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Coffee story 番外編【ホットココア】

【Mr.ココアマン】⑥

『いつわりの日常
ただ呼吸してるだけ
淡々とした日々を
ただこなしていた

あの時あの場所で
お前に会うまでは
無機質な毎日を
ただ過ごしていた

この世に生み落とされた時
二つに裂かれた魂が
ひき合うように
なにげなく出会い
さりげなく寄り添う

力強く抱きしめる
お前を感じるため
こころ寄せ合い
こころ震わせる

力強く抱きしめる
お前を感じるため
こころ通わせて
こころ揺さぶられる

Don't thinK. So feel.
何も考えずに
Don't thinK. So feel.
ただ寄り添う

Don't thinK. So feel.
今、この瞬間(とき)を
Don't thinK. So feel.
感じるだけでいい

Don't thinK. So feel.
Don't thinK. So feel.
Don't thinK. So feel.
ただそれだけでいい』

顔を上げてフーッと溜息をつくと、銀色の帯がたなびいて来た。美月さんだった。

パチパチパチパチパチパチ

「ステキな曲ね。もしかして沙耶のことかしら。ほら、以前お店に来た時にあなた、溜まってること歌で吐き出すって話してくれたでしょ。」

図星だ。図星すぎて顔が熱くなるのを感じたので下を向いてチューニングをするフリをしていた。

ズケズケ自分の考えを押し付けるところも沙耶にソックリだった。
それにしても二人とも銀色の膜を纏ってるのは不思議だ。沙耶のほうがより強く見えるが、この姉妹には何かあるのだろうか?

俺にはちょっと人と違う感覚がある。『共感覚 』というらしいが、人には見えてないものが見えたりする。その場の空気が色で見えたり人の気配というか、オーラというかそんなのが色で見えたりする。
美月さんも銀色に見えたのは本当にびっくりした。

「沙耶は、どんなふうにあなたと過ごしたの?私は随分あの子と会っていないのよね。
で、今回の行方不明の連絡だから、本当に驚いたし、どうしていいかわからない状態なのよね。」

「彼女とはそんなに長く居た訳じゃないから、光一さんから声をかけられなかったら、沙耶とはもう会えないかもしれなかったんです。」

「そうなんだ。でも、こうしてここで歌っているってことは、沙耶を待っていてくれてるんでしょ?」

「まぁ、そんな感じ…です。」

「ありがとう。でも不思議よね。
沙耶を知っている人が私のお店に来るなんて。何年も会ってないのにこんな形で沙耶に繋がるなんて。沙耶が帰って来たら、今度こそちゃんと向き合って前みたいに、普通の姉妹になりたい。たった二人の身内だからね。」

「そうなんですか。光一さんも、俺も沙耶は、きっと戻ってくると信じてます。お姉さんも、信じてますよね。きっと戻って来ますよ。」
そう言ってギターを手にして弾き始めた。これ以上話すのはちょっとキツいと思いながら。

沙耶。今、オマエはどこにいるんだ。

目を閉じると、オレンジ色に包まれたあの日の夕焼けの風景が広がっていた。

#小説 #ストリートミュージシャン

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