見出し画像

シンガポールMRT/LRT 最長片道切符の旅(計画編)

最長片道切符という遊びがあって、一般にはJRで買える一番長い一筆書きのルートを調べて、買って、旅行するもののことをいう。調べるのは組合せ爆発との戦いであり、JRの膨大な規則集との談合でもある。じっさいに旅行するとなると日数も費用も嵩む。最初から最後まで大変なものだ。

日本での最新ルートらしい

わたしは日本でそれをやろうと思ったことはないけれど、シンガポールで試してみようと思った。国土が狭いので実乗は半日で終わりそうだし、費用もさほどかからないはずだ。

まずルートを考えてみよう。

参考に「最長片道 シンガポール」とか「Singapore MRT longest one way」を調べてみたがヒットするものはない。シンガポールに鉄道ファンがどれだけいるのかは不明だが、一日でMRT/LRTの完乗を果たしただけでニュースになるくらいなので、あまり盛んでなさそうだ。そもそもシンガポール人に趣味というものがあるのかよくわからない。

数年前に経路案を出している日本人をTwitter見かけたが、2022年11月にはトムソン・イーストコースト線が延伸しており、条件が変わっている。自分で調べるしかなさそうだ。

シンガポールのMRT/LRTの路線図は一般に下の表が知られていて、駅構内などに貼られている。

よくあるマップ。点線は計画線

ここに載っている路線を対象にしようと思う。実はとあるバス路線が鉄道の代行バスであるとかの裏ルールがあるかもしれないがそれは考えない。これとにらめっこしてなるべく長くなりそうなルートを考えるのだ。

基本的な構図としては、山手線のように環状線の黄線があって、その中を各線がウネウネ走っている。黄線から触手を伸ばすように、緑線が左に、紫線が右上に、緑線と青線が右に向かっている。左上では赤線が武蔵野線のように黄線を取り囲んでいて、その中に青線と茶線が伸びている。

行き止まりになっている緑線の左端と紫線の右端をスタートとゴールにするのがよいように思う。緑線の左端をスタートし、中心部を通って、右側の緑線と青線を一周して中心部に戻り、最後は紫線で終わる。途中で赤線と茶線を使って北側にも寄りたい。中心部ではなるべくウネウネ遠回りする形が解ではないか。

最長片道切符については宮脇俊三の本と、SWA Webが有名だが、出来上がったルートは全体の進行方向(北海道→九州になることが多い)に反して、逆方向に進む部分が多いこと、近接するが交わらない乗換駅を通ることが多いの知られている。

近くて交わらない駅に戻ってくると距離が稼げる

そんなこんなで次のようなプランを立てた。

仮説

ほとんど天才かと思えたが、証明はできていない。試算すると乗車には7時間程度かかるようだ。7時間を費やしてやっぱりこれが最長でありませんでしたでは時間がもったい。

わたしは上のマップ上の見た目の距離を元にルートを選んだが、この地図は概念であって実際の縮尺とは異なる。実際の距離がどんなものかといえば、こんなだ。


くねくね
まじか

黄色の環状部は意外と小さく、周縁部、特に北西方向が広い。
市街地が小さく、郊外が広いというのは当たり前のことで、


鶴見線の不可解さが好き

これだってしれっと書いてある高崎や水戸、小山は非常に遠いのだ。
では実際の各駅間距離はどれほどなのか、これがなかなか分からなかった。

Wikipediaにも出ていないし、オフィシャルサイトにも載っていない。もしかしたら軍事機密で秘されているのかもしれない。駅の場所はわかっているから、経度と緯度を調べてそこから直線距離を計算するしかないのかとめんどくさい思いに押しつぶされそうになった。

とはいえ、MRT/LRT の運賃は距離に応じて計算されることになっているのだからどこにもないというのはおかしなことで、ついにここで見つけた。ここで2駅間の運賃を調べるとついでに距離も出てくる。
Fare Calculator - Land Transport Authority (LTA)

なお、2駅間の距離を調べたところでそれが実際の距離でない可能性はあって、たとえば東京新宿間の山手線の距離を調べようとすると一般の仕組みでは最短距離の中央線経由のものを出してしまうはずだ。山陽新幹線/山陽本線の運賃は、岩徳線経由で計算するという謎ルールもある。

さて、注意を払いながら駅間距離を調べて終えたが、そこからどうしたらよいのか。スタートとゴールになる駅は、終点駅か2路線以上が乗り入れるターミナル駅と考えられるが(全体が環状ルートになる場合は、ターミナル駅以外が最長タイになることはある)、こういった駅は全部で36ある。起終点の組み合わせで630通りだ。それぞれについて経路の取り方は無限に思える。組み合わせ爆発お姉さんの顔がなんどもよぎった。松本いちかちゃんの顔だけを見て生きていきたい。

そこでプログラムの力を借りることにした。かっこよく言ったが、わたしにはVBAしかできない。VBAで書こうと思ったけどめんどくさくてやめた。書けてもPCに処理しきれるかわからないのだ。

そこでネットで調べて、この辺を参考にさせてもらい、ウマウマと結果を得ることに成功した。

https://tech.mobilefactory.jp/entry/2018/12/20/180000

それが下図である。じゃじゃーん。

これが答えだ!

スタートとゴールは予想通りで全体も概ね仮説に近いと思いたいが、見るからにこちらのほうが長い。
主な違いは茶線でウッドランドに行って赤線で戻るところで、この平行する2線に乗るところで距離を稼いでいるようだ。

ここの部分が長い。2線必要なのか?

環状線のなかのウネウネもなるほどねというウマさだ。3箇所で線路が交差しているが、ここに乗換駅はない。なんでないのかは知らないが、こういう箇所があるとルートは長く作れる。

交差しているが駅がないため一筆書きが続行できる。自線でループしている青線は謎

もちろん、これをして片道ルートと言えるのかはわからない。JRのルールに準拠するとこうなるだろうと思うけれど、シンガポールMRT/LRTにも独自の片道の規定というのがあるはずで、このルートはそれを逸脱しているかもしれない。
たとえば、途中でLRTを挟むところがあるがLRTは片道として通算しないとか、二重戸籍に見える区間を別線として扱うといったルールがあるかもしれない。
大回りは無駄であり、国益を損ねる。そんな乗り方は許さない、と刑法に書いてある可能性もある。シンガポールはそんな国だ。

そもそも紙の切符もすでに発行されていない。クールな顔をしてプリペイドカードで、これが最長片道ルートだと自分だけが信じて、行路をたどるしかない。

以下記事はありませんが、醵金いただけましたら実乗の費用の一部とさせていただきます。

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?