【介護小説】俺なんてどうせ負け組だから #5

 中学はどちらも中途半端な僕は高校は、偏差値55くらいの少し勉強ができるところに入学した。
 その時には漠然とした夢なんてなかった。

 よく小学生の時に将来の夢は、たまたまスポーツをやっていたから、
「オリンピック選手になりたい」
とか言っていたが、本当は何になりたいかも分からないし。

 働くという事が自分の未来におとずれる事なんて、想像もしていなかった。働くという事を想像したり、未来について考えている余裕すらなかった。

 運動も親の勧めで入ったし、高校の進学も授業の担任に
「君の学力はこの辺だから、この高校はどうですかの?」
 問いに対しては、
「ああ、そうですね。ここで大丈夫なら頑張ります」
 で、終わりみたいな。

 東京等の都会で小学から私立通いで、高校も灘、開成、麻布みたいな超進学校、否、僕からみたら神学校だ。
 そういった人はレールがあり大学は東大、京大が当たり前になるのだろう。

 一度、親父の友達で慶応大学の医者が家に来ていた時も、若い女性を連れて来て近くにはベンツよりも高い高級車を止めています、みたいな感じで実家に訪れた。
 高い服を着て、可愛い女性を連れているが、心の中で、
『お前なんて、その服に着せられているし、女はお前が好きじゃなくて金に着いていっているんだよ』
 と思っていた。

 そんな、金持ちと会う機会も東京にいると何回か、あるもので僕がたまたま実家はマンションだった為に役者の友達を呼んで、パーティーをしていた。
 役者の友達が、東大卒で色々な書店に並んでいる本を書いているらしい。
 僕自身もビジネス書は何度か読んでいた時があるので、
『ああ、この人か。当たり前の事書いてて大した本じゃない』
 と本も出した事もないし、何も名誉も知力もない僕は心の中で上から目線で心から言葉を放つと、

 その役者の友達の東大卒の大手企業の役員は、
「おお、ここいいね。お前の友達にもこんな素晴らしい友達いたのかと」
 ちょっと、馬鹿にしたように放ちながら
 飲み干していた。

役者の友達を呼び出し
「東大出て、いくつか中身の中身の無い本を書いてて、金があるから天狗になってんのか?どこがいいの?」
「いや、有名なやつと繋がっておくと良い事あるから」
と、友達が言うと、
「ふーん。そうとは思わないが…」
と僕は友達に言って、パーティーに戻る。

 そして、役者の女友達にも東大卒は手を出して、
「俺、こういう本書いてるからタダであげるから、今度ご飯行こうよ」
と誘い、ラインを交換している。

 で、俺も社交辞令でFacebookを交換すると、いかにも愛妻家のように、全てのタグに妻と一緒ですみたいな。
『あ〜あ、しょーもな』
と心で思いながらも、
「あっ、本読みましたよ。とても良かったです」
とか言っている俺は度を越して阿呆だ。

 そして、東大卒みたいなショーもない奴もいたが、パーティーは終わった。なんだかんだ面白くて、僕はいつも通り酔った友達を連れて駅まで送りに行く。

 本当に遅れない時は、僕の実家に泊めていた。
 今回はなんとか、みんな帰れる程度だったので、駅まで送って行った。

 そして、みんなに”さよなら”を告げて1時間後に電話がかかってきた。
 「今日の東大卒の◯◯に勤めているやつなんなの?あいつ、私に無理矢理キスしようとしてきて、ホテルまで誘ってきて。気持ち悪かったわ」
 「マジで…。ごめんごめん」
 友達の友達だから、ひたすら平謝り。

 まあ、僕自身も東大卒の本人には言わずに、心の中では『クズ男』として認定。
 金と名誉があるだけましか。

僕はな〜んにもないのだから。

 

介護を本気で変えたいので、色々な人や施設にインタビューをしていきたいので宜しくお願いします。