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第5章〜病舎看護係編 第5犯〜ブラスバンド部に入りました

ご苦労様です!、、、という言葉を頻繁に使うのだと思ってたけど、川越はそこまで軍隊調ではありませんでした^^

今回もお読み頂きありがとうございます!
今回は、誘われるがままに入ったブラスバンド部のお話になります。
最後まで宜しくお願い致します!

さてさて、刑務所と言えども自由時間くらいある。
作業が終わって帰ってメシ食って、そこからは就寝時間までフリーだ。
これを【余暇時間】という。知らんかったよこんな言葉。
で、定期的にクラブ活動が行われているから、入りたいクラブに空きがあったら審査にかけられる。
生活態度とか志望動機とか、けっこう色々見られるらしい。
当然人気度があるから、空いてるクラブはいつも空いてる。
ブラスバンドは高倍率で、担当の眼鏡に叶う人材でないと入れないらしい。知らんけど。
で、他にも色んなクラブがあるんだけど、基本的に争いになりにくい種目が採用されている。
だから球技なんかは論外だ。ぶつかったらそのまま乱闘になる。

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例外として、サッカーだけは毎年期間限定で行われている。
最終的に地元の高校生と試合してるんだが、高校生的にどうなの?って思った。
東日本の20~25歳の悪人が大集合してる所に来て、運動能力の優れた悪人と試合して、異常なほど気を遣うと思うんだがw

さ、そんなクラブの頻度だが、月に2回、文化祭前はもっと多いくらいだが圧倒的に頻度が低い。
でも1回1時間くらい外出できる。いい気分転換だ。
練習時間は40分程度なのだが、いかんせん往復に時間がかかる。
遠いんじゃなくて途中途中でいろんな部屋から囚人を回収しながら部室に向かう。

ちなみに俺の舎房は正門の真ん前で部室から一番遠かった。
連行の刑務官が来てボディチェック後に指示されながら軍隊行進をする。
もちろん俺一人でだ。
で、センター工場とかを経由して、敷地の真ん中ら辺にある部室へと連行される。
たまに夜勤のさかもっちゃんに遭遇して気さくに声をかけられる。
分類時の洗礼は微塵も感じない。やっぱり怖がらせるためのパフォーマンスだったのだと妙に納得した。

さかもっちゃんのくだりはこちらにございますので、暇な時にでもどうぞ。

もちろん帰りも一番最後に送られる。言わずもがな、冬も同じだ。
マジで何度凍死にしそうになったか。。。

そうして連行された部屋は、大量のパイプ椅子と楽譜スタンドと大量の楽器が並べてある部屋だった。

初めての部活の時は、連行されたら教壇脇で全員揃うまで立たされてた
悪い事して怒られ待ちみたいな状態だったのは鮮明に覚えている。
悪人の群れに独り立たされてるあの子羊感と言ったら、一生の思い出だ。

そんなこんなで担当が来て部活開始。
まず俺は悪人達の前で挨拶させられた。
とても緊張した。
なんせ俺は工場回診で、刑務官と一緒に偉そうに各工場を回っていたから、なんか思われてんじゃないかと勘繰っていた。
でも後から結構話すようになって思ったんだけど、ぶっちゃけシャバにいる友達連中となんら変わりなかった
サムライ工場の悪人もいたけど、結果いい奴らだった。

あと元プロとか普通にいた。
サッカーでも料理でもブラスバンドでも、上手すぎるから話して聞いたら元プロと言うやつが所内にはたくさんいた。
看護係の俺の後輩はジ◯フ千葉のジュニアユースだったみたい。
所内でぶっちぎりに、ありえないほど上手かったからウソではないと思う。

あとみんな真面目に部活やってたね。ビックリするくらい真面目にやってた。
管楽器って、音を取るのが想像より難しい
ちゃんと音が出るように吹けて、ピストンのドレミを覚えたとしても、吹き方ひとつでドレミが変わる。
逆に言えば、ピストン無しで、吹き方のみでドレミを出せてしまうほど音が変わる。だから音感のある悪人に常々確認してもらってた。
てか、その悪人はどうやら絶対音感を持っているらしく、大変な宝の持ち腐れだと思った。

悪人もしっかりしていたが、設備もしっかりしている。
さすがに新しい楽器はなかったが、手入れの行き届いた歴戦の楽器って感じだ。
トランペット・ホルン・バス・トロンボーン・サックス
ギター・ベース・ドラム・キーボード

何か忘れている気がするが、こんな感じのラインナップだ。

ちなみに講師の先生は音楽の素人である。
カミさんとダンスに行ってきたとか、おねーちゃんのケツが、とか、明らかにこっち寄りな方である。
そんなんで音楽になるのが刑務所だ。
まず一斉にメンバーが入れ替わるという事態がない。工場も景気も違うので、みんなバラバラに消えていく。よって先輩がフルで残っている状態での新人指導だ。
文句の付けようがない。
あとここが一番重要なのだが、ブラスバンド部は刑期が長い悪人でなければ入部できない。
最低でもあと3年は川越にいるような凶悪犯でなければいけない。
つまり先輩連中はベテランであり、とても上手いのだ。

ブラバン 部室

そんな上手な悪人達に色々と教えられ、ついでにたまに来る音楽の先生にも指導され、みんなメキメキ上達していく。

で、ブラスバンド部には年に何回か発表の場がある。
運動会の入退場の音楽を奏でる役と、年一回の文化祭での発表だ。
オヤジ連中の評価項目に囚人の成績とか関係あるのか知らんけど、何やらオヤジも誇らしげだった。
てかオヤジ病舎勤務中のはずなのに、なんでここにいるんすかね?

文化祭に関しては、俺がブラスバンド部の主役としてのストーリーがあるので、次回にでも書こうと思う。

さて、そんなこんなで、いい意味で思ってんと違うクラブ活動が舞い込み、暇でしょーがない刑務所生活に心ばかりのスパイスが降り注いだのでした。しまい


今回も最後までお読み頂きありがとうございました!
次回は文化祭について書きますので、暇な時にでも読んでやって下さい(土下座)

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