ロシアの思想家アレクサンドル・ドゥーギンのリベラリズムの変異についての分析が的確なので簡単に紹介する。西洋(特に英語圏)のエリートが普通の日本人には理解不能な狂気に取りつかれていることがわかるはず。
本題に入る前に前提知識を。
インタビューの始めに出て来るnominalismとはsocial nominalism(社会名目論、社会唯名論)のことで、individualism(個人主義)と密接に関係している。
サッチャーの有名な言葉👇はこれから来ている。
ドゥーギンのliberalismの本質はindividualismという見解はミアシャイマーと一致する("liberalism is all about individualism")。
👇がタッカー・カールソンによるインタビュー(英語字幕あり)。
👇は紹介記事。
ドゥーギンの分析を要約すると、
20世紀には(キリスト教の後継として)fascism、communism、liberalismが生まれたが、アングロサクソンのliberalismだけが生き残った。
Liberalismの本質はindividualismであり、集合的アイデンティティからの解放(属性のカテゴリの解体や無効化)を志向する。永続的な解体運動がliberalismの実践とも言える。【⇒サッチャーが存在を認めていた男女の性別や家族も解放・解体の対象となる】
永続解放という進歩の結果、現代のliberalismは、fascism、communismと争った頃のliberalismとは別物のwokeismへと変異している。
New liberalism(wokeism)では残った「解放」の対象が二つあり、その一つの「性」からの解放がtransgenderismである。性を肉体から解放して選べるもの(optional)にする。
最後に残った「肉体からの解放」がtranshumanismで、人間を超える存在を目指す。【(⇒Dioの「おれは人間をやめるぞ!」のようなもの)】
Old liberalismの政治体制は多数派による支配のdemocracyだがnew liberalismでは少数派による支配のtotalitarianismになるのは、多数派はヒトラーやプーチンを選ぶような誤りを犯すことがあるので、覚醒者にコントロールされなければならないから。
映画のMatrixやTerminatorなどのSFに描かれているのがNew Liberalが目指す社会。
西側諸国がプーチンを敵視するのは、プーチンがwokeを拒否してロシアの伝統的価値観を守ろうとしているから。【(⇒文明の衝突、wokeismとゾンビ正教の宗教戦争、世界観を巡る闘争とも言える】
以下、補足。
👇は上野千鶴子だが、「カテゴリーを解体して個人に還元」がliberalismの本質の「集団的アイデンティティからの解放」のことである。
ドゥーギンの分析は『西洋の敗北』の著者エマニュエル・トッドのものともほぼ一致している。
革命には政治・経済・文化の各側面があるが、👇はnew liberalismの経済面についての見立て。
政治面の見立てもドゥーギンと一致。
👇は個人を原子化するリベラル革命において最重要となる文化革命の核心の性解放、transgenderismのこと。
Individualismが他国への干渉・介入につながる"crusader impulse"を生じさせるメカニズムについてはミアシャイマーの説明👇を。
日本人(のエリート)には根強い米英信仰があり、バブル崩壊後は政治、経済に続いて文化面でも米英を真似た「改革」を進めようとしているが、これほど狂った思想を「人類普遍の正しい思想」と本気で信じて受容するつもりだとすれば、馬鹿に付ける薬はないとしか言いようがない。
付録
当noteでもドゥーギンと似たことを書いていた。