見出し画像

分散型取引所Uniswapの歴史【v0からv4、及び周辺イベントを時系列で解説】

こんにちは、プリズムと申します。普段はStir というブロックチェーンインフラ企業にてリサーチやマーケティング施策の考案などをしています。個人の活動では、暗号資産に関するデータ分析(オンチェーン分析)もしています。以後お見知りおきを。

2023年6月13日、分散型取引所のUniswap が大型アップデートであるv4 の開発計画を発表し、Web3・ブロックチェーン業界で大きく話題になりました。

このタイミングで改めてUniswapの歴史を振り返り、これまでの各イベントについて解説していきたいと思います。Uniswapは分散型金融(DeFi)における先駆者的存在であり後発のDeFi のほとんどがベンチマークにしているプロジェクトなので、Web3事業者やDeFi を通して投資を行う方にとっては参考になる部分があるかと思います。

以下より、Uniswapの歴史を時系列順に記載していきます。なお読者の対象は、(仕組みを理解しているかどうかは別として)Uniswapでのスワップや流動性提供をした経験がある人、またはそれに準ずるレベルの知識を有する人であることをご留意ください。

2017年6月:失業から始まったUniswap開発(Uniswap v0)

Uniswapが開発されたきっかけは、Uniswap Labsの現CEOであるHayden Adams氏の失業でした。Hayden氏は2017年6月に機械技師として働いていた会社から解雇されました。

解雇直後のHayden氏は、イーサリアム財団で働いていた友達の Karl Floersch氏に将来の相談をし、そこでブロックチェーンやイーサリアムの話を聞かされます。それをきっかけにHayden氏はEthereum、Solidity、JavaScriptを学び始め、徐々にブロックチェーン開発にのめり込んでいきました。

数ヶ月後、Hayden氏はブロックチェーン開発のスキル向上のために、実際のプロダクト開発をしようと思い始めます。このプロダクトが後のUniswapです。

Hayden氏はUniswapの開発に当たり、イーサリアムの考案者であるVitalik 氏のブログで言及されていたAutomated Market Maker(自動マーケットメイカー、略称はAMM)の実装に目を付けました。

AMMとは、人の代わりにコードで制御されるマーケットメイカーのことです。

既存金融におけるマーケットメイカーという用語は、市場参加者(投資家)が金融商品を売りたい時 / 買いたい時に、いつでも売れる / 買えるような環境作りを担う組織のことを指します。AMMではその役割を担うのが、コード(スマートコントラクト)となります。

それから2カ月間、PoC(概念実証)やスマートコントラクトの実装を続けて誕生したのがUniswap v0 でした。Uniswap v0 はコチラのURLから実際のウェブサイトにアクセス可能です。

Uniswap v0 のサイトデザイン


この時点でのUniswapは、流動性プール及びトークンペアが1つしか機能しない状態であり、現行のUniswapとは大きく仕様が異なります。

そんな中で、Hayden氏がUniswap開発の際に意識していた点が、DeFiでのUX(ユーザー体験)でした。

開発当初に話題になっていたDeFiであるEtherDeltaでは、従来のインターネット証券取引所のようなUI / UXが採用されていました。Hayden氏はこのようなUI / UXはプログラマブルマネー及びAMMの文脈ではふさわしくないと考え、より直感的な操作が可能なUIを考案しました。

EtherDelta のサイトデザイン


最初期のUniswapは2017年に開催されたDevcon 3(イーサリアム財団が主催するイベント)にて初めて公開され、そこでAMMの動向を追っていたPascal 氏の目に留まりました。

Hayden氏はPascal氏から支援を受けることで、無職期間中でもUniswapの改善やAMMの研究を続けることができました。この時点でのUniswapの問題点は前述したように、流動性プール及びトークンペアが1つしか機能しないことでした。

2018年1月までには上記のような問題は全て解決され、複数の流動性プールとトークン取引ペア、および1トランザクションでのスワップ処理の実装が成されました。

その後はインターフェースの改築が行われ、2018年3月には以下のようなUIに改善されました。コチラのURLから実際のウェブサイトにアクセス可能です。

フロントエンドが改善されたUniswap


その後Hayden氏は暗号資産・ブロックチェーン系のイベントに参加し、業界でのネットワークを広げていきました。イベントを通して、イーサリアム考案者のVitalik Buterin氏、ParadigmのDan Robinson氏、OptimismのCEOであるJinglan Wang氏との交流を持っていきます。また、暗号資産ウォレットを作っていたスタートアップであるBalanceと、分散型ステーブルコインプロジェクトであるMakerDAOでの仕事を獲得し、就業の合間にUniswapの改善を進めていきました。

2018年7月末、Uniswapはイーサリアム財団からの助成金(Wave Ⅲ)で100,000ドルを獲得することになりました。助成金の一部はコードの監査会社(Runtime Verification, Inc.)への依頼料に使用され、ここからUniswapの正式な数理モデルの作成、コードレビューをはじめとした安全性チェックが行われていきました。

ちなみに、同社の数理モデル研究の結果はコチラ、コードレビューの結果はコチラのページにて閲覧が可能になっています。

Uniswapのコード監査への対応作業と並行しながら香港と上海でのブロックチェーンイベントの出席を終えたHayden氏。ここで、同氏はUniswapの正式なローンチに向けて準備を開始します。

香港で開催されたブロックチェーンイベントの様子(右の人物がHayden氏)

Hayden氏は2018年10月にプラハで開催されたDevcon 4にて発表することを決め、それまでにフロントエンド実装の仕上げ、ドキュメントやホワイトペーパーの作成、コード監査を終わらせました。

2018年11月:Uniswapの誕生(Uniswap v1)

Hayden氏はDevcon 4のイベント会場でUniswap シャツを配り、来場者に対して近々プロダクトをローンチすることをほのめかしました。


Devcon 4で配られたシャツ(名前は V0 Unishirts - Devcon 4 Limited Edition)

そしてDevcon 4の最終日である2018年11月2日、Uniswapのスマートコントラクトがイーサリアムのメインネットへデプロイされ、それと同時に uniswap.ioapp.uniswap.org/# が公開されました。

後日、Hayden氏よりUniswapをローンチした旨のツイートもされます。

誰でも資産をプールしてマーケットメイキングを行うことが可能となる仕組みである『AMM』。Uniswap v1はそのAMMを導入した取引所のPoC(概念検証)の意味合いでローンチされた側面が強いです。

そのため機能としては以下の2つに限定されています。

  • ETH / ERC-20トークン のスワップ

  • 流動性の提供、解放(流動性プールの作成、解除)

ちなみに、Uniswap v1 はVyper と呼ばれるスマートコントラクト開発のための言語で開発されました(Vyperで実装された初の本番レベルのプロダクトがUniswap らしいです)。

しかしながら、それ以降のバージョンではSolidity が採用されています。この理由はVyperのコード監査においてバグが発見され、本番環境のプロダクト開発には適していないという認識が広まったためだと言われています。ブロックチェーン企業のConsenSys が2019年に行ったVyperのコード監査結果が、コチラのページにて確認可能です。

維持管理なしで問題なく運営がなされたUniswap v1は、ETH / ERC-20トークンペアの代表的な取引プラットフォームとして認知されていきました。

Uniswap V1の間に流動性提供されたETHの数量

2020年5月:AMMのUXをより洗練するアップデート(Uniswap v2)

Uniswapの開発チームはv1 よりも洗練されたAMMの実現に向け、Uniswap v2の開発を行いました。

Uniswap v2は、2020年5月4日にイーサリアムメインネットへデプロイされました。デプロイ記録はコチラから確認できます。

Uniswap v1からの変更点としては、主に以下の3つの実装が挙げられます。

  • ERC-20トークン同士の流動性プール・取引ペア

  • 価格オラクル(Price Oracles)

  • フラッシュスワップ(Flash Swaps)

以下各小見出し内にて、それぞれ解説していきます。

ERC-20トークン同士の流動性プール・取引ペア

Uniswap v1では、全ての流動性プールはETHとERC-20トークンとの間に作成されます。このような仕様により、Uniswap v1でERC-20トークン同士の交換(スワップ)を行う場合は、必ずETHを経由する必要がありました。

要するに、AというERC-20トークンをBというERC-20トークンに交換したい場合には、Aトークン→ETH→Bトークンという交換プロセスが必須であるということです。

Uniswap v1 におけるERC20トークン同士のスワップ

しかしながら、ERC-20トークンの種類が増えていくにつれて、ERC-20トークン同士の流動性プールを作成する需要が増えていきました。

特に流動性プロバイダーにとっては、Uniswap v1 の仕様のままだと流動性プールを作成する際に強制的にETHの価格変動リスクを取ってしまうことになります。

例えば DAI / USDCペアの流動性プールであれば、ETHの価格変動の影響を受けずにERC-20トークン建てのポジションを立てることが可能です。

ERC-20トークン同士のプールを作成できるようになるその他のメリットも挙げると、以下のようになります。

  • 流動性プール作成時、強制的にETHの価格変動リスクを取らなくて済む

  • スワップ時、ETHを通してトークン同士を交換するよりもガス代及びスリッページが安くなる

  • 交換したいトークン同士の取引ペアが存在しなかったとしても、存在する取引ペアを多段階的にスワップすることで取引が可能となる

Uniswap v2におけるERC-20トークン同士のスワップ

※3つ目に挙げたメリットに関する補足
上図の、Custom Pathを指しています。

DAI を USDCにスワップしたい時にDAI / USDC 取引ペアがなく、かつETH / USDC 取引ペアも存在しない場合に、DAIをETHにスワップするとします。

この時、ERC-20トークン同士のペアが存在していれば、ETHを経由し別の取引ペア(図でいうところのETH / BAT、BAT / USDTの取引ペア)を通してUSDCと取引ペアのあるトークンを得ることで、このスワップを成立させられます。

価格オラクル(Price Oracles)

価格オラクルとは、ある資産(トークン)に関する価格データを閲覧するために使用するツールを意味します。

Uniswap v2ではオンチェーンでの価格データフィードを実現する機能が実装され、Uniswap v1と比べて市場操作(価格操作)に強い耐性を持ちました。

データフィード(Data feed)とは、あるデータを何らかの形式に変換して送信する仕組みのことを指す言葉です。

文字通り、データ(情報)をフィード(データをユーザーに配信するためのフォーマット)化する流れや仕組みのことを指す言葉となっています。

具体的に実装されたのは、以下の2つの仕様です。

  • 全ての取引ペアにて、取引が行われる前の各ブロックの開始時の市場価格(下図の P_start を示す)を測定する

  • ブロック終了時の市場価格(下図の P_end を示す)を当該価格が存在した時間(すなわち、次のブロックの生成開始までの時間。下図の timeElapsed を示す)によって重みづけされた変数(下図の priceCumulative を示す)を測定する

オンチェーン上での累積価格データ(priceCumulative)の測定プロセス

このとき変数 priceCumulative は全履歴における毎秒のUniswap価格の合計値を表しているため、任意の時間間隔に渡る正確な時間加重平均価格(TWAP、Time-weighted-average price)を計算するために適しています。

結論、このTWAPがUniswap v2上で表示される価格になっています。

TWAPを計算するための式

このような価格オラクルを作成することで、Uniswap v2は Uniswap v1と比較して攻撃への耐性を獲得しました。

※TWAPはボラティリティが高い場合の価格計算上不適切であるという指摘があり、Uniswap v2の価格オラクルは価格操作への耐性を示すのには不十分であるという意見もあります(筆者はトレード戦略について詳しくないため、これ以上の説明は控えさせていただきます)

フラッシュスワップ(Flash Swaps)

フラッシュスワップとは、トークンの交換(スワップ)において、ユーザーから交換元トークンへの流動性プールへ着金を確認する前に、ユーザーへの交換先トークンの送金を実行できる機能です。

この操作はスマートコントラクトを通して、1トランザクションのうちに実行されます。

これだけの説明だと分かりにくいと思いますので、具体例を見てみましょう。

フラッシュスワップのプロセス

Uniswap、及びとあるDEX『A』に DAI / ETHという流動性プールがあるとします。Uniswap上では 1ETH = 200 DAI、Aでは1 ETH = 220 DAI でスワップが成立するとします(つまり、DEX間で価格に乖離が出ている状態です)。

この価格差を利用して裁定取引(アービトラージ)を行うとします。

通常の裁定取引では、ユーザーは200DAI をUniswapを通して1ETH に交換し、その1ETH をAにて220DAI に交換するという経路をたどります。この操作を行うことにより、ユーザーは持っている200DAI を220DAI に増やすことができました。

しかしながら、上記の操作を行う際には元手として200 DAIを保有しておく必要があります。

フラッシュスワップを用いれば、元手200DAI を必要とせずアービトラージを実行することが可能です。(※トランザクション手数料は必要です)

フラッシュスワップを実行するための関数『uniswapV2Call』

フラッシュスワップにて、1トランザクションの間に、

  • Uniswapの流動性プールからの1ETH の引き出し

  • Aにて220DAIとの交換

  • Uniswapの流動性プールへ200DAI +手数料分のDAI を返済

を完了させることにより、ユーザーは元手である200DAI を必要とせずに裁定取引にて利益を得ることができます。

Uniswap v2にてフラッシュスワップが実装されたことにより、ユーザーは裁定取引(アービトラージ)を行いやすくなります。

裁定取引(アービトラージ)が多く行われれば、他DEXとの価格差の縮小にもつながり、Uniswap上で公正な市場価格を表示するための一助となります。


なお、似たような機能としてフラッシュローンがありますが、フラッシュローンは返済を同じ資産(トークン)で行う必要があるという仕様であるため、フラッシュスワップとは明確に異なります。

※フラッシュローンとフラッシュスワップの違い 具体例

フラッシュローンにて USDC を借り入れた場合は返済の際にもUSDCを返す必要がありますが、フラッシュスワップの場合は流動性プールのトークンペアの内どちらかであれば返済が可能となっています。

なおフラッシュローンは、ローンという名称になっていますが実際の操作としては借り入れを行いません(借り入れのための元手は必要ありません)。

2020年9月:ガバナンストークン $UNI の発行

Uniswapは、2020年9月16日にガバナンストークンである $UNI の発行を発表しました。

トークン発行の目的としては、コミュニティへのガバナンス参加権の配布となっています。

$UNI は2020年9月1日までにUniswapを使用したアドレス、流動性提供を行ったアドレス、SOCKSトークン(Uniswapが展開したNFT)の保有者に対してエアドロップ(無料のトークン配布)されました。

2021年5月:更なる資本効率の追求(Uniswap v3)

Uniswapは2021年5月5日に、Uniswap v2から1年ぶりとなる大型バージョンアップのUniswap v3を発表しました。

Uniswap v3に関連するコントラクトアドレスのリストは、コチラのGitHubページより閲覧可能です。

Uniswap v2からの変更点としては、主に以下の3つの実装が挙げられます。

  • 集中流動性(Concentrated Liquidity)

  • 柔軟なスワップ手数料の設定(Flexible Fees)

  • 高度な価格オラクル(Advanced Oracles)

以下各小見出し内にて、それぞれ解説していきます。

集中流動性(Concentrated Liquidity)

集中流動性とは、個々のユーザーの流動性プール作成に際して、提供する資金をどの価格帯の流動性に割り当てるのかをユーザー側で指定できる機能です。

例えば ETH / USDC の場合、1ETHが 1,700~1,800 USDCの価格帯を維持している間だけスワップできる流動性を提供する、というようなイメージです。

集中流動性のイメージ

Uniswap v2では、提供された流動性は上図でいう青い矢印の部分全体に均等に分配されていました。つまり、流動性提供にトークン取引ペアの値段は関係がありませんでした。

しかしながら、その仕様では市場価格から大きく外れた部分の流動性がほとんど使用されないことになります。

そのような問題点を解決するため、Uniswap v3 ではユーザーが流動性プールを作る際にどの価格帯に流動性を提供するかの選択が可能となったのです。

集中流動性のメリットについて、このままの説明だと分かりにくいと思いますので具体例を見てみましょう。

v2 とv3 で流動性プールのAPRを比較した例

上の図は、ETH / DAI トークン取引ペアにおけるAlice とBob の流動性プールの作成に関する戦略を表した図です。

Alice はUniswap v2 の仕様のように、ETHの価格帯全体(0から無限大まで)に対して流動性を提供することを決定しました。一方のBobは、集中流動性を利用して1,000~2,250ドルまでの価格帯にのみ流動性を提供しました。

流動性提供から1年間の間、ETHの価格が1,000~2,250ドルの間で推移し続けた場合を考えましょう。この時、AliceとBobでは常にBobの資本効率の方が高いと言えます。この場合、Bobには流動性提供の手数料収入が提供した100%の資金で適用されますが、Aliceにはたった15.9%の資金にしか適用されません(言い換えると、Aliceが流動性を提供した価格帯の内、0~1,000ドル未満、2,250ドルより大きく ∞ までの範囲では手数料収入が発生しません)。

また、このような流動性提供の方法が生まれたことにより、流動性ポジションの状態がユーザーごとに細分化かつ多様化しました。そういったポジションの表現に用いられるようになったのが、非代替性トークン(NFT)です。

USDC / WETHペアの流動性提供の証として発行されるNFT

Uniswap v3が登場する前は、流動性提供を行った際にはLPトークン(流動性提供を行ったことを証明するERC-20トークン)が発行されていました。

しかしながら、v3 より集中流動性の機能が登場したことにより、流動性を提供する価格帯や選択するスワップ手数料が流動性の提供者ごとに異なってきます。これにより特定の流動性プールに関するポジションを1種類のトークンのみで表現することが不可能となり、結果としてポジションをNFTで表現することになりました。

NFTマーケットプレイスでは、上記のような流動性ポジションのNFTを多く見ることが可能です。(OpenSeaのリンク

柔軟なスワップ手数料の設定(Flexible Fees)

Uniswap v3 では、個々の流動性プールが引き受ける価格変動リスク(ボラティリティ)の大小に応じてそれに対応するスワップ手数料を設定可能となりました。

具体的には、ユーザーがスワップを実行する際の手数料を、0.01%、0.05%、0.3%、1% の4種類から選択可能となりました。

流動性プールはETH / DAIのような相関性のないトークン取引ペアではより大きなリスクを負い、USDC / DAI のような相関性のあるトークン取引ペアでは最小限のリスクしか負いません。

このような背景より、Uniswap v1、v2 では0.3%に固定されていたスワップ手数料が、Uniswap v3 では流動性プールが負うリスクに応じて調整できるようになりました。

流動性提供のUI にて複数の手数料ティア―から選択が可能

実際にプロトコルの状況を観察してみると、トークン取引ペアが持つ価格変動リスクに応じて、市場参加者が選択するスワップ手数料が異なっていることが分かります。

各トークンペアにおいて選択されているスワップ手数料の例

高度な価格オラクル(Advanced Oracles)

Uniswap v3では、Uniswap v2で導入された時間加重平均価格(TWAP)の価格オラクルが改良され、1度のトランザクション内で過去9日以内のTWAPを計算することが可能になりました。

Uniswap v2(下)とUniswap v3(上)の価格オラクルの比較

この機能拡張により、単純移動平均(SMA)、指数平滑移動平均(EMA)、外れ値の除去などを踏まえた、より高度な価格オラクルを実現可能となりました。

2022年4月:Web3特化のVCを設立(Uniswap Labs Ventures)

Uniswapは2022年4月11日、Web3系のプロジェクトへ投資を行う団体である『Uniswap Labs Ventures』を設立しました。

投資対象はインフラ、開発者ツール、一般ユーザー向けアプリケーション等としており、投資先プロジェクトにはUniswapが培ってきた様々なノウハウを提供すると宣言しています。

Uniswap Labs Venturesは既に多くのプロジェクトに投資をしています。具体例としては以下の通りです。

2022年7月:初のイーサリアムメインネット以外での対応(Optimismへの対応)

2021年7月13日、Uniswap v3のOptimismへの対応が発表されました。これはUniswapにとって初めてのイーサリアムメインネットへの対応となりました。

初の対応がOptimismになったのは、CEOであるHayden氏の交友関係に影響されていると考えられます。

Hayden氏はUniswap v1のローンチ以前に、Optimismの創業者であるJinglan Wang氏との交流がありました。

なお、約1か月後の2021年8月31日にはArbitrumへの対応が発表されています。

2022年8月:Uniswap財団を設立

2022年8月24日、Uniswap財団(Uniswap Foundation)の設立がUNI保有者によるコミュニティ投票(ガバナンス)により決定されました。プロポーザル内容はコチラのページから確認可能です。

投票はガバナンストークンである $UNI の保有量が議決権として扱われる形で行われ、賛成多数で可決しました。

当財団の目的は既にUniswapが展開していた助成金プログラム(Uni Grants Program)の拡張することであり、Uniswapとそれに関連するエコシステム全体の分散的かつ持続可能な成長をミッションに掲げています。

ちなみに Uniswap財団の設立は、主要なDeFiプロトコルによる財団設立の初の事例となりました。

※Uniswap財団の関連リンク
公式サイト:https://www.uniswapfoundation.org/
公式Twitter:https://twitter.com/UniswapFND
公式Mirror:https://uniswapfoundation.mirror.xyz/

2022年11月:NFT取引への対応

Uniswap Labsは2022年6月21日にNFTマーケットプレイスアグリゲーターであるGenieを買収したことを発表し、NFT領域への参入を表明しました。

そしてGenieの技術をUniswapに取り込み、2022年11月30日にUniswap内でのNFTマーケットプレイスの展開を発表しました。

ちなみに、UniswapはNFT系のプロジェクト『Unisocks』を2019年5月に既にリリースしていました。これは疑似的なNFTであり、$SOCKSトークンを購入して権利を行使することにより、500足限定の物理的な靴下が届くという取り組みでした。($SOCKSトークンはERC-721ではなくERC-20で発行されているため、厳密に言うとNFTではありません)

2023年6月:Uniswap v4の開発計画を発表

Uniswapは2023年6月13日にv3 の実装から2年ぶりとなるアップデートを発表しました。

Uniswap v4では、主に以下の2点に注力して開発が進められています。

  • 流動性プールのカスタマイズ性向上

  • スワップ時のトランザクション手数料(ガス代)の削減

以下各小見出し内にて、それぞれ解説していきます。

流動性プールのカスタマイズ性向上

Uniswap v4では新機能であるフック(Hooks)を用いることで、流動性プールの状態変化や特定の条件の下で実行される、何らかのアクション(ロジック)を設定することが可能になります。

条件は特定のイベントに起因して設定可能です。イベントのタイミングの例としてはスワップの前後、流動性プールのポジション変更(流動性プールへの資金追加、引き出し)の前後、などが挙げられます。

Hookをスワップの前後に組み込んだ例

フックの導入により、Uniswap上での複雑な操作が可能になります。具体例としては以下の通りです。

  • オラクルの価格参照ロジックをカスタマイズ

  • オンチェーンでの指値注文

  • ボラティリティに応じたスワップ手数料の動的な決定

  • 特定の時間間隔での注文の実行(DEXを通したオンチェーン積立投資)

  • 流動性の一部を外部のDeFiプロトコルへ流す(Lendingに出す、Liquid Stakingに回す、など)

  • 内部的なMEV収益を流動性プールに還元

プール作成時のトランザクション手数料(ガス代)の削減

Uniswap v4ではシングルトン(singleton)という機能の実装により、トランザクション手数料の大幅な削減(ホワイトペーパーでは99%の削減と言及されている)が計画されています。

シングルトンにより、全ての流動性プールが一つのスマートコントラクトにて管理可能となり、複数プールをまたいだスワップ時のルーティング等の効率化にも寄与します。

Uniswap v3でのスワップとUniswap v4でのスワップの比較

シングルトン(singleton)は IT用語において、オブジェクト指向プログラミングにおけるクラスの設計方法の一種を指す言葉です。メジャーなデザインパターン(プログラム設計において、特定の機能要件を満たすために確立された手段・方法)として認知されています。

英単語としては、一人っ子、独り身、という意味です

まとめ

Uniswapのv0 からv4 までの流れを概観してみると、一貫してAMMにおける資本効率性の向上を目指していることが見て取れます(DeFiプロトコルとして当然だとは思いますが)。

ガス代の削減、流動性プールの機能拡張、価格データフィード(オラクル)の改善など、v1、v2、v3 とアップデートを経るにつれてプロトコルとしての仕組みが効率化しています。

その一方で、着実に複雑化しているとも思いました。特にUniswap v4 のカスタマイズ機能の提供は、よりDeFi世界の複雑化を促進すると考えます。歴史上あまりにも複雑化した金融商品が金融危機を引き起こした事例があると思いますが、DeFi世界がその二の舞にならなければ良いと願うばかりです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。今後もDeFiやオンチェーン分析系で記事を書いていこうと思いますので、もし良ければ筆者のTwitterアカウントをフォローしていただけますと幸いです。

おまけ①:Uniswapの名付け親はだれ?

結論から言うと、イーサリアムの考案者であるVitalik氏がUniswapの名付け親のようです。

ファウンダーであるHayden氏は当初、ユニコーンとペガサスを混ぜた言葉でUnipeg(ユニペグ)と名付けるつもりだったようですが、Vitalik氏が「UnipegってUniswapみたいな響きだね」と言ったことからUniswapになったようです。

おまけ②:Uniswapの分析(アナリティクス)ツール

Uniswapはバージョンごとにプロトコルの状態を監視できるアナリティクスツール(ウェブサイト)を用意しています。このツールを使用することで、オンチェーン分析等の技術がない人でもUniswapに関するリアルタイムのデータが閲覧できるようになっています。

Uniswap v3
のアナリティクス画面

以下に各バージョンのアナリティクスツールのURLを記載いたしますので、ご関心のある方は覗いてみてください。なおURLは2023年6月時点のものであり、今後のアップデートにより変更される可能性があることをご留意ください。

Uniswap v1:https://v1.info.uniswap.org/home
Uniswap v2:https://v2.info.uniswap.org/home
Uniswap v3:https://info.uniswap.org/home#/

参考文献


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?