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ミュージックビデオ製作回顧録 その1

私は愛媛県松山市で映画制作などをしているヤマウチケンジです。

「三津浜の今を映像に残す」プロジェクト

動画は三津浜在住のアーティスト、中ムラサトコさんが2016年に製作したブックレットアルバム「私の中に住む街」の楽曲「夜の鳥の歌」のミュージックビデオです。

中ムラサトコさんのプロデュースと「松山市三津浜にぎわい創出事業」の助成を受けて2018年に製作したミュージックビデオ3本のうちの1本です。そして、前年の2017年11月から翌2月までに三津浜商店街や周辺の関係者の方によるカンパによって製作したミュージックビデオ1本とあわせて合計4本で「三津浜の今を映像に残す」プロジェクトとして発表しました。これから4本すべての製作における回顧録を残します。

ちょっとややこしいですが、理解できたでしょうか。

回顧録をなぜ

で、なぜ回顧録を残そうかなと思ったのかは、これを読んだ方が動画を見てくれるのではないか、そうするともっと知らない人にも広がっていくのではないかと思ったから。と、noteというものを始めてみようと思ってその活用方法として作品の制作日記的なものを残しておけば読んでくれる人がいるのでは⇒映像を見てくれる。というような循環機能にならないかなぁ。あと、上映会を2度やってますがちゃんと作品についてアレコレ話せてないこともあるなぁ、と。作品について言葉にするor文章にすると自分の頭の中でも整理できることもあり、これはとてもいいなと思っています。

ま、単純に言えばプロモーション活動の1つですし、自分の為に作品について自分がどう考えて、その考えをどう表現したかを記録しておこうと思いました。自分の為なんですね、これ。

なぜ、noteを選んだかというと。私が作品のプロモーションとしてTwitterとinstagramもやっているのですが、長文には向かないし、どちらも飽和状態となっていて自分の作品が埋もれまくっていると感じたからです。


さて、ここからがようやく本題の回顧録です。

あなたがミュージックビデオを作るとしたらまず何をするでしょうか?

そう、曲を聴きますね。私も同じで曲を聴きました。これがですね、今回のアルバム全編にわたってそうなのですが、歌詞がありません。これは困りました。何を頼りに映像のイメージを作っていこうかと。そこに救世主的に登場するのがブックレットです。前述したようにアルバムはブックレットアルバムということですので、そのブックレットに制作者である中ムラサトコさんの曲に対する思いなどが掲載されているのです。

「夜の鳥の歌」には、『夜中に目が覚める。という夢を見た。』という一文から始まっていました。

これだ
と。

夢の中の夢。これがテーマで行こう。

さらに『夢の中で目覚めた私は、海の上を風になって漂っている。』と続くのです。そういう風景を探しに行こう。
というわけでまずはロケーションハンティングに出かけました。作品の舞台となる三津浜は何年も前から縁がある場所です。あらためて色々な場所に足を向けました。港町ですので海や船、荷物を降ろしたりするクレーンや船着場など雰囲気ある場所はいくつか見つかりました。そこでカメラを向けて撮影してみるのですがイマイチしっくりきませんでした。何かが足りない気がする。そもそも「夢の中の夢」という世界をそれっぽく見せるにはどうしたらいいのか。少し悩むことになりました。と同時期にiPhoneのカメラ機能で遊んでいる時期でもありました。その機能の中にはタイムラプスやスローモーションなどほんとに性能の良さを感じているところでした。
「夢の中」、「海の上を漂う」…スローモーション!!ということでiPhoneのスローモーション機能を使って夜の三津浜を撮影してみると、まさにこれしか方法はないというような世界が見えてきたのです。

iPhoneを使っての映像制作。

これにはもうすでにいくつかの作品は世に出ています。4の時代に韓国のパク・チャヌクさんが短編作品を、近年では「タンジェリン」、スティーブン・ソダーバーグや邦画では「麻雀放浪記2020」など。名だたる監督が使用しています。しかし、それらと決定的に違うであろうことは私は専用のレンズなどいっさい使わずデフォルトのレンズで撮影した点です。これについてはレンズを買う予算もない、そのままの方が取り回しが便利という理由ですので「すごいでしょ」とは言えなかったりします。なのでこの辺りはあっさりと次へ行きます。

さて、キャスティング。

今作には山下麻衣子さんに出演していただきました。これは自主映画界隈の知人からの紹介でした。キャスティングに関して私が敬愛する黒沢清さんが話していました。「キャスティングは縁です。作品を面白いと思ってくれて、撮影期間にスケジュールが空いている人。そういう人でいいと思います。そういう人がいいんだと思います」のような感じのことをお話されていたと思います。黒沢清と私が比較対象になるなんて大変おこがましいことであり、作品の規模も月とスッポンくらいの差があるわけですから全く同じ状況でキャスティングをしているはずはありません。ただ、ほんとうにそんなものと言ってしまえば誤解を生むかもしれませんが、そんなもんなんです。今回のプロジェクト4本とも、または以前の作品においても「この人出てくれないかなぁ、出てくれたらうれしいなぁ」と思う人にちゃんと巡り合っているんです。山下さんも以前、違う現場のリハーサルでお見掛けしていて、そこの責任者でもあった知人に声をかけてそれとなく山下さんを勧めてくれるように話を持って行きました。するとその通りになり、しかも撮影期間中に山下さんのスケジュールが取れるということだったので見事、出演決定ということになりました。

次は衣装です。

衣装は八木かず美さんにお願いしました。2018年に撮影した他の2本も担当してもらいました。基本的にはイメージだけ伝えてあとは用意してくれたものから選ぶというやり方で進めました。今作については黒いワンピースになりました。実際にロケハンとか撮影テストを本番の前にして幾つか他の候補もあったのですが、黒色ワンピースが夜の黒に溶け込んで背景と人物の境目が分からなくなるようなカットがあり、とても素敵だと思いました。

以上

が「夜の鳥の歌」の回顧録とします。「三津浜の今を映像に残す」プロジェクトは2018年11月3日に三津浜の木村邸という古民家でイベントを開催し上映も行いました。多数の関係者、観客の方に観ていただくことができて、作ってよかったと思えました。2019年、国内外のミュージックビデオも扱ういくつかの映画祭に出品しました。三津浜を知らない人たちがこの作品を観て何を感じるのか、結果はどうあれ、ドキドキしつつ楽しみでもあります。

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