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Coffee Story 番外編【ホットココア】

【Mr.ココアマン】③

俺の相棒 ギブソン「B-25」
ギブソンのアコギといえば「J-45」という人もいるがスモールボディの「B-25」の方が俺にはしっくりくる。
ボディがひょうたんのように大きなくびれを作っているので、抱き心地がいい。
かなり小ぶりなサイズ感だけど鳴りはいいし、俺の感じたそのままの音を出してくれる。
激しく引けば振動がそのまま感じられ、優しく弾くと囁くように歌ってくれる。
こいつは俺の本当の俺をわかってくれている。

今日もここでこいつといっしょに歌う。
「ギャラリーSOLEIL」はギャラリーだけど 光一さんの趣味的な色が濃くてまだ無名のアーティストばかりの作品が展示してある。「SOLEIL」はフランス語で「太陽」の意味だから陽の当たらない奴らに光を当ててやろうという事なのかもしれない。
まだ売れてない無名のやつの方が俺にはその魂みたいな輝きが壁じゅうから感じられてとても刺激をもらう。

歌う時にすごく高揚したりする。
売れようとして、もがいているヤツや、今の自分をただ激しく表現したくて作品にぶつけているヤツなんかで囲まれているからそうなるのかもしれない。

仄暗い片隅にいると時々得体の知れないオーブみたいなヤツがそこら中に飛び交っている時もある。

何かを表現するのは、すごいエネルギーが使われているんだと、ここに来るたびに感じて刺激をもらうのだ。

今はもうすっかり片付けられているが沙耶の作品が飾ってあった時は、銀色のドームの中にいて眩しいくらいの銀色だった。彼女はいつも銀色のベールをまとっているようで彼女自身が発光体のように俺には見えていた。
それはまるで蜃気楼のようだった。

今は面影だけがホログラムのように時々俺の頭の中に浮かぶ。
いつか現実に現れてくれると信じて、願って、ここ「SOLEIL」で歌っているのだ。

光一さんといると沙耶の気配を、沙耶の息吹きを感じられるから。

#小説 #あるミュージシャンの話 #ギブソン

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