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Coffee story エピソード3 【ホットミルク】

【グリーンちゃん】

大きな窓ガラスから差し込む柔らかな日差しを感じながら、カップの内側にへばりついたミルクの膜をスプーンで削ぐように中に落として店員さんを待っていた。
へばり付いた膜を洗い落とすのは、なかなか時間がかかるだろうと思いついついやってしまうのだ。

この前店員さんから、しばらくお湯につけておけば簡単だらか気にしないでくださいって言われていたけど家でもやってしまうのでクセになってしまっていた。一緒に飲めばなくなるけどあのヌルっとした感触が嫌でいつもへばり付かせてしまう。

そこへ、「はい、サービスよ。」
と言って店員さんが新しいやつをもってきてくれた。

「冷めたやつは、飲まなくていいからこっちをどうぞ。
あなた、グリーンがホントに好きなのよね〜。このカップもグリーンだから あなたが来たらグリーンのオブジェみたいに見えてさ。あ、ごめんなさいね。私もグリーン好きだからなんだか気持ちがアガルのよね〜。」

「すいません。遠慮なくいただきます。さっきの話で変なヤツって思って引っこまれたと思ってたからちょっと嬉しいです。」

「あ、夢の話ね。聞いててさ、この絵を見てね同じようなシュチュエーションの場所知ってるのよね〜。それを教えたくてさ。
まぁそれに、今お客さんもいないからね。」 そう言って彼女は、また向かいの席に座って話し出した。

「何年か前にね、行ったことがない方の電車に乗ったのよね。多分お客さんから聞いたからだと思うけど 。
わりと近場でそんな場所があるのかと思い確かめに行ったのよね〜。その時の場所が、あなたが描いたこのスケッチブックに似ているかなって思ったのよ。」

「へー。どんな場所なんですか?」

「電車から降りてそこまで行くのに緑のトンネルみたいな場所があって、そこを抜けてしばらく行くと、途中に道が2つに分かれてるんだけど、向かって右の道をずーっと行くと池があるのよ。その池が伝説のある池らしいのよ。」

そう言うと彼女は、持ってきたアイスコーヒーをぐびぐび飲み干した。

「ただね、私は昼に行ったからちゃんと確かめることは出来なかったんだけどね。」

彼女は、頰杖をついて斜め上を見ながら話し始めてくれた。
私は、たまらなくゾクゾクしてきて、どうか彼女の話が終わるまでお客さんが来ませんようにと願いながらテーブルの下で合掌をしていた。

「割と遠くないところでさ。私、この土地のものじゃあないからさ、オーナーに聞いてみたのよね。そしたらオーナーは、知っててね。
なんでもそこには、この地方に伝わる古い言い伝えがあって、74年に一度 すべての条件があった時に真実が現れるという 池らしくてその条件というのが、ちょっとややこしいんだけどね。あ、あなた忘れてしまうんでしょう?
ゆっくり話すからメモしたら?そのスケッチブックに。そうしなさい。」

そう言うと私のスケッチブックを取り新しいページを開いてテーブルの上に広げてくれた。

私は彼女の秘書みたいに彼女の言うことを一言一句漏れのないように書き留めることにした。
それがとても大事なことだと、絶対に忘れてはいけない事だと、私の忘れっぽい脳が感じていた。


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