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Coffee story 番外編【ホットココア】

【Mr.ココアマン】⑦

沙耶が残してくれた俺のシルエットと沙耶の色。沙耶が切り取ったあの瞬間。あの時の風景が瞼の裏にある。

目を閉じるといつも沙耶が現れる。夕陽のオレンジと彼女のシルバー。

いつか本当に現れてくれるのを待ちながら歌う俺は、女々しくて憐れなヤツなのか?
光一さんや美月さんにどんな風に見えているのだろう。
今まで誰とも交わらず深入りせず一人で生きてきた俺が、こんなに変わるなんて、自分でもおかしいが心地よいのは否めない。

あの日ココアを体に流し込んだ時の感覚に似ている。

タバコとHeinekenのカラダに流れてきた、暖かくて甘くて香ばしくて飲んだ瞬間にホッとしたあの感じと似ている。

俺には似合わないのに。

「まあまあ、ちょっとブレイクしないか。
美月さんも、彼の歌聞いていくんだろ?まだ時間あるから飲んだらいいよ。」

そう言って奥から光一さんが運んで来てくれた。

「まぁ、それ、うちの店のカップと同じだ。Wedgwoodフェスティビティ ですよね。これココアにぴったりのカップなのよねー。大きさといい厚みといい、両手で握った時ちょうどいい感じなのよねー。」

そういいながら俺にもココアの入ったカップを渡してくれた。
その笑った顔は、沙耶の笑顔にどことなく似ているようだった。

#小説 #ストリートミュージシャン #ココア
#ウエッジウッドフェスティビティ

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