デジタル接客は間口を広げるために使うべきなのか?高級車ブランドのデジタルセールス対応について思うこと。

最近はコロナ禍において、多くの自動車メーカー(および販売店)がデジタルのコミュニケーションを強化しています。
僕は、これはカスタマーにとって良い傾向だと思っているものの、その一方で、危惧していることもあります。それは、デジタル空間でも今までの同様のCXを担保する覚悟をもってやってくれているのか、ということです。主に外資系((輸入車)の販売店においては、エクスクルーシブな体験を構築できているか、という点。基本的に、デジタルを活用して新しいお客様や、今までリーチできなかった層に体験いただける機会を提供することは素晴らしいことですが、全員を対応できる体制ができていないと多くのお客様のCXを損なってしまうことにならないか。

例えば、高級料亭が「一見さんお断り」をやるのは既存のカスタマーを守るだけでなく、新しいお客様のCX棄損のリスクを低減している、ともいえると思います。例えば、学生が社会勉強だと思って、料亭に行き「お金がないからビール一杯と枝豆だけください」と言ったとしよう。ブランド棄損、というお店サイドだけでなく、この学生は空気に耐えられなくなり、不愉快な体験として記憶することになると思う。

つまり、プレミアムブランドが敷居を高くするのは、カスタマー視点の合理的な理由があるのだ。僕は、クルマが好きなので、様々なブランドの車のWEBサイトを見に行ったり、実際に乗りにいったりするのだが、新設のチャット機能を使っても反応がなかったり、オンライン商談も、対応に不慣れで会話にならなったりし、やっぱり現地に行って話しましょう、となってしまったり。クルマを見て触って、という感動を作れないオンラインの世界で、コミュニケーションがうまくいかないと、単にネガティブな印象しか受けない、というケースもあると思います。

昨今のコロナ禍で、自動車会社だけに限らないと思いますが、リテールは、来店数や新規リードが不足しているからデジタルで何とかしよう、ではなく、カスタマー視点で、デジタルを活用することでカスタマーのCXをどのようにサポートできるかということを中心に考えていくべきだと思います。

デジタルは、リアルの劣化版として新しい層にリーチする装置ではなく、カスタマー体験を最大限向上させる装置ととらえて考え直す、よいきっかけだと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?