濱口竜介監督『悪は存在しない』【ネタバレなし】 2024/05/06

『悪は存在しない』を昨日(2024/05/05)、観てきました。何人かから感想を求められたので、ネタバレなしでここに記載します。長文です。

個人的には観て良かったと思える作品でした!

ただ、全力でおすすめできるかというと、難しい。それは、観賞者の度量を試される作品だから。もっと言うと、作品の解釈を観客に大きく委ねている作品だから。スタンリー・キューブリック監督『アイズ ワイド シャット』、デヴィッド・リンチ監督作品、最近では宮崎駿『君たちはどう生きるか』、アリ・アスター監督・主演ホアキン・フェニックス『ボーはおそれている』を、手放しでおすすめできない感覚に近いです。どうだろう、この感覚分かるかな? 安易に薦めると、食材が十分に調理されていなくて、お腹を壊してしまう可能性があるので、全力ではおすすめできない、そんなニュアンスです。

でも、この映画を観てくれる人がいたら、是非とも一緒に語りたい作品であることは間違いありません!

私が観たことがある濱口竜介さんの作品で言うと、村上春樹のいくつかの短編小説を再構成した『ドライブ・マイ・カー』(上映時間179分)が最も消化がしやすく、ハッピーアワー(317分)がその次で、最もお腹を壊しやすいのは本作(106分。濱口竜介監督作品にしては短い!)でしょうか。

作品と対峙してあれこれ解釈を考えるのが好き、作品を通じて自分の興味関心をあぶり出すのが好き、宙ぶらりんの状態を味わうのが好き、心に揺さぶりをかけるのが好きな人にはおすすめの作品です。

濱口竜介監督十八番の「会話劇」が好きな人にもおすすめできます。

また、濱口竜介さんの美術館の企画展「悪は存在しない」に1900円を支払って、石橋英子さんの音楽と一緒にアート作品として観るという楽しみ方もあります。雪、森、鹿、鳥、太陽、少女。自然を映す眼差しがどれをとっても絵画のようで、仮に澱んで混乱した心情であっても、冷たく、凛とした空気で鎮めてくれます。

以上


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