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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑱

 井上さんが笑いながら
「昨日、すごい酔っていたね?体調大丈夫?」

 僕は申し訳ない気持ちで、
「本当に迷惑をかけて、申し訳ございませんでした?」
「いやいや、大丈夫だよ。最後の方は良く話してたから面白かったよ。覚えている?」
「全然、覚えていません。何か失礼な事言ってたらすみません」
「大丈夫だよ。楽しかったよ」
と笑いながら井上さんが言ってくれた。

 これが、高校の同級生やコンビニのバイト先ならば怒られたが、井上先輩と一緒に飲んでいた後藤さんは優しかったので、許してくれた。

 記憶は僕がお酒で記憶が無くなる前の事は覚えていた。
 後藤さんは30代前半の女性で、昨年、介護福祉士をとられたようだ。その前までは、アパレル関係の仕事をしながら夜はキャバクラ等の水商売をやっていたそうだ。

 井上さんとはたまに飲むらしく、仕事中は演じている後藤さんは井上さんと飲むのが気楽だそうだ。

 後藤さんはキャバクラや風俗を経験した後に、今後を考えて介護の仕事をしたらしい。会社からは水商売時代を活かして、サービスのよさは利用者からの好感度は会社の中では1番の評価を社長から受けていた。

 井上さんは、
「後藤さんの介護はマジでストイックだからね。飲んでいる時は暴言とか愚痴多めだけど」
 と笑いながら言っていた。 

 僕自身、キャバクラ等に言った事がないので、どのような世界かも想像がつかなかった。サラリーマンがお酒を一件目を住ませて、女性とお酒を飲みながら話す所という所しか分からなかった。

後藤さんから、
「加藤君って、キャバクラとかって行った事あるの?」
「いや、ないです」
と答えると、2人に笑われた。僕が、
「井上さんは、あるんですか?」
「俺は大人だからな」
と笑いながら返された。

 介護師や看護師は仕事をしながら、水商売を副業でやる事も少なくないらしい。理由としては、給料が安かったりして、生活をするのが大変だかららしい。

 確かに、介護士に関しては東京で一人暮らしをするのが大変だ。
 家賃が6、7万かかり、食費や諸々かかって子供がいる人ならば、介護士の20万くらいの手取りの給料では暮らすのは大変だろう。

 介護士はボーナスが無いところも多いし、年数を重ねても給料が上がりにくい業界であるからだ。

 後藤さんは、
「介護もキャバクラと違って、1番利用者さんからの評価が良かったりしても給料変わらないの問題だよね。あっ、ごめん酔ってるからつい…」

 本当にそうだと思う。僕みたいな介護に関して初心者の人と後藤さんや井上さんみたいに、雲の上の存在の人と給料が天と地ほど離れている訳でもないのだ。

 僕自身は趣味もないし、彼女もいないので給料よりも仕事をしっかりしなきゃで頭でいっぱいだったが、後藤さんの言う事は間違いなかった。

介護を本気で変えたいので、色々な人や施設にインタビューをしていきたいので宜しくお願いします。