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規格外資材の活用とデジタルファブリケーションの関係 | ReUse by Printing 1-3【イベントレポート】

こんにちは。〈Printio〉で広報を担当しているちばひなこです。

〈Printio〉では、サステナブルプロジェクト《ReUse by Printing(リユースバイプリンティング)》の企画として、規格外資材にプリントを施すことをきっかけに「規格外資材の活用とデジタルファブリケーションの関係」を考えるクロストークを行いました。このnoteでは、そんなクロストークの内容をイベントレポートとしてご紹介します。

ゲスト紹介

グラレコは、五藤晴菜さんによるもの

トークメンバーは

  • プリンターの製造・販売を行う〈ブラザー販売株式会社〉安井宏一さん

  • Tシャツなどの繊維資材を販売をしている〈フェリック株式会社〉關孝和さん

  • クリエイターと一緒にアートイベントを実施している〈TSUKUSHI株式会社〉市本達也さん

  • プリントオンデマンドのためのソフトウェアを開発する〈Printio〉代表・堀江賢司 の4名です。

※このnoteでは、2022年9月20日に〈FabCafe Nagoya〉にて開催されたトークイベント『“隠れ繊維ロス”をリユースする《ReUse by Printing-01》コンタミボディを知ってみよう! -Circular Exhibition vol.2-』のイベントレポートをお送りします。イベント自体を観てみたい・聞いてみたいという方はこちらのYoutubeからご覧いただけます。

詳細はこちら:https://fabcafe.com/jp/events/nagoya/220920-reuse-by-printing-01/

誰かにとっては宝物。オンデマンドプリントがもたらす価値の変革

さて、本題に入る前に、少しだけ印刷自体についてご紹介させていただきます。実は、印刷の歴史というのは、印刷物のつくり方や普及の仕方、さらには、人々の考え方の変遷とも重なるものなのです。

たとえば、印刷の起源をさかのぼると、「押印」にたどり着きます。
具体的には、今から3000年以上前の中国では、文書が正式なものであることを示すためにハンコを作り、正式書類である証明を捺印という”印刷”で表していたのです。押印は、権威や信用を目に見える形で残せるため、誰がみても確かな「信用の証」となり、その場にいない人を含めた広い範囲に影響力とどろかせることにつながりました。人々は階級社会に生き、権威と信用が結びつく社会でした。

さらに、印刷の歴史でエポックメーキングな15世紀のグーテンベルクによる「金属活版印刷」の発明では、文章の複製が容易となり、書籍の大量生産を可能にしました。このことで、知識や文化の広がりをグッと促進したとされています。人々が知恵の重なり合う文化へ手を伸ばしやすい社会へと少しずつ変わっていきます。

〈Printio〉の推奨する「オンデマンドプリント」は、近年開発が進んでいる「デジタルインクジェットプリンター」を活用することで低価格・短納期での少量生産が初めて可能になります。みんなが欲しいものではなくても、誰かにとっては宝物になる小さなものづくりを後押しする社会にこれからはなるし、それはGOODなことであると〈Printio〉は信じています。

デジタルインクジェットプリンターの特徴

インクをデータに従って細かい点状に噴出し、文字やイラストを細かい点の集まりとして表現するプリンター。「活版印刷」を含む旧来の印刷方法では必ず必要となる「版(インクの塗布される個所を決める土台となるもの)」が不要で、低価格での少量生産を実現させます。

「デジタルインクジェットプリンター」は、電子データを読み込み、そのデータをパラメーター設定に従ってインクで再現し、”印刷”を行います。
より品質を高めるための細やかな調整はもちろんありますが、”印刷”を施すということ自体においては、職人による微細な調整がなくても、安定してある程度上質な印刷を実現できるプリンターです。

そのため、プリンター事態の普及という点においても、自宅で誰もが印刷屋さんが始められる時代・誰もが作り手になれる時代になってきているとも言えます。

…と、印刷の話はこんなところで、本題に入っていきましょう。

規格外資材に印刷してみて考えた

今回の《リユースバイプリンティング》企画で使用した規格外資材は「コンタミTシャツ(詳しくはこちら)」です。
食品業界から始まり、繊維業界でも使われるようになった「コンタミ」という言葉。今回のイベントも、コンタミが起きて、通常の流通から外れてしまっているTシャツを印刷でリユースしてみよう!と始まりました。

実際にコンタミ箇所があるTシャツの上から印刷を加えると、もちろんコンタミ位置による部分はありますが、どこがコンタミしているのかを判別のは難しかったです。

会場で直接見ていただいたお客様からは、「全然わからない」「1回着たあとには、もっと別の汚れが絶対ついてそうで全く気にならない」「こんな小さな点で…?!」という感想をいただきました。

また、〈TSUKUSHI株式会社〉市本達也さんはクリエイターもコンタミがあること自体を知らなかったが、コンタミを知った後であれば、コンタミTシャツを選びたいと思うような「ヘルシーなものづくり」を希望するクリエイターも多いのではないかといいます。

こうなってくると、ますます気になるのが、そもそもなぜコンタミTシャツが通常の流通から外れるのか、ということです。

「品質の良し悪し」ってなんだろう?

その答えは、「品質基準」にるようです。

品質基準は繊維業界に限らず、プロジェクトやサービス、それぞれが持っています。たとえば、Tシャツの「サイズの正確さ」を例にとると、日本での品質基準とアメリカの品質基準では、アメリカの方が1㎝以上の差分を多く許容しているという違いがあります。
ですが、〈フェリック株式会社〉關さんによると、アメリカの品質基準が”ただ単純にゆるい”訳ではないのだそう。アメリカでは、大量生産型で何百枚ものTシャツを一気に裁断することが多く、その過程でゆがみが発生しているが、あまり素材を無駄にしないためにも「アメリカの基準は日本とは異なるところに設けられている」のです。アメリカでの「良し」では「サイズの細かな違い」より「無駄を減らす」が重視されている、という違いです

また、關さんは「品質の良し悪し」と思っている基準の中には、実は普遍な部分と可変な部分(トレンディな部分)が混在していると言います。
たとえば、2002年ごろに業界内で存在していた「安かろう悪かろうのアメリカ製Tシャツ」のイメージは、2019年ごろからは「懐かしい、いいね」とトレンドになっているのだそう。根本的な品質(破けてしまうなど製品として保たれない部分)のほかのテイスト部分での品質があるのです。

また、〈Printio〉堀江も、クレームが起きたり、返品が起きる可能性を考えると、自分たちの身を守るためにも、資材チェックのタイミングで違和感がある資材工場も「返品」をすると言います。

会場に来てくださったお客様からも「企業としてお客様に販売するときには、サプライチェーンが長ければ長いほど品質忖度が入ってしまう」という指摘も寄せられました。

たしかに、サプライチェーンが短ければ、品質基準の忖度も減りそうです。

誰もが作り手になれる時代の品質とは

そう思うと、自らが作り手になる場合のサプライチェーンは非常に短く、品質基準は、オーナー(本人)が気に入るか否かのみです。
コンタミTシャツといわれるだけでは、コンタミの程度がわからず不安、という問題も残っていましたが、自ら作るのであれば、現物を見て、オーナー判断で使用を決められます。

〈Printio〉堀江もファブの多い場所では、コンタミのような普段は使わない資材や不確定要素を含む資材の活用は相性が良いと語ります。

“好き”な気持ちから広がっていく、デジタルファブリケーション

イベント会場の〈FabCafe Nagoya〉には、DIYとして自分で印刷することを可能にする「デジタルファブリケーション」が多く設置されています。

今回の会場側の企画担当の〈FabCafe Nagoya〉居石さんは、〈ブラザー販売株式会社〉のミシンをJOYSOUNDのカラオケルームで使用できるサービスを例に、場所があることの大切さと少量生産は気軽に初めてみることから世界が広がるとコメントをくださいました。

また、〈FabCafe Nagoya〉でのファブ施設の稼働は「プロトタイプづくり」が多いのだそう。

DIYや少量生産には「お試しがしやすい」という共通点があり、そのいずれもが『みんなが欲しいものではなくても、誰かにとっては宝物になる小さなものづくりを後押しする社会』につながりそうです。

会場のお客さまからは「紙にも普通紙と上質紙があるし、それとは別に和紙もある」という指摘も寄せられました。コンタミTシャツが和紙のように、混入しているものを楽しむものとしての価値提供ができないのだろうか、という提案です。”好き”な気持ちや”気になる”の気持ちを大切に、まずは自分にとっての宝物を作ってみるのもいいかもしれません。

トークイベント集合写真
クロストーク終了後の登壇者集合写真。左から市本さん・堀江・關さん・安井さん

製造業も印刷業も「ごみ」が出てしまうからこそ、一緒に活用しませんか?

製造するという過程で、製造に至らない材料、端材、不良品など、さまざまな「製品以外」が出てしまうのは必然でもあります。

そんな時に、印刷が力になるかもしれません。その「製品以外」がどんなものであるかを説明するような印刷を施したり、色を加えて不良部分をなじませたり、メッセージやイラストを印刷して加えると、どんなものでも「商品」になり得ると〈Printio〉では考えています。

これからも余剰在庫や規格外資材など、普段は廃棄してしまう製品にプリントを施し、市場への流通を試みるサステナブルプロジェクト《ReUse by Printing》は続けていきますので、余剰在庫や規格外資材、活用してみたい端材がある方はぜひ〈Printio〉までご連絡ください。

印刷で出来る”GOOD”なことを一緒に考えましょう。

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noteでは、Printioのヒトや工場、プロジェクトの紹介、わたしたちの考えていることや目指したいことを綴ることによって、“GOOD”を目指す軌跡を記録しています。
みなさまも一緒に"GOOD"であることを一緒に考えていただけますと幸いです。

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