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エコフィードといっても楽じゃない

混ぜ屋といっても、何でも屋といった側面のある弊社
そんな弊社でも珍しい内容の話があった。

というのも、リキッドフィードをしているところで、
pH3という非常に酸性のものが出来てしまい、豚が食べないとのこと。
中和する為に食品添加物の水酸化カルシウムを混ぜて、
ある程度中和して豚に与えているということだった。

水酸化カルシウムを与えることは問題ではないが、
食品添加物だから使っていいということではない。
(飼料としての届出が必要だが、今回はいい)

では、pH3にという状況になってしまった、
リキッドフィードについて、つらつらと書いてみようと思う。




環境に配慮して、食品ロスを削減するという目的で、
食品残さなどを利用して製造されている飼料がある。

エコフィード(eco-feed)と呼ばれており、
農林水産省としても推進している事業の1つなのだ。



エコフィードだが、昨今のSDGs関連の事柄もあり、
推進を進めていきたいということもあるのだろう。



エコフィードといっても、
パン屋から出たパンの耳をそのままとか、
コンビニ弁当を賞味期限が切れたからそのまま、
なんてことは出来ない。

細菌やウィルスといった、病気の原因となる病原微生物汚染の対策として、安全確保に関して、ガイドラインもある。


安全確保に関するガイドラインにおいて、
加熱処理に関して、2つある。

①豚用飼料

豚用飼料を製造する飼料製造業者及び豚用飼料と同じ製造工程で、
豚以外の家畜用飼料を製造する飼料製造業者

原料として用いる動物由来食品循環資源について、
攪拌しながら90℃60分以上又はこれと同等以上の加熱処理を行うこと
同等以上の効果を有する方法の例として、
攪拌しながらその全体の温度を、
・95℃以上に19分間以上
・100℃以上に6分間以上
保つ方法が挙げられる。

食品循環資源利用飼料の安全確保のためのガイドラインより、抜粋
https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/siryo/attach/pdf/ecofeed-10.pdf


②豚以外の飼料

豚以外の家畜用飼料のみ製造する飼料製造業者
本ガイドラインに基づき、以下の加熱処理等を行うこと。

原料として用いる動物由来食品循環資源について、
撹拌しながらその全体の温度を、
・70℃以上に30分間以上
・80℃以上に3分間以上
保つ方法又はこれと同等以上の効果を有する方法により加熱処理を行うこと

食品循環資源利用飼料の安全確保のためのガイドラインより、抜粋https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/siryo/attach/pdf/ecofeed-10.pdf


ガイドラインにおいて、出てきた、
「動物由来食品循環資源」
という言葉が重要なのだ。


「動物由来食品循環資源」というのは、

肉を扱う事業所等から排出される食品循環資源であって、
肉及び肉と接触した可能性があるものをいう。
なお、肉を扱う事業所等には、肉を原料とする食品を製造する事業所等を含み、肉と接触した可能性があるものには、肉を原料とする食品と接触し た可能性があるものを含む。

食品循環資源利用飼料の安全確保のためのガイドラインより
https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/siryo/attach/pdf/ecofeed-10.pdf

とても大雑把に言うが、肉に接触した可能性がある食品残さはすべて、
加熱処理をして飼料として再利用しなければならない。
ということである。


つまり、ニュースで取り上げられていた、

広島の高校生の取り組みが紹介されていたが、
与えているものはきのこであり、肉に関連するものではない。


三重の高校生の取り組みが紹介された上の動画では、
与えているものは、酒かすであり、肉に関連するものではない。

だからこそ、加熱処理を行う必要もないし、
カビが生えるまでに給与できるので、保管も考えなくてよい。

正直に言うのであれば、こういった”ただ与えるだけ”のエコフィードというのは簡単で非常に効果的な方法ではあるのだ。


食品残さの種類において、

米ぬか、酒かす、しょうちゅうかす、しょう油かす、でん粉かす、ビールかす、 ふすま、麦ぬか、コーングルテンミール、果汁かす、とうふかす、パン屑、ビー トパルプ、バガス、茶かす、糖蜜、コーンスチープリカー等食品の製造過程で得られる副産物

食品循環資源利用飼料の安全確保のためのガイドライン
https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/siryo/attach/pdf/ecofeed-10.pdf

が副産物が記載されているのだが、大半は前々から利用されていたらしい。

しかし、飼料メーカーや混ぜ屋のプレミックスメーカーでは、
それらの全てを利用する事は出来なかった。


なぜ、利用しきれなかったのか
それは、「保存性が良くないから」

福井県の畜産試験場において、
発酵ビール粕を保存する為に試験をしているが、
・10月~11月の秋試験でも2週間
・7月~8月の夏試験では1週間
でカビが発生し、品質に問題が発生している。

https://www.fklab.fukui.fukui.jp/ts/manual/cow2_m.pdf


福井県の畜産試験場の試験結果

カビが発生するのも納得で、水分量が60%以上あるのだ。
(ビール絞ってても、60%以上もあるのかという驚きだが)



混ぜ屋で作る製品は、水分量が13%前後でなければ、
カビが発生してしまう。

17%にでもなれば、カビが生えてしまい、製品を製造したのにも関わらず、
廃棄しなければならない。

そのためには、別途乾燥機などを使って、乾燥させるため、
エネルギーコストなどが発生してしまう。



で、水分量が多くても、乾燥といった方法で、処理を行わなくてもよい
そんな夢のように思える方法が、発酵リキッドフィードに加工するのだ。

で、そんなリキッドフィードに問題がないわけではない。
それを既に記事にしている人もいる。


で、やっと本題である、今回のpH3になってしまったリキッドフィード
なぜ、そうなってしまったのかということについて、
2つの可能性がある。

①ギ酸を添加しすぎている場合
 酵母発酵を抑制する為に、ギ酸を入れているのだと思うが、
 このギ酸を入れすぎている場合

②異常発酵してしまっている場合
 乳酸菌によって、乳酸発酵が進みすぎてしまった可能性もある。
 であれば、プロピオン酸を添加する事で、異常発酵を止めるという方法もある。


長々書いたが、発酵リキッドフィードの製造は簡単なことではない。
しかし、酸っぱいものが好きな豚には、非常にメリットがある。
(子豚は酸っぱいが得意ではないらしいが)


だからこそ、上手に発酵を制御していくのに、ギ酸やプロピオン酸を
上手に活用いただきたい。
ちなみに、弊社ではギ酸とプロピオン酸の混合液体を原料として使っている。
そういった製品で手助け出来たら良いのに、とも思う。


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