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少し専門的なデザインの話3


第1回はこちら
第2回はこちらです。

本ブログではデザインを以下のように類別しています。

・視覚・意匠に着目した図案表現型デザイン
・機能・性能に着目した工業型デザイン
・行動・思考に着目した問題解決型デザイン


今回は問題解決型デザインについて詳しく解説していきます



問題解決型デザインとは

デザインの定義は「審美性を根源にもつ計画的行為の全般」です。

そのためデザインを「問題解決の思考方法」と見做す解釈も存在します。

前回解説したプロダクトデザインも広い見方では「ユーザーの要望を形状化し実現するプロセス」といえ問題解決の一種です。

このようにデザインの解釈は種々ありますが「課題解決に取り組むために、デザイナーがアプローチする際のやり方」ということに集約できるかもしれません。

しかし本ブログでは利便性・実用性のためデザインを冒頭の3つに類別しました。その方が場面別で使い分けできるかと思います。


問題解決型デザインの特徴

問題解決型デザインが注目されているのは、それが全く新しい分野であっても、それなりに妥当な解決策を見つけ、提案し、実現していくことが可能であるからです。


以下にそのプロセスを示します。この7段階を経て問題が定式化され、正しい問題が問われ、より多くのアイデアが生み出され、そして最高の答えが生まれます。
・定義(define)
・研究(research)
・アイデア出し(ideate)
・プロトタイプ化(prototype)
・選択(choose)
・実行(implement)
・学習(learn)

これらのプロセスは、なにも順序立てて一定方向に移っていくものではなく、行きつ戻りつしながら、あるいは螺旋を描くように進み問題がより深く理解され、より効果的な結論に結びつきます。



問題解決型デザインに必要な力

次の3つが必要です。
1. 思考し課題を見出すプロセス(思考力)
2. 発想を形に落とし込むプロセス(具現力)
3. 解決へ向け実行するプロセス(実行力)

1では思考力が重要で
・その場の状況・主旨を把握する「理解力」
・情報を的確に扱い調査する「マーケティング力」
・何が問題かを見出す「課題発見力」
が求められます。

2では具現力が重要で
・豊かなアイデアを生み出す「発想力」
・アイデア具体化の為の企画を考える「企画力」
・企画をより現実的に具現化する「具現化力」
・わかりやすく提案する「プレゼンテーション力」
が求められます。

3では実行力が重要で
・提案を実行するための「行動力」
・人と協力し1方向へまとめる「コミュニケーションカ」
・進めていく上で指揮・管理する「マネジメント力」
・将来を見据え的確に判断する「決断力」
が求められます。

これら3つを表現力に繋ぐことで良い課題解決がなされます。

それでは問題解決型デザインの要点について解説していきます。





選択バイアス

科学的根拠の集め方に偏りがあることです。

偏りがあると物事の一面だけが実際より重大に見え結論が歪みます。

根拠を集めるときに、調査対象者が有意抽出 (ノンランダム サンプリング) されることで発生します。

統計分析に基づいた評価ではどのような人々が、 どのような抽出法で調査対象に選ばれたかを詳しく調べることが重要です。



ツァイガルニク効果

中断あるいは未完成の事物が、気持ちに引っ掛かり何度も思い起こされる現象です。

人は無意識に物事の完遂・完成を求めており、未完の物は意識に残り続けます。

周りの注意を引き付けたいときはツァイガルニク効果が役立ちます。続きが気になるドラマはこの手法を上手く活用しています。




ハンロンの剃刀

能力不足という説明で十分なはずの事態を、 悪意のせいにしてはならない、という考えです。

人為的な要因で望ましくない出来事が起きたとしても、それを陰謀や悪意の結果にすり替えてはいけません。



確証バイアス

既存の見解を支持する情報ばかりに注目し、見解を否定する情報は無視しようとする傾向です。

このバイアスが最も強く働くのは、自分が長年大事にしてきた信念や理念など、感情の大きな動きが伴う考えに対してです。



群衆の知

大勢の人が互いを意識せずに共同作業を行うときに現われる知性のことです。

例として「牛の体重を800人の人が見積もったところ、その平均推定値と実体重の差はわずか450gであった」ということがあります。

1つの集団を対象に、 ある答えを募って平均値を出すと、その値はどの個人の答えよりも的確になります。この現象を群衆の知といいます。

群衆の知は、答えが明確に用意されている場合に良く機能します。反対に、答えが曖昧なデザイン上の問題を解決する場合は効力が低いです。

また、群衆の知がもっとも優れた答えを出すのは、集団の構成員がそれぞれに多種多様な意見や信念を持つ場合です。集団内で強力な権威や社会的影響力が働くと、群衆の知の効力は低下します。




処理の深さ

1つの物事について熱心に考察すると、それだけ記憶に残りやすくなるという現象です。

記憶の処理の深さを浅い順に列挙します。
 ・物理的処理(その形のままで覚える)
・音響的処理(音情報で覚える)
 ・意味的処理(意味を考えて覚える)        

参加者に熱心に考えてもらいたい場面では、 何通りもの分析方法で実践させると良いです。ケーススタディ、 実物見本、 関連設備や装置などを提示して、情報に興味を持たせ、自身との関連付けを促すことが重要です。





ダニング・クルーガー効果

未熟な者が、自身の能力や技能を実際よりも高く評価する傾向です。

能力の低い人は、 知識と経験に乏しいため自分の能力不足を認識することも、他者が持つ能力を認識することもできません。

逆に、能力の高い人々は、自身の能力や技能を低く見積もると同時に、他者のスキルを過大評価する傾向があります。



バンドワゴン効果

多くの人に受け入れられた製品や、流行している製品に安心や満足感が増加する現象です。

皆がやっているからという理由で同じ行動をとることも、バンドワゴン効果の一つである。


階層

複雑な情報を視覚化し理解しやすくする方法です。
階層構造には3つの種類があります。 
・木構造
・入れ子構造
・階段構造

・木構造では、子要素を親要素の下または右に配置し、 全体をひとつの三角形に形作ります。
この構造は、 組織図や、 全体を俯瞰するマップ作成に適しています。

・入れ子構造では、 子要素を親要素の内部に入れ込みます。情報のグループ化や、 物事の論理的な関係性を示すときに適しています。

・階段構造では、子要素を親要素の下層に積み重ねます。 要点を箇条書きにする感じです。時とともに変化する複雑な関係性を明らかにするのに適しています。



プロトタイピング

アイデアを探求し問題を深く理解するために、低忠実度のモデルを作る手法です。

プロトタイピングは開発ではなくリサーチの工程です。その目的は理解にあります。

反復型プロトタイピング (解決策を見つけるために改良を加えながら、一連のプロトタイプを高速で作る手法) はデザイン思考の基本です。



ナッジ

行動科学の知見から、望ましい行動をとれるよう人を後押しするアプローチのことです。

男性用トイレの便器に小さなハエの絵を描き、狙わせることで、清掃費を大幅に削減できたという事例があります。


ナッジの手法では行動を促すために、次の方法を導入します。
・フィードバック
・目標に直結する報酬
・選択肢の構造化
・ゴールの可視化

例えば3番目の「選択肢の構造化」では、複雑な問題を整理し単純化した選択肢を提供することで、意思決定を促進させます。



オペラント条件付け

報酬と罰を使い分け行動を修正する手法です。

行動の後に報酬を与えるとその行動が促進され、罰を与えると行動が抑制されます。

行動の直後に与えるのが最も効果的です。ただし過剰な報酬は危険です。あまり喜びを感じなくなります。

また報酬が予測可能だと行動意欲はあまり高まりません。報酬は予測不可能にするとパフォーマンスを維持できます。




反応形成

いきなり難しい行動を教えるのではなく、最終目標行動までの過程を何段階かにわけて、各段階ごとに強化学習を繰り返すという手法です。

ペットのしつけや訓練でよく使われています。



スティッキー性

より広く認知され、 想起され、 自発的に共有されるアイデアを作る手法です。

ある種のアイデアは、ウイルスのように急速に伝播し、 人々の文化的意識に貼り付いて離れなくなります。そうした性質をスティッキー (粘着) 性と呼びます。

スティッキーなアイデアには以下の6つの性質があり、 SUCCES と頭字語で呼ばれます。

1. Simple (簡潔さ): 
簡潔で端的な表現をする。

2. Unexpected (意外性) 
意外性を加え注意を引きつける。

3. Concrete (具体性)
できるだけ平易な言葉やイメージを使い、 内容を特定し具体化する。

4. Credible (信頼性):
信頼できる出典を示すなどの方法で、信頼性をもたせる。

5. Emotional (感情喚起力): 
感情的な反応を誘い出す。

6. Stories (ストーリー性): 記憶に残りやすく、繰り返し語ることのできるストーリーを与える。




サンク・コスト効果

1つの行動に対して既に投資をしている場合、 さらにその行動に投資し続けたくなる傾向です。

取り戻せない過去の投資をサンク・コスト(埋没費用) と言います。 

人は、利益が生まれそうな選択肢よりも失う方の選択肢に引っ張られます。

この効果が働くと、意思決定で判断を誤り、 損の上塗りをすることになります。

サンクコスト効果を防ぐためには、まずはこの効果を認識することです。そして、 現在の費用対効果だけに注目すべきです。

「これだけ投資して、今さら手を引くことはできない」 という言い分に惑わされてはいけません。



ソーシャル・トラップ

短期的な成果を得ようと行動し、それにより集団全体が結局は損失を被る状況を、ソーシャル トラップといいます。

例えば、高速道路の渋滞です。右車線道路の方が混んでる時がしばしばあります。


ソーシャル トラップを防ぐには制限をうまく設けることです。そして協力者には報酬を、違反者には罰を与えると共に、長期的な不利益をできるだけ可視化するとよいです。

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