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GET UP KIDS!!!:リリースに寄せて

外がかすかに明るくなってきた。明け方まで制作を続けるがなかなか完成しない。気に入ったトラックはできているけど歌詞がハマらなくて延々とトラックを聴きながらインプロビゼーションで言葉やメロディを嵌めていく。一個のフレーズがハマるとそこから急に全体の輪郭が立ち現れてくる瞬間があるのでそれが訪れるまでフリースタイルし続ける。無理に追いかけるとまとまり過ぎてしまうので距離感が難しい。まあ今日はもう無理そうだ、諦めよう。

5月6日に「トンネルを抜けると」に配信開始。金曜から「GET UP KIDS!!!」、そして5/22に「SPRING BREAKS 2020」、5/29に「TOO LONG VACATION」と配信してゆく。ライブがないのでひたすら制作をしているが、特にアルバムにするために作り始めた音源群でもないので、当面はSpotifyにC19 Rhapsodiesというプレイリストを作ったのでそこにまとめていこうと思っている。
これからいつまでライブができない状態が続くのか分からない。夏のイベントも中止になり始めている、2022年までいままでのようなライブは無理だろうという話もある、イギリスでは違法なレイヴが増えているとの噂も聞く。なんにせよインターネットの普及によってわれわれは外出制限されていようが都市封鎖していようが制作やリリースは自由にできるわけだ。

コロナウイルス感染拡大以降、自分の内側にロックンロールへのリアリティが芽生え始めた。ロックなんてただの形骸化したクリシェだとしか思ってなかったフシもあるが、最近になって友達に教えてもらったThe WhoThe Rolling Stonesジミヘンドリックスのライブ映像が強烈にいまの時代の状況と重なるように感じている。信じられるものが何もないという笑ってしまうほどのディストピアにはやっぱりヤケクソなロックンロールが一番似合う。状況が複雑だとつい観念的にあれこれと考えてみるが、結局出てくる答えはいつだってシンプルにしかならない。GET UP KIDS!!!はそんないまの自分の気分をそのまま反映した2分にもならない歌で、こんなとき時代とは反対の歌詞を作りたくなる。冒頭には友達が戯れにサンプリングした緊急事態宣言発令時の音声を貼り付けて入稿を済ませた。

美しきノイズが散らばるストリートを歩く
FUCK BABYLONの中指と君の瞳を追いかける
吹き荒れる青い春の嵐に髪をなびかせては
ロマンチックとは程遠い退屈なキスを交わす

人生は一度きりだけど失敗ばかりしているわ
それでも後悔してるほどヒマじゃないのよ、パパ・ママ邪魔しないで

oh, get up kids!!!
oh, get up kids!!!
oh, get up kids!!!

与謝野晶子の「その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春の美しきかな」ってめちゃくちゃカッコいい短歌があって、オレも知ってるくらいだから与謝野晶子のウルトラアンセムなんだろうけど。自分の中にずっと残り続けてる女の人が描いた女の人が主人公の物語があって。その他には吉野朔実の「瞳子」とか、杉浦日向子の「百日紅」とかね。ハバナイの過去の曲だとSCUM PARKとかI’m nervousのような曲にそれを落とし込んでたんだけど、久しぶりにその感じを引っ張り出してみた。冒頭では特に指定されてなかった人称が「人生は一度きりだけど〜」のところから女にひっくり返る。

「トンネルを抜けると」、「GET UP KIDS!!!」、「SPRING BREAKS 2020」、「TOO LONG VACATION」は4曲ともにオレなりのC19とそれに対する世界の反応へのアンサーソングだ。歌によって意味が矛盾するのはオレが矛盾してるからじゃなくて世界がそもそも矛盾してるからだ。それはリスナーからすれば捉えづらさかもしれないがありのままに描くとそうなるわけだからしょうがない。音楽ってのは矛盾を認めて受け入れてくれるものなわけだし。自分たちだけは間違ってないと思うのはただ勘違いだろうね。

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