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チャットモンチーと私


2018年、大好きなバンドが解散してしまいました。
チャットモンチー。

2007年
初めてチャットモンチーに出会ったとき、私は鹿児島県のど田舎の13歳だった。中学生で、合唱部の先輩が『シャングリラ』にハマっていた。
それまでバンドといえばアジカンとBUMPしか知らなかったので、なんとなく男の人の、かっこいい感じのやつだと思ってた。
かわいくてノリが良くて、やっぱりかわいい。
キャッチーだけど、アイドルじゃない。わかりやすくかっこよくは写らなかったけど、新鮮で、雨上がりの空の爽やかさみたいな登場だった。

2008年
初恋をする。同じクラスの男の子がたまらなく好きで、たくさん話しかける以外に何も気持ちの遣る方がなかった。恥ずかし…
そんな時、『風吹けば恋』が出た。きゅーん!てきりん!
自転車をめちゃめちゃに漕いで、好きな人の先回りをする堀北真希。堀北真希の目には青い空も、通行人も、自分の汗も入っていなくて、ひたすら大好きな人の姿だけ!ほんでシーブリーズ!ダメ押しの風吹けば恋!
がーん。私の恋はまさにコレだと思った。
シーブリーズを買って、私のセーラー服が風に吹かれると、せっけんの香りが一緒に飛んでいった。
最高だ。私はあのCMそのものの体験をしてると思った。

だけど現実はあっけない。
恋してる自分に酔っていただけの私は、あっさりフラれてしまった。
嘘〜図書館デートもしたのに。
残ったのは、その男の子に勧められて買ったRADWIMPSの4枚目のアルバム『おかずのごはん』だけだった。
このアルバムはアホほど聴いた。時が経つといい思い出になるかと思ったけど、ぜんぜんまだ苦い。

2009年
私も高校生になった。
誰も私を知らないところに行きたくなり、知り合いが1人もいない高校へ入学した。
この頃から、邦楽ロックを中心にあらゆるバンドに手を出しはじめた。
チャットモンチーも聴いていたけど、新譜を追いかけたりはしてなかったな。

2011年
チャットモンチーのドラム、高橋久美子脱退の一報。
「えっ」と声が出た。学校帰り、田んぼの畦道のど真ん中で立ち尽くした。
嘘!
この頃はほとんど片手間でしかチャットモンチーを聴いてなかったのに、思った以上にショックだった。
え、大変なことだよね?あのバンドは、あの3人だからチャットモンチーなんじゃないの?
私にはどうすることもできないけど、とにかく曲を真剣に聴きなおしたいと思った。

その日私は、チャットモンチーを聴きまくった。
スペースシャワーか何かで録画していたチャットモンチーのライブ映像を見て、MV集を見て、ヘッドフォンで聴いた。
なんて良い曲ばっかり。
シングル『Last Love Letter』を聴いて泣けてきたとき、私ってチャットモンチー好きだったんだな、と思った。

チャットモンチーをもっともっと知りたい。
こんなことしても高橋久美子は帰ってこないけど、そうしたくなった。
改めて聴くチャットモンチーはとても魅力的だった。
この頃聴いていたシャンペもワンオクもUVERもエルレもホルモンもBAWDIESもほんとはそこまで好きじゃなかった。
周りの友達が詳しくないバンドや、軽音の先輩の話に混ざりたくて。そんな上澄みだけ頂戴して、私はクソで不誠実だった。

高校の卒業式前日の夜、私は一人で『サラバ青春』を聴いた。

2013年
一浪した私も、大阪で大学生になっていた。
よく調べもせず、迷わず軽音楽部に入った。
2人になってもチャットモンチーは素晴らしかった。私は、自分の尺度で自分の「好き」を選べるようになっていた。
そんな時、軽音楽部で友達(Tちゃん)に出会う。
Tちゃんは只者じゃない。チャットモンチーが好きだけど、周りにバンドを組むような友達がいないからと、高校の3年間をチャットモンチーのギターを自宅で1人きりでコピーすることに費やした、究極の陰のオタクだ。
今でも、曲名を言うと楽譜も見ずにすぐにギターを弾いてくれる。すごすぎる。

私が大学3回でKen Yokoyamaのコピバンをしていた時に、チャットモンチーのツーマンに一緒に行った。対バンがKen Yokoyamaだったのだ。アツすぎるわ。
最高だった。チャットモンチーで泣き、Ken Yokoyamaではしゃぎまくった。「健」と書かれたピックを2人で拾って帰ったのも良い思い出だ。
その後もTちゃんと、幾度となく色んなライブに足を運んだ。
私はベースだったので、Tちゃんとチャットモンチーのコピーバンドも組んだ。
本当に最高の大学生活だった。

2017年
恐ろしい知らせが飛び込んだ。チャットモンチーが解散する。
私は社会人になって大阪を離れていたが、Tちゃんとは変わらずの仲だった。
本当にショックだった。
Tちゃんと夜中まで電話でお互いを慰めあった。
とにかく武道館には必ず行こうと約束した。

2018年
『誕生』発売。
聴いてすぐに、「ああ、チャットモンチーは終わるんだ」と思った。
もっと新しい曲が聴きたいし、まだまだライブにも行きたい!どうかやめないで!と考えていたけど、『誕生』を聴いた途端、すとんと「終わるんだ」と思えた。不思議なほど納得した。
終わるんだね。決めたんだね。チャットモンチーは、本気で終わらせに来たんだね。
心の底からそう思えるほど、あのアルバムは終わりって音だった。
何度もアルバムを聴いて、そのたびひとりで静かに泣いた。

2018年7月4日
この日、11時ごろ私は武道館にいた。はじめての武道館は快晴で、とっても気持ちいい風が吹いていた。
たくさんのファンに紛れながら、武道館の写真を撮った。みんな撮っていた。みんな、チャットモンチーが好きなんだ。このバンドを好きでよかった。

夕方、仕事終わりのTちゃんと開演ギリギリで合流した。汗だくですごく疲れた様子だったけど、間に合ってよかった。
ライブが始まる。

ネオンカラーの衣装に身を包んだ2人が登場した。その瞬間、もう私とTちゃんは泣いていた。えっちゃんとあっこびんは手を取り合っていた。また私は、「終わるんだ」と思った。

『誕生』の曲が、アルバム通りに流れていく。私はイントロが流れるたびに泣いていた。

『惚たる蛍』
嘘やろ?度肝抜かれた。
イントロが流れた瞬間隣でTちゃんが、「ほたるや!」と言ったのを覚えてる。信じられなくて顔を見合わせてしまった。泣きすぎて、グッズのタオルがぐしゃぐしゃになったけど、そのあと『染まるよ』のイントロが聴こえてきて、もうだめだった。

『東京ハチミツオーケストラ』は、はじめて親元を離れる時に、私もTちゃんも聴いていた。
『どなる、でんわ、どしゃぶり』なんて、まさかラストライブでするなんて思わなくて、また、嘘やろ?!と思って泣きながらTちゃんと笑ってしまった。かっこよかった。

アンコールは、『シャングリラ』『風吹けば恋』『サラバ青春』。すごい3曲だ。
きっとたくさんの人の青春のそばに寄り添ってきた3曲だ。『サラバ青春』で、えっちゃんが泣いて歌えなくなった。みんなで合唱した。歌詞を見なくても歌えるくらい聴いてきた人が、こんなにいるんだ。
Bメロが本当にたまらなくて、目頭が熱くて、頭もガンガンに痛くて喉が震えたけど、歌った。「チャットモンチーありがとう」ってそのことばかり考えていた。


こうして、チャットモンチーと私の11年が終わった。
私の四半世紀ちょっとの人生の、たくさんの甘酸っぱい瞬間に寄り添ってくれたバンドだった。
音楽を聴いて昔の光景が思い出されることがよくあるけど、チャットモンチーの曲でフラッシュバックする気持ちはどれもキラキラしている。
人生の小さなことを、きらめかせてくれるバンドだった。

本当にありがとう。
これからも大好き。


おわり





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