すき焼きを、さらに化けさせる
わたしが働くのは、すき焼きをコースで提供する″すき焼きレストラン″㐂つね。
それは、料理、ドリンク、サービス、しつらえ細部にこだわり抜き、すき焼きを通して感動をもたらす体験を提供する、といった意志の表れです。
2021年4月14日にオープンし、2年8ヶ月が経ちました。
㐂つねのこれからを考える中で、ここでひとつ新しいチャレンジです。
すき焼き″割烹″として、生まれ変わります。
なぜ、私たちがそう決断したか、少し長くなりますが、
お付き合いください。
割烹のほんとう
とつぜんですが皆さま、
割烹と聞いて、どんなイメージを持たれますか?
割烹着を着た料理人がカウンターで手早く調理、仕上げ、出来立ての逸品を提供される和食料理店
そのような印象ではないでしょうか?
しかし、もともと割烹ということばには別の意味がありました。
割烹の意味を辞書で調べてみると、
と書かれています。
つまり、「切る」や「煮る」と言った行為そのものなのです。
実は″割烹″という言葉は、中国戦国時代の儒家「孟子」について記された
漢籍(当時の中国からの書物)によって持ち込まれたもの、とされています。
そこから時代を経て派生して、高級和食店のイメージがついたのです。
“割烹”の誕生
お隣の京都にて、昭和2年に〝板前割烹〞と呼ばれる形態がオープンしたそう。
お客様の目の前で調理し、好きなものを一品料理で選んで召し上がっていただくオープンキッチンスタイルのお店です。
当時は、料亭にてコースでおまかせスタイルで料理が提供されていたようでした。
割烹とはつまり、料亭へのカウンターカルチャーとして始まった背景があります。
じぶんの好きなものを、好きなように選べるアラカルトの楽しさ。
カウンターキッチンにて目の前で仕上げられる、ライブ感。
できたての”生きている”皿に勝る感動はない、と思います。
一方で、コース料理というものがもつ強みもあると考えています。
コース料理が生む感動の秘密
アラカルトは選べる楽しさがあり、
コースは緻密に描かれたシナリオによる驚きがあります。
(コース料理の考え方はレストラン毎にあると思いますが、僕はそう捉えています)
約120分ほどの滞在の中で感情の設計図をつくる。それぞれの料理をどのように召し上がっていただきたいか、感情を含めて設計する。
それはまるで1本の映画のように、前後の流れや文脈を考えることで驚きや納得感を生むことができる、ということです。
僕は、sioというレストランでそれを知りました。
わたしたちのグループでは、”ストーリーのある料理が、心をうごかす”と考えています。
だから、コースには感動を生む力があるのです。
わたしたちが目指す世界観
それは、「美味しいを超えた、感動を提供する」というものです。
㐂つねにおける方程式は、
となります。
ゆったりとくつろいでいただける空間、
㐂つねのためだけに選曲されたBGM、
すき焼きを美味しく食べるための前菜、
目の前で仕上げるすき焼き、味変による驚きや楽しさ、
食後感を気持ちよくするお口直し、
締めくくりにふさわしいスペシャリテのデザート。
すべてはすき焼きを通して、感動体験を提供するため、です。
すき焼きを、化けさせる。
江戸時代に、寺院より料亭の原型が登場し、
明治には、すき焼き・牛鍋が生まれ、
昭和に、割烹が生まれました。
古今東西、さまざまな形で和食文化が生まれ、
変化しながら、守られ続けてきたと思います。
私たちが生きる時代、令和。
私たちができることはなにか。
そこで、「すき焼きを、化けさせる」というモットーに立ち返ります。
過去から学び、未来をつくるための一歩として、「カット」「火入れ」という調理技術にもっと向き合う。
目の前で仕上げられる国民食、すき焼きの素晴らしさをお客様に届け切り、さらに僕たちの手でアップデートしたい。
そんな想いから、すき焼き割烹 㐂つね になります。
すき焼き割烹 㐂つね のこれから
2024年1月18日より、メニュー内容を変更します。
コースのすき焼きをよりいっそう楽しんでいただくために、
ディナータイムはコースのみのご提供とさせていただきます。
ランチタイムはすき焼きをさまざまな形で楽しんでいただきたい、という想いから
新メニューとして「平日限定ランチコース」を開始します。
度重なる原価高騰の影響を受け、いずれのメニューも価格改定しましたが、より楽しんでいただけるよう、精進して参りますのでどうかご了承ください。
いつも、たくさんのお客様に支えていただいております。
本当にありがとうございます。
すき焼き割烹になっても、やるべきことは何ひとつ変わりません。
目の前のことを淡々と、粛々とやっていきたいと思います。
今後とも、㐂つねをどうぞよろしくお願いいたします。
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