新しいブランドポジショニングを見つけた、BMWのサステナブルコミュニケーション。

BMWが、サステナブルな社会を目指して「BMW Lab.」をローンチ。

まず、このBMWのコミュニケーションに関しての率直な感想は、いいテーマ設定だと思った。最近は、安全性のベンツ、都会的なアウディ、孤高なスポーツカーメーカーとしてストイックなポルシェというキャラ立ちしている競合ブランドに対して、BMWのキャラクターが弱いな、と思っていたところ、ブランディングにおけるいい感じのポジショニングを見つけたな、と思った。コントっぽい表現は一旦置いておいて、素晴らしい活動だと思う。

ブランドの信念をわかってもらうためには、「時間」というのがとても大事なファクターだと思う。近年、多くの会社や事業がサステナブルな社会を目指す、といい始めているが、多くの企業はESGやSDGsを意識した、ビジネスくさい感じが出てしまうが、BMWは、どうやら1973年に環境に関する部署を作って取り組んできた、という実績があるらしいので説得力がある。ところで、ヨーロッパのブランドはこの「時間」を使ったコミュニケーションがうまい。例えば、ベンツは、安全性について大昔から取り組んできてことをどこよりも強く主張しているし、ポルシェは初のフル電気自動車タイカンのコミュニケーションにおいて、創業者が最初に作ったのは電気自動車だったことを語っていたりする。クルマ以外でも、オメガは初めて月面着陸したし、ロレックスも1953年に初めてドーバー海峡を泳いで渡っている。

BMWは、i3(EV)やi8(PHEV)の導入おいて、どのブランドよりも早く、サステナブルな社会の到来を目指したビジネスの展開に取り組んできたが、2014年のBMW i3登場から今までの間、はっきり言って、素晴らしいコミュニケーションをしてきた、とは言えないと思う。実際にクルマも大して売れていないし、リセールバリュー(中古車の買取価格)も高くない。何より、未来感のある、研ぎ澄まされた都会的なブランドイメージを作り出せていないのは、マーケティングの本質的な問題だと思う。

特に個人的に気になるのは、デジタルを核としたコミュニケーション設計が機能していないこと。ブランドは、モータージャーナリストとリアルイベントが生み出すもの、という過去の成功体験を捨てて、真の意味でカスタマーに寄り添ったマーケティング活動を突き詰めてほしい、と一人のクルマファンとして感じている。

ただ、冒頭で書いた通り、サステナブルという軸でのコミュニケーションは、圧倒的に正しいと思う。少し前はデジタル=都会的といったイメージがあり、audiが突出していた感があるが「都会的」のイメージが「サステナブル」に移行してくると、BMWに大きな可能性があると思うし、逆にaudiのブランドポジショニングは今後も厳しいと思う。

いずれにしろ、サステナブルな社会を目指す会社が増えてくるのは世の中にとって良いことだと思う。課題満載の、これからの自動車業界のマーケティング活動に注目したい。

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