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【私たちが見ているのは、スポーツであり、芸術であり、人生である】


今年はフィギュアスケートのグランプリシリーズをほとんど見ておらず、なんなら不調のしょうま君のリアルな不調っぷりも直視せずここまできましたが、全日本フィギュアだけは真面目に見ています。


女子シングルの紀平選手、初優勝おめでとうございます。


彼女がリンクインした時、自分の心臓のバクバクが凄すぎて、ご本人の心臓はどうなっているのだろうと想像しました。いつも「お昼寝の時間が」とか「筋肉の調子と相談する」とか、別次元のコメントをされるのできっと平常心なんだろうなと思っていたら、試合後インタビューで「全然眠れなくて、お昼寝もできなくて」とおっしゃったのを聞いて、そうか、そうだったんだ、と思いました。彼女はまだ17歳。


最終グループの選手紹介の時、女王の風格を備えていたのは紛れもなく宮原知子選手でした。名前を呼ばれた瞬間に身にまとうオーラ。気品溢れる笑顔。お辞儀を終えても崩れない表情(直前のまりんちゃんが、お辞儀を終えないうちに笑顔を収納してしまったので余計にそう思った)。


けれど、演技自体は芳しいものではなく。


私は、彼女がここまで崩れるのを見たことがない。


フリーレッグがふとした瞬間に氷についてしまったり、引っかかったり、そういう「ゆらぎ」を見せないところが知子(呼び捨て。ちなみにサトコと読む。私名前の漢字一緒だ)の凄さだと思っていたけれど、正直「どっか、痛いよね?」と思わずにいられない状況だった。怪我を抱えていないといいな。


それでも、他の選手なら、もっともっと崩れるであろうところを、彼女は耐え抜く。それが凄さ。


坂本選手も、身体なのか心なのか、何かを抱えた演技。


最終グループの中で光を感じたのは、ここ数年低迷し続けて、それでも練習に打ち込んだ本田真凜選手の復活。ジャンプを失敗してもそれを取り返そうというガッツがあった。彼女が戦えることを証明できた。何より可愛い。可愛さは正義だと確信しました。手足の長さ、彫刻のような滑らかな肌、弾ける笑顔。


そして樋口選手のリズミカルな動き。テンションが上がってきてからの表情の良さも素晴らしい。気持ちが体をコントロールできている時の余裕が美しさを助長させる。


それから、ジュニアの川畑さん。エネルギッシュで素晴らしかった。


数年スケートを見続けても、私はまだ一向にジャンプを見分けることができず、ルッツとトゥループがごっちゃになる時点で演技の良し悪しはよくわかっていないな、と感じます。


なので、自分の楽しみ方は、「しょうまの新コーチはランビエールさんなんだ」とか「太田由希奈ちゃんは川畑さんのコーチ。樋口豊さんもいるー」とか、「宮原さんはバーケルさんが見てるの?」とか、そういう選手を生み出す舞台裏を知ったり、数年不調だった子が演技をまとめて感極まった涙を見せるのを見て自分も泣いたり(今回なら永井優香さんが素晴らしかった。良かった)、大学4年で競技を卒業する子のラストダンスを見たり、そういうあれこれを味わうこと。


スポーツだし、芸術でもあるけれど、これは大前提として人生なんだな、と思う。
一人の競技者と、その家族と、コーチと、彼らを取り巻く全ての人の。
いい時もあれば悪い時もある。低迷が続いたのちに復活したり、納得の演技をしてリンクを去り、いつか選手の隣でコーチとして活躍したり、振付師になったり、テレビで解説をしたり。


それをひっくるめて「フィギュアスケート楽しいなー」と思える何かがあるので、いつのまにか試合結果を追いかけ、テレビを演技を見てしまう。


なので、「人生をかけて」スケートを追いかける子供たちの、登竜門のひとつであるフラワーガールやフラワーボーイがなくなってしまったのはとても残念。原因はあの、プーさんの投げ込み増加かと思われますが、投げ込まれた花を拾うちびっこスケーターの存在まで消してしまった。全日本のリンクで滑るという経験は、彼らにとって掛け替えのない人生の一部であったはず。


栄枯盛衰。


ジュニア上位の子たちが、シニア下位の選手を凌ぎ、スポーツの面と芸術の面が寄せ合う波のように行ったり来たりする。


その儚さと、美しさと、強さを楽しむ。


男子シングルフリーでは、山本草太くんが笑顔になるといいな(男子の中では草太くんのボディラインが一番好み。とりあえず好みの基準がボディライン)。→前提として、3度の骨折を経て復活を遂げた、かつてのジュニアトップの子というストーリーもある。

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