあと感心したね。


ジョージ・クリントン率いるパーラメント。実は去年の夏はDYSTOPIA ROMANCE 4.0を作りながらなんとなくP-FUNKばかり聴いてたっていう2019年のノスタルジーも含めて。チャイルディッシュ・ガンビーノのRedboneがブーティー・コリンズのI'd Rather Be with Youって曲のオマージュだっていうのもそのとき知ったし、スヌープのファーストの面白さもやっと分かった(Redboneは映画「GET OUT」の冒頭でも使われてますよね!)。オマージュやサンプリングを幾重にも経て連綿と受け継がれてゆくブラックミュージックの旅は果てしない。 


DFA(DEATH FROM ABOVE)はLCD soundsystemのジェームズ・マーフィーが主宰してるレーベル。ちなみにエレクトロクラッシュのアンセムを作るためにジェームズ・マーフィーがThe Raptureとともにスタジオ入りして完成したのが“House Of Jealouse Lovers”だという逸話がある。2000年代はエレクトロクラッシュやニューレイブみたいな一過性のジャンル名がけっこうあったんだよね。ハイプな感じがして嫌がられてたけど。The ShoesのTime To Dance、MGMTのkids、デジタリズムのPogo、Zoot WomanのMemoryなどなど強烈なメロディーを持った曲がいっぱいあって、そういう曲を聴いてたのがハバナイの土台を作った気がする(LOCK DOWNのサビで使用したチアリーダー風のボーカルはMonosurroundのエレクトロクラッシュ全盛期のシングル・Cocked,Locked,Ready To Rockからのサンプリング)。


BOYS OWNは最近亡くなったアンディー・ウェザーウォールなんかが運営していたイギリスのインディーレーベル的コミュニティー。友達に昔BOYS OWNのファンジン集を見せてもらって知った。ケミカル・ブラザーズやアンダーワールドの最初期の音源をリリースしたりしてて、当時のUKのアンダーグラウンドな精神を発信していた存在だったのだね。

Boy's OwnBoy's Own Redux Issue Three out now with new garms and stuffwww.boysownproductions.com



マンチェスターシカゴ(シカゴハウス)デトロイト(デトロイトテクノ)、パラダイス・ガレージ、どれも行ったことさえない場所だね。ローラン・ガルニエの自伝本「エレクトロショック」や、ニュー・オーダーのバーナード・サムナーの自伝本で読んだり、映像で観ただけだね。そんな場所で生まれて進化した音楽がめぐり巡ったひとつの答えが自分たちなわけだから大きな意味ではルーツとも言えるし、彼らのメッセージをもっと知りたいなあと常々追っかけている。


最後はジャック・ケルアックになってしまった。高校のときに読んで全然期待した感じじゃなくてガッカリした「オン・ザ・ロード」を何年か前にふと思い出して読んだんだよ。昔はもちろん分からなかった。でもいま分かるメッセージがたくさんあって。それは物語の真ん中に流れていることが少し分かるようになったからなんだろうな。これは知識じゃ分かりようがないことで、自分自身の人生を自分なりに生きてるってことが必要だよね。シンプルだけどこれがけっこう難しい。一時期は音楽を作るのに本を読む必要はないかなって思ってずいぶん長いこと本を読まなくなってたけど、「オン・ザ・ロード」読んで以降本はヤバいなって思って読むようになったね。人に勧められた本は意外と読めない、自分でみつけた本のほうが渇望感を持って読める。読書なんて時間がかかるからいまの時代に全然合ってないけど、時代と無関係なことにしか時代を乗り越えるヒントはないような気もするね。

調子に乗ってツラツラと書いてたらめずらしく5000文字超えてしまった。LOCK DOWNっていうこの曲は要するにハバナイの思想の総集編的な曲なんだろうな。過去にテキストとして書いたことがかなり入って重複してる内容多いし。「わたしを離さないで」、「僕らの時代」、「Night Rainbow」の底にはこういう地下鉱脈のようなものがあるんだと知ってもらえると幸い。


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