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フランス各地で相次ぎデモ、放火や破壊行為など過激化も

抗議デモ・ストで市民生活に打撃

 フランスでは23日以降、抗議デモやストライキが相次いでいるという。仏内務省によれば23日には全土で100万人近いの市民が抗議活動に参加したとみられ、警察などの治安当局との衝突に発展した。

 デモに加えてストライキの決行で石油精製施設の職員や公共交通機関の職員や学校の教員らのストライキも相次ぎ、ガソリン不足や、電車やバスなどが止まったり、一部の学校が休校するなど市民生活への影響も発生している。またシャルルドゴール空港でも職員がストに参加し飛行機の発着に影響が出ている。

「花の都」パリのはずが… 

 

清掃業者もストでパリはゴミだらけ(写真はイメージ)

またストの影響で街中のゴミの回収が行われておらず、ゴミが至る所に散乱し「花の都」であったはずのパリが「ゴミの都」になりつつある。3月6日からパリの清掃事業者はストを行っており27日まで実施すると発表している。ゴミの放置やデモの激化で観光産業への打撃は必須だ。

 ボルドーではデモ隊・警察衝突、放火や破壊行為も

 仏南西部ボルド―(Bordeaux)では23日、デモ隊と警察の小競り合いの後、市庁舎が放火された。すぐに消防が駆け付け鎮火している。デモ隊と放火の間の因果関係は不明だが、一部のデモ隊の過激化が治安悪化につながっていることは事実だ。警察側は催涙弾で動きを抑えようとし、一方デモ隊は花火などで応戦している。

 パリでは11万人9000人が抗議に集まったとみられ、おおむね平和的な抗議だった。しかし、一部のマスクをつけた若者や過激派などの暴徒が警察官と激しく衝突した。暴徒たちはマクドナルドなどの店舗の窓や街頭や標識などのものを破壊している。警察官1人が意識不明に陥ったが回復した。

 内務省によればパリでは33人が、全国で457人が逮捕されたという。また警察官と憲兵など441名が負傷したという。

 マクロン政権の年金受給開始年齢を62歳から64歳へ引き上げる「年金改革」法案の強行採決に対してフランス国民の7割が反対するなど、仏国内ではマクロン政権に対して強い不満が渦巻いており、今後抗議デモが数年間にわたるなど長期化することも予想される。

 また今回のデモは労働組合のストが中心となっていて、そこへ若者などが多く参加するという構図である。当初は「年金改革」によって定年が先送りになる老後への不安が抗議活動の動機になっていたが、マクロン政権の民主主義をある種無視する強権的姿勢により、「民主主義を守れ」という政治的主張に転化しつつあり、もとより革命の国フランスの人々の闘争心の火に油を注ぐ事態となっている。

 ここまでの規模の抗議運動は近年まれに見るものだという。

 抗議デモが国政運営・外交に影響 チャールズ英国王訪仏延期へ


英国王チャールズ3世の画像
英チャールズ国王の写真(英王室公式)

 外交日程にも大きな影響を与え始めている。イギリスのチャールズ国王とカミラ王妃は2022年9月の即位後初の外遊先としてフランス訪問を発表。26日から28日の3日間の日程でベルサイユ宮殿での夕食会を予定していた。英国王夫妻の公務を管理するバッキンガム宮殿が24日発表した。声明によると、仏マクロン大統領の延期の申し出によるもので、原因を「フランスの状況」が理由だと治安上の問題であることを示唆した。

 加えて、「日程が見極められ次第、フランス訪問の機会を両陛下は心待ちにしている」と述べ、状況が許せば訪問することを明らかにした。

 フランスのマクロン大統領も23日夜に労組が28日に10回目のデモを行うことを表明している状況では英国王と王妃の訪問は不適切であると判断したことを明らかにした。また、「我々は英国王と王妃、そしてイギリス国民に大きな友情と尊敬を感じている。だからこそ、今朝、国王に電話して状況を説明した」とし、「常識と友情から、延期の判断につながった」と述べ、仏側の意向で決まったと話した。

フランスの深刻な階級間格差、世代間闘争とエリートと庶民の闘争

 今回の「年金改革」を巡る抗議活動が激しさを増す背景には、フランス社会特有の階級間闘争があるものと思われる。

 2022年フランス大統領選の背景事情

 昨年のフランス大統領選挙では、極右と呼ばれる反EU・ポピュリスト政党「国民戦線」の党首マリーヌ・ルペン氏とマクロン大統領が激戦を繰り広げた。結果的にマクロン氏が勝利することにはなったが、2回戦という延長戦でマクロン氏58%、ルペン氏41%とというかなり厳しい戦いであった。この背景には2つの闘争があるとされる


続き「なぜ、フランスではデモが正当化されるのか?…」は、赤羽プリンシパルタイムズHPよりお楽しみいただけます。
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続きの部分では、
・マクロン大統領「私が法律だ」憲法49条第3項の強権発動
・民主主義VSエリート主義
・世界の「年金改革」について深堀りしてお伝えします


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